厳冬期の乗鞍岳へテント泊登山で行ってきました!
まだ厳冬期と言えるような時期ではあるものの、高気圧に覆われて風が弱く気温も高い…そんな好日を捉え、乗鞍岳の山頂でテント泊をしてきました。
乗鞍岳に登るのは初めてでしたが、360度の展望が楽しめる素晴らしい山でしたよ。
Mt.乗鞍スノーリゾート
松本から電車で新島々へ、新島々から乗鞍高原行きのバスに乗ります。
下車はスキー場前(乗鞍高原)です。
バスから降りると目の前にMt.乗鞍スノーリゾートがあるのでここから登山スタート!
敷地内に入るとすぐにチケット売り場があります。バス降りてからチケット購入して登山スタートまで非常にスムーズですね。
リフトは朝9時スタートですので、マイカーで来て9時より前にスタートする場合はゲレンデを歩いて登ることに。
なお、ゲレンデはかなり長いため、時間を調整してリフトを1本でも活用できると楽だと思います。一方で、リフトを利用すると下山時刻が日没ギリギリになる場合もあり、マイカーでもっと早い時間からスタートしている人も多い印象でした。
9時以降にスタートする場合は3枚(500円×3枚)のチケットを購入してリフトを活用しましょう。
チケット売り場から目と鼻の先に「乗鞍山麓リフト」があるのでここからクライムオン!
文明の利器「リフト」に乗って標高を稼がせていただきましょう!
写真右奥に乗鞍岳が写っていますが、一番下から歩くと結構長いので覚悟が必要だと思います。
その後は4人乗り「夢の平クワッド」、次いで急斜面の「かもしかリフト」と乗り継いで最上部を目指します。
テント泊なのでザックは大きく重く、これを担ぎながらリフトに乗るのはなかなかの緊張感があります。
乗り降りの際はスタッフの方が優しく対応してくれたのでご安心を。
ゲレンデトップ
リフト3本を乗り継いでゲレンデトップに到着!
ここまで全く歩いておらず、ここからようやく本格的に登山スタートです。
スキー場としてゲレンデを管理しているのは「ここまで!この先は自己責任!」という看板が立っていて気圧されしそうになりますが、この先も十分に整備されているのでご安心を。
写真中央のゲレンデにしか見えない斜面を歩いてきます。見ての通り歩くべき場所の森林は伐採されておりコースは明瞭です。
一応スキー場の範囲外ということではありますが、このように樹林のひらけた場所を歩くだけなので、道迷いの心配はありません。
しかしながら、いきなりの急登。ここまでリフトで来ているのでまだ足が温まっておらず、いきなりの急登が足に応えますね!
登山者の構成はBC登山・スキーヤー6割、通常登山4割といった感じでしょうか。
北アルプス全般に言えることですが、厳冬期は雪が深いためワカンかスノーシューは原則持ち歩いた方が良いと思います。
位ヶ原山荘分岐
樹林の中の急坂を終えて位ヶ原山荘への分岐に到着!
ここを右手に進むと冬季営業している位ヶ原山荘(くらいがはらさんそう)、直進すると乗鞍岳(剣ヶ峰)方面へと通じています。
位ヶ原山荘はご主人が一人で切り盛りしているようですが、ご飯も美味しいようで、人気の山小屋なんだそうです。
位ヶ原山荘を経由するとやや遠回りのルートにはなるものの、1泊2日で乗鞍岳を満喫するのも贅沢で貴重な経験ができると思います。何より北アルプスで冬季営業している小屋は貴重ですし、テントを担がないでも1泊2日で登山できるのはありがたいですよね。
位ヶ原山荘分岐から急坂を登ると程なく、遠方に稜線を見据える広大な雪原へ出ました。
こうして見るとすぐ山頂まで行けそうな気がしますが、ここからもまだまだ道は長かった・・・。
左に剣ヶ峰、右に摩利支天岳を見据えながら、鞍部にある肩ノ小屋を目指して直進していきます。
雪原を歩いていると右手に穂高岳が見えてきました!
穂高岳から見る乗鞍が遠いように、乗鞍から眺める穂高はそれなりの距離。乗鞍岳が独立した存在であることを実感しますね。
肩ノ小屋までは緩やかな斜面を歩いていきます。周りの景色があまり変化しないためか〜なり長く感じられますね(汗)
歩いても歩いてもなかなか目的地につかない不思議な感覚。
悪天候時には道迷いが発生しやすい場所になるため、GPSで現在地を確認しながら歩くのが良さそうです。
下山時もゲレンデにしっかり戻れるよう、登りの段階で周りの景色をよく見ておくことが重要です。
乗鞍岳といえばシュカブラの名所ですが、高温の日が続きシュカブラも減退気味。
肩ノ小屋口
肩ノ小屋まで残り半分というところで建物がポツンと雪から出ています。ここは夏だとバス停になっているところ。冬季に来ると感じませんが乗鞍岳は乗鞍エコーラインが走っている北アルプス唯一の都会です。
夏に来るとハイカーや観光客で賑わっているであろうこの場所も厳冬期であれば静かなものですね。
この辺りでテントを張っている方がチラホラいました。強風時にはすごい風だと思いますが、ブロックをつめばテント泊しやすい最後のポイントだと思います。ここに幕営すれば翌日の山頂アタックもかなり楽になるので一考の価値がありそうです。
肩ノ小屋
長い雪原歩きを経て肩ノ小屋に到着!
この辺りは風が収束する場所のようで、強風により雪が飛ばされ地面が露出しています。計画の時点では建物の影にテントを張る案もあったのですが、山頂まで意外と距離があるので結局山頂まで行くことにしました。
夏は宿泊可能な施設のようなので、シーズン中はお手軽に乗鞍岳を登頂したい人で賑わっているんでしょうね。
剣ヶ峰アタック
肩ノ小屋からは雰囲気変わってアルパイン的な急登が始まります。乗鞍岳は最初のゲレンデパート、その後の雪原パート、剣ヶ峰パートと緩急が非常にはっきりとした登山となりますね。ここまで緩急がある山はそうそうない気がします。
肩ノ小屋から先はアイゼンを効かせて山頂を目指します。
普段あまり登山をしないであろう人がめっちゃフラフラしながら歩いていたのが気になりました。乗鞍岳は簡単に登れるイメージがあるからか、甘く見ていると冬季はちょっと痛い目を見そう。雪山登山経験者であれば難しいところはあまりありませんが、十分体力をつけてから挑戦しましょう!
剣ヶ峰への道中でようやく穂高の全景が見える標高になります。
飛騨側は雲海がすごくて焼岳は雲の中に隠れてしまっていますね。
右手に朝日岳のピークがありますが、山頂は踏まずにトレースを辿ってトラバース気味に歩いていきます。
振り返って、ここまで来れば山頂まで後少し!
右手に朝日岳のピークと左に氷結した権現池が見えます。
乗鞍岳 剣ヶ峰(3,026m)登頂
乗鞍岳 剣ヶ峰(3,026m)登頂です!
ゲレンデからリフトを利用しての登山でしたが、それでも十分に登りごたえのある行程でした。なだらかな山容から簡単な登山をイメージしていましたが、さすがは3000m峰。楽には登らせてくれません。
剣ヶ峰山頂には社があり、冬季はちょっとした休憩スペースとして一役買ってくれています。
乗鞍岳の稜線上や山頂で幕営を考える人はほとんどいないと思うのであまり参考にならないと思いますが、この社の裏側にやや傾斜のついたスペースがあり、そこを整地して幕営すると風を避けることができます。乗鞍岳は西風が凄まじいので、社の裏側に避難するという戦法ですね。
剣ヶ峰からの展望
日がだいぶ傾き空が黄金色に色づいてきました。
乗鞍岳からは360度の大展望が楽しめます。中でも御嶽山の眺望は見事!御嶽山の写真を撮っている人には絶好のポイントだと思います。
天候が安定していれば、夕方は飛騨側(岐阜県側)に雲海を望める確率が高く、黄金色の空の下、夕焼けに照らされた雲海と稜線を眺める別天地へ。
以前、焼岳から穂高の夕景を狙った際には完全にガスってしまいましたが、今日も焼岳は雲海の下にあるので、もしかしたらあの時も焼岳だけ雲の下にあって、穂高や乗鞍は雲表の世界だったのかもしれません。そう考えると、焼岳や十石山からの夕景は運が良くないと臨めないのかもしれませんね。
3,000m峰から眺める夕景は格別。写真を撮らなくとも、眺めているだけで十分だと思える景色です。
肝心の穂高岳の撮影ですが、剣ヶ峰から狙うとかなり距離があるので、乗鞍の稜線をたっぷり入れて穂高を副題的に扱うか、望遠でおもいきって寄るのがいいでしょう。こうして見ると左奥にある魔王岳から焼岳にかかる雲海越しに穂高を狙うと新しいアングルで撮れそうに思いますね。
剣ヶ峰からの夕景は素晴らしいものでした。次はもう少し穂高岳に近い位置の乗鞍から撮影しようかなと目論んでいます。
・・・そんな時に限って魔王岳あたりまで雲海に飲み込まれたりして(笑)
光害があるので乗鞍岳からの星撮影が最適かと言われるとYesではないかもしれません。
それでも北アルプスから眺める星空はたまりません。
乗鞍から眺める穂高は「北」に位置するため星をグルグル回しながらの撮影ができるのも良いですね。
剣ヶ峰山頂で迎える朝
星の撮影で寝不足ではございますが、無事に2日目を迎えることができました。
ご来光と穂高の位置の関係で、南側から眺めると穂高に朝日は当たりませんが、北アルプス全体がうっすらとピンクに染まり、素敵な朝を迎えました。
剣ヶ峰から下山
剣ヶ峰からの下山はカチカチの急斜面を下るため、アイゼンを効かせながら慎重にいきましょう。
今日も晴れて最高の景色!
名残惜しいですが下山の工程も長いのでそろそろお暇します。
乗鞍岳からは御嶽山もそうですが白山の展望が抜群!
白山の写真を撮っている人にはたまらないのではないでしょうか?これだけ離れていても真っ白に雪化粧しているのがよく分かります。あの標高でこれだけ積雪があるというのはすごいことですよね。
下りでは肩ノ小屋を経由する必要がなく、適当な斜面を見定めてグングン下ります。
登りで直登するには斜度が大きすぎてしんどい場所も、下りでは雪原を飛び跳ねるように進めるので雪山の下山って早くて良いですよね。膝にも優しいし。
地獄のゲレンデ歩行
冬の乗鞍岳はゲレンデトップに着いてからのゲレンデ歩行が大変なのでお覚悟を(笑)
スキーヤーの人は一瞬で下りられますが、そうでない場合はリフト3本分のゲレンデを歩いて下りることに。
なかなかの距離がありますので、気合を入れてゴールを目指します。この時ばかりはスキー登山している人が羨ましいのでした。
ゲレンデなので傾斜が大きく、ツボ足だとスリップしそうなので結局ゴールまでアイゼンを履いたまま降りてきましたとさ。
・・・チケット売り場に着いたら、すぐ近くにあるバス停から松本へ戻って登山完了です。お疲れ様でした!!
日程とコースタイム
日程 | 場所 | 時刻 |
2021/2/13 | Mt.乗鞍スキー場 | 9:00 |
ゲレンデトップ | 9:30 | |
位ヶ原山荘分岐 | 11:00 | |
肩ノ小屋口 | 12:30 | |
肩ノ小屋 | 13:00 | |
剣ヶ峰 | 14:30 | |
2021/2/14 | 剣ヶ峰 | 7:30 |
位ヶ原山荘分岐 | 8:30 | |
ゲレンデトップ | 9:30 | |
Mt.乗鞍スキー場 | 10:30 |
冬季 乗鞍岳登山(剣ヶ峰)まとめ
- リフト利用でも日帰りは可能だが、工程はタイトになる。
- リフトを使わないでゲレンデを登るのは相当しんどそう。
- 位ヶ原山荘分岐より上は広い雪原になっているので悪天候時は道迷い要注意。
- 地図で感じる雰囲気より工程が長く、体力が必要。あくまで冬の北アルプス。
- 幕営適地は肩ノ小屋口や肩ノ小屋あたりだが、風が収束する強風スポット。対策必須。
- 稜線の幕営適地は山頂直下の平地(要ブロック)か山頂の社の裏(要整地)。
- 下山時、雪原に付いている位ヶ原山荘からのトレースに惑わされないこと。
- 下山時のゲレンデ歩行は地獄。
- 山頂は360度の大展望。御嶽山や穂高の眺望が見事。
山頂で夕陽を見てからナイトハイクで下山している人もいらっしゃいました。
乗鞍岳でのテント泊はあまり情報がないと思いますので、よろしければ参考にしてみてください。
ただし、稜線での風速が10m以上の予報の場合、体感としては非常に厳しい風が吹いていると思いますので、テント泊は風が弱い高気圧に覆われた時が狙い目です。テントごと飛ばされないよう十分ご注意ください。
360度の展望に恵まれた厳冬期の乗鞍岳雪山登山でした!
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