シングルウォールテントは山岳テントとして有用か?厳冬期から真夏まで2年間使った感想

登山用のテントとしてシングルウォールのテントを使い始めてから2年以上経ちました。

「雪山登山で使うテントを検討!「エスパース」や「エアライズ」などメジャーなテント4つを比較」でいくつかテントを検討していますが、これは星の数ほどあるテントの一例で、3シーズン用テントを含めると登山用のテント数はかなりあります。どのテントを使うかはとっても悩ましいですよね。

そんな数あるテントの中からシングルウォールテントを選び、四季を通じて使ってきたわけですが、厳冬期から真夏まで使ってみて感じた『利点・欠点』をレビューしたいと思います!

目次

シングルウォールテントとは?

その前にシングルウォールテントについてサッとおさらい。

テント場で見かけるテントの多くがダブルウォールテントですので、シングルウォールテントに馴染みがない方も多いと思います。

フライがないシンプルな構造。

シングルウォールテントはその名の通り「1枚の壁」だけで構成されたテントのこと。対する「2枚の壁」で構成されるダブルウォールテントは日本の山岳環境で使いやすいとされ、居住空間となるインナーテントと、その上から被せて固定するフライ(外張り)で構成されています。

写っているのはおそらく全てダブルウォール。フライを外して干している人もいます。

ダブルウォールテントの方が人気なのは、理由の一つにダブルウォールテントの方が何十倍もラインナップがあり、入手しやすいこと。雨や結露に強く3シーズンでは特に使いやすいこと、そして前室(テントで入り口付近の屋根付きスペース)で調理したり荷物を置いたり便利なことです。

『そしたらシングルウォールテントなんて使う理由ないやんけ??』という声が早速返ってきそうですので、利点欠点をレビューをご紹介したいと思います。

【 利点1 】圧倒的な設営スピード

広げてポールを通して起こすだけで設営完了!

シングルウォールテントは「Simple is Best」な構造をしています。なにせ1枚の袋(テント)の中にポールをクロスして立ち上げるだけ!

最近よく見かけるテントのようにごちゃごちゃしていない。だからこそ設営が圧倒的に早い(ただ、初めはちょっとした慣れが必要)。

シングルウォールテントを使おうって人は間違いなく雪山登山の使用も想定していると思いますので、設営スピードが早いことはアドバンテージになります。

【 利点2 】軽量コンパクトな作り

1枚壁であるがゆえに使用している素材が少なく、ダブルウォールテントより軽量であることも利点の一つ。ダブルウォールテントにも非常に軽量なモデルが登場してきていますが、それらはほとんどは3シーズン用で雪山登山での使用は想定されていないモデルです。

テントは軽ければいいという話ではなく、単に軽いだけだと耐風性・耐久性が下がる可能性があります。厳しい条件や山岳フィールドで使用実績のあるテントでないと怖いと個人的には感じています。

テントの重さについては、ダブルウォールテントの軽量化が進んでおり、シングルウォールテントとの棲み分けを脅かしている感じもしますね。例えばニーモのホーネットストーム(1kgを切る超軽量級のダブルウォールテント(3シーズン))。

ファイントラックのカミナドームはダブルウォールでありながら1.3~1.4kgと軽量かつ厳冬期まで対応する4シーズンモデル。

MSRのアクセスも軽量なダブルウォールテントで4シーズン対応。

軽量なダブルウォールテントが充実してきました。このように比較してみると、シングルウォールテントが突出して軽量だとは言えない事情も見えてきますね。そういった意味でもシングルウォールテントが適している人は、シンプルな構造かつ設営時のメリットを感じられる人、100gでもテントの重さを軽くしたい人・・・限定的なユーザーが対象になるでしょうか。

シングルウォールテントの防水性

シングルウォールテントと一口に言っても、実は素材により2つに分けられます。一つは防水性素材を使い雨天にも対応しているモデル(ヘリテイジのエスパースデュオ等)、もう一つは撥水性モデルを使い非常に軽量なものの雨に弱いモデル(ヘリテイジのクロスオーバードーム等)。

雨の多い日本の山では撥水性のシングルウォールテントは大きな弱点を抱えることになりますが、1kgを下回るような軽量モデルもあり、携帯性の高さは突出しています。

私としては夏の夕立の怖さも知っていますし、撥水性のテントでは怖いなと考えていますが、使い方によっては大きな武器になることも間違いありません。防水性の違いは非常に重要ですので、撥水性軽量テント(クロスオーバードーム)などは簡易テントであることをお忘れなく。

【 利点3 】山岳玄人好みの粋な見た目

ここまで設営が早くて重量は軽いことをご紹介しましたが、シングルウォールテントを使っているとそれ以外にも愛着を感じるポイントがあります。

日本ブランドのエスパースデュオ(廃盤モデル)を使っていることもありますが、ザ・山岳テントっていう雰囲気が好きなんですよね。シングルウォールテントって粋だと思うんです。

テントを立てた時の野暮ったさがないと言いましょうか、使えば使うほどフライを使わない潔さが好きになりました。シンプルでかっこいいと思うんです。

無骨なまでに玄人な雰囲気が好き。シングルウォールテントは総じてダブルウォールより利便性で劣る面があるのは確かなので、対象ユーザーを限定します。だからこそ感じる天邪鬼的な良さがあるのかもしれません。

シングルウォールテントが向いているのは…
  • 100gでも軽量なテントを探している
  • シングルウォールテントのシンプルな構造の意味を理解して魅力を感じる
  • 少しでも設営が楽なテントを探している
  • 野暮ったくないデザインに粋を感じる
  • ダブルウォールなら克服できる弱点を許容できる(詳細は下記)

【 欠点1 】前室がない

前室があれば荷物を出したり調理することが可能。

前室とはテント出口にある調理をしたり登山靴やバックパックを置くスペースのこと。

前室がなければ登山靴を外に出しておくことも、テントに居ながら外で調理することも、就寝時に荷物を出しておくこともできません。山での『快適な時間』に重きを置いている人にシングルウォールテントは不向きでしょう。

【 欠点2 】盛大に結露する

シングルウォールテントで最も懸念されるのが結露です。

1枚の壁で構成されるシングルウォールテントでは、夏から秋にかけての結露は避けられません。人から出る水蒸気とテント内外の気温差により結露が発生する可能性は極めて高いです。ダブルウォールテントでも結露自体は発生しますが、フライシートに水滴がつくので快適です。

冬は結露が凍るので関係ありません。シングルウォールテントは雪山登山でのみ使用するという人は、この点で理にかなっていますね。

シングルウォールテントでは夏山・秋山で特に結露が発生しますので、この時期に使う場合はダウンシュラフを濡らさない工夫が必要です(2人用の広いテントを使うなど)。

【 欠点3 】破損が致命傷

シングルウォールテントは「破れ」が発生するとそれが致命傷になることも。1枚の壁しかないので、穴が空いたらそこから浸水します。どんなテントでも底面に穴が空いたら処理をすると思いますが、テント全面でその必要がある感じです。

私はテントに不慮の穴を開けてしまったために購入してすぐパッチを当てる羽目に・・・。

テントに穴が空いたらパーマネントリペアシートを使用

アウトドア用のリペアシートには2種類あり、1つは粘着性のシートを貼るタイプ。もう1つは浸透性のある布を貼り付けるタイプです。モンベルのパーマネントリペアシートがこの用途に適しています。アイロンで熱を加えて剥がれないように粘着させます。

テントに穴が空いてしまったらこちらでしっかり処理してあげてください。損害が大きいときはメーカー修理に出しましょう。

シングルウォールテントの欠点
  • 前室がないので快適性に重きを置く人には向かない
  • 夏から秋は盛大に結露する(冬は関係ない)
  • 1枚布なので穴が開くと致命的
  • ラインナップが少ない

おすすめのシングルウォールテント

こんな記事を書いておいてなんですが、シングルウォールテントのラインナップはかなり少なくて、現在はプロモンテのVB-22Z(前室付き)かVB-21(前室なし)がおすすめでしょうか。価格・入手の容易さ・実績を考えるにあたり、これから山岳用途でシングルウォールテントを購入するのであれば、プロモンテはおすすめです。

バーゴのノーフライは前室付きで入口が前後にある一風変わったテント。重さが1.3kgと軽量なのでUL志向の方に◎(雪山登山では使えません)

他には、MSRのアドバンスプロはアルパインスタイル向けなので、使用は高山帯の厳冬期に限られそうです。本当は私が使っているヘリテイジのエスパースデュオをお勧めしたいところ。しかし「テント素材にゴアテックスが使用できなくなった問題」のため廃盤となってしまいました。パイネ(石井スポーツ)のG-Lightも同様の理由で廃盤です。

これは「テント内での火器使用でゴアテックス引火のリスクがあるため、テント素材としてゴア社がゴアテックスを提供しなくなった」ことに由来しています。ヘリテイジとしては後継のテント(オールシーズン使える山岳シングルウォールテント)を開発中らしいので、今後の展開に期待したいと思います。

その他にはCRUXの姉妹ブランドであるLIGHTWAVE(イギリス)というブランド(私も最近知りました)が出しているシングルウォールテントもあります。

こちらは割と新しいテントで注目を集めているところです。ただ、見た通り3シーズン用途であり、冬も使えるとありますが厳冬期の耐久性については謎です。

他にSamaya(フランス)というフランスブランドにもシングルウォールテントがあります。素材にダイニーマを使っている点もイマっぽいのですね。ただし、ありえんほどに高額な価格設定なので、新しい物に挑戦したい方はぜひ使って感想を教えてください。

シングルウォールテントは山岳テントとして有用なのか?

シングルウォール
テント
無雪期積雪期
結露夏〜秋は盛大に結露する。凍るので関係ない。
テント重量優位性はあまりない。軽いテント最高。
前室無くてもいいが有れば便利。そもそも不要。
設営時間あまり重要ではない。スピード命。
テント被りまず被らない。エスパース愛好家は多い。
おすすめ度マニア向け。かなりおすすめ。

ありきたりな結論になってしまうかもしれませんが、無雪期はダブルウォールテントを、積雪期にはシングルウォールテントを使い分ける運用が一番かと思います。使い分けることでそれぞれのテントの寿命を伸ばすことにも繋がりますし、利点・欠点を補完できます。

積雪期のテント泊に限って言えば、シングルウォールテントの圧倒的な設営スピードやシンプルな構造はおすすめできますし、雪山登山で一番気になる耐風性も信頼のおけるものでした。このテントで多くの強風を乗り越えてきました。

一方で、シングルウォールテントを無雪期に使う場合、少し大きめのテントサイズを選ぶといいかもしれません。テント内で結露が発生してもシュラフが濡れないですみます。

ダブルウォールテントと比べて癖の強いシングルウォールテントですが、そのシンプルかつ洗練された佇まいには愛着が湧くものです。

シングルウォールだから、というわけではありませんが、日本国内・海外の高山帯で活躍してきたエスパースのシングルウォールテント。4シーズンを想定しているテントであれば夏山から雪山まで山岳テントとして使用することが可能です。

シングルウォールテントは、使い方によっては非常に有用な相棒になります。ただ、初めてシングルウォールテントを使うという場合、まずはマイルドな雪山登山から試してみて、厳冬期や夏山でテストしてみることをおすすめします(癖は強めです)。

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