雪山登山で使うテントを検討!「エスパース」や「エアライズ」などメジャーなテント4つを比較

雪山登山でテント泊する場合、どのテントを使えばいいのか本当に悩ましいですよね。今年は雪山テント泊を前提としてテントを買い替えるつもりで、アレコレ検討しています。誰もが納得する「普遍的な正解」はないと思うのですが、これまでのテント泊経験も踏まえた上で、雪山登山で使用するテントを考えてみたいと思います。

雪山で使うテントで重要なポイント

雪山登山は春・夏・秋の登山と比べて気象条件がずっと過酷になります。私は去年、雪山登山デビューを果たしましたが、夏山と冬山はまるで別物!雪山の美しさと怖さを身を持って学びました。

春・夏・秋山で培ってきた登山一般の経験は雪山登山でも役に立つのですが、装備類に関しては、考え方が随分と変わってきます。

テントについて言えば、3シーズン用と4シーズン用が売られており、雪山でテント泊する場合は4シーズン対応の物が好ましいですね。

シングルウォール/ダブルウォールの違い

出典:モンベル

テント選びでまず重要なのが、シングルウォールなのかダブルウォールなのかという点です。モンベルのサイトが分かりやすい図を載せてくれています。夏山で使っているテントのほとんどがダブルウォールというテントで、本体にフライシートを被せて使います。

こうすることで、本体とフライシートの間に空気の層ができ、これが暖気/寒気をクッションすることでテント内の快適度を上げるのに一役買っています。

テント設営の速度

ダブルかシングルかは快適性に影響してきますが、他にもテント設営速度に大きくかかわります。ダブルウォールの場合は本体を組み上げた後、さらにフライシートを被せる手間が生じます。

厳冬期の雪山では、歩く/動くのを止めてすぐ、末端が急速に冷えてきて、長時間外に居ると凍傷になるリスクが高くなります。そのため、雪山登山ではシングルウォールを使って少しでも早くテントを作り、中に逃げ込めるようにする発想が生まれるわけです。シングルウォールテントは2本ポールを通すだけなので、ダブルウォールよりも設営が楽なんですね。

また、通常のフライシートは通気性が低いため、豪雪でフライシートと地面の隙間が埋まってしまうと、キャノピー内の酸素濃度が低くなるリスクがあります。一方、シングルウォールテントは防水性と通気性を兼ね揃えた素材でできており、この心配がありません。ダブルウォールではこの欠点を克服するために、通気性の高いスノーフライが別売されていることがほとんど。しかし、スノーフライには防水性がないため、「雪」じゃないと使えないんです。「雨」だとテント内がびしょ濡れになります。

あっちを取ればこっちが立たず。これがテントを決めるハードルになっており、シングルとダブルは一長一短、本当に悩ましいポイントなのです。

・・・

さて、雪山登山で使用するテントを検討するにあたり、これら重要なポイントを踏まえ、メジャーでよく選ばれている「4つのテント」を比べてみたいと思います。

比較するポイント

  1. シングルウォール/ダブルウォール
  2. 重量
  3. サイズ(設営時/パッキング時)
  4. 価格

実際に検討する4つのテント

  1. エスパースデュオX(ヘリテイジ/HERITAGE)
  2. エアライズ2(アライテント/ARAI)
  3. ステラリッジ2型(モンベル/montbel)
  4. カミナドーム2(ファイントラック/finetrack)

ここで検討する4つのテントは、いずれも雪山登山で使用され、実績あるものです(カミナドームは他と比べて新参のテント)。そのため、「本当にこれで大丈夫なのか?」という信頼性の視点ではなく、一つ選ぶとしたら「どの観点から何を重視して、結局どれにしよう?」という方法で決めたいと思います。

雪山で使われるテントには他にも、プロモンテ、ダンロップ、オクトス、MSRなど色々とあるのですが、選択肢を広げすぎるといつまでたっても決められなくなってしまうため、価格やら情報量やらを踏まえ、代表的な上記4つに絞って考えていきます。

エスパースデュオX(ヘリテイジ)

出典:ヘリテイジ

「ヘリテイジ」とは、カモシカグループの山好き社員達が、エスパーステントをはじめとした山道具専門の部門を立ち上げた会社。東京から山の本場「安曇野」に拠点を移し、試作を山に持ち込んみ徹底的にテストしてるそう。すごいですね・・・。

テントの雰囲気は「ザ・日本、昭和」が漂っていて、私はそんな雰囲気が嫌いじゃありません。ヘリテイジのエスパーステントはダサいとネットで書かれているのをたまに見ますが、そうですかね?むしろ渋くてカッコいい気もしますが?

夏山でもテント場で見かけますね。

基本的なスペックと価格

  • 構造:シングルウォール
  • 重量:1.58kg(ペグを含めた総重量)
  • サイズ:130cm×210cm×115cm(横、縦、高)
  • パッキングサイズ:14cm×31cm(短辺、長辺)
  • 本体価格:65880円
  • 吹き流しの入り口(別売):11448円

特徴

何と言っても日本を代表するシングルウォールのテントです。シングルウォールなのでフライシートがありません。入口が長辺側についている横型のテントで、雪山登山のゴワゴワした服装や靴が合っても入りやすい構造となっています。

シングルウォールテントは他のメーカーにもラインナップがありますが、いずれも入口が短辺側についている縦型のテントなんですよね。なので却下。雪山登山として使うのであれば、私は入り口が長辺側についている横型テント一択です。入口の入りやすさはそれくらい重要。

本体が透湿防水素材(ゴアテックス)なので、雪も雨も防ぐことができます。そのため、フライシート無しで通年使用することが可能となっています。

居住性を考えて、他のテントと比べて若干背が高い事もポイント。

長所/短所

テントの設営時間に重要なテントとポールの連結に関し得、エスパースのポールは「袋とじ」「スリーブ形式」となっており、おそらく設営時間は存在するテントの中で最も短縮できるタイプだろうと思います。

*袋とじ:ポールを通すときに、反対側が袋とじの構造になっていて、反対側へ周ってグロメット(ポールの先をはめる丸いアレ)を固定する必要が無い。超楽ちん。

*ポールスリーブ:ポールが布を通る構造の事。テントのフックをポールにはめて、テントをポールを連結するのは吊り下げ式と言います。いちいち「パチパチ」フックをはめなくて済む。超楽ちん。

雪山では「立ち止まってから(つまりテント設営をはじめてから)」いかに早く作業を終えられるかが重要なので、設営が簡単なのは極めて重要です。

一方、シングルウォールゆえに、ダブルウォールと比べたら多少寒いと思います。また、結露も目立つはずです。ただ、結局はダブルウォールだって結露しますし、どうせ寒いですからね。また、雪山に限って言えば、結露はどうせ凍って霜になるので濡れる心配はありません。

これまでに多くの登山家に使われてきた実績があり、個人的には一番気になっているテント。

エアライズ2(アライテント)

多くの人がアライ製のテントやツェルトを愛用しており、かく言う私もツェルトはアライの物を使用しています。

エアライズは登山で最も広く使われているテントの一つではないでしょうか。冬に限らず、夏山でもエアライズは人気です。

基本的なスペックと価格

  • 構造:ダブルウォール
  • 重量:1.55kg(通常のフライ使用時)
  • サイズ:130cm×210cm×105cm(横、縦、高)
  • パッキングサイズ:15cm×30cm(短辺、長辺)
  • 本体価格:44000円
  • スノーフライ:16200円

特徴

ダブルウォールの代表的なテントになります。厳冬期での使用では通常のフライに加えてスノーフライが別売されており、状況に応じて使い分けが可能。

入口は短辺側になります。入り口が短辺側だと風に多少強いんですが、出入りやザックを出し入れの関係で、私としてはあまり乗り気ではありません。特に現在横型のテントを使っているので、一層不便/面倒に感じてしまいそうです。

長所/短所

本体とスノーフライを合わせても6万円とリーズナブルです。登山を始めたころ、アライテントは高いイメージだったんですが、オールシーズンで見るとそうでもなかったんですね。雨でも雪でもオールマイティーに使い勝手が良さそうなイメージ

非常に多くの人が使っているという安心感もあります。一方、テント場で被ることも多いので、それが嫌な人は微妙かもしれません。

エアライズはのポールは片方袋とじ、ポールスリーブの構造になっているので、エスパース程ではありませんが、それでも設営は簡単にできそうです。エスパースとの一番の違いはフライシートの有無。こちらはダブルウォールなのでフライシートを本体に被せる手間が発生します。

また、ベンチレーターの位置が入り口と直角なので、通気性がイマイチなんだとか。

「難い選択肢」なのは間違いない。

ただ、入り口が短辺側なのは気になります。

ステラリッジ2型(モンベル)

 

言わずと知れたモンベルを代表する超有名テント。モンベルは、リーズナブルな価格でアウトドア製品は全て網羅しているんじゃないかという幅広いラインナップが売り。私もかなりお世話になっています。モンベルはその知名度や汎用度から、一部の山マニアにはあまり好かれていない気もしなくないのですが、庶民に優しいので私は好きです。

基本的なスペックと価格

  • 構造:ダブルウォール
  • 重量:1.61kg(ペグを含めた総重量)
  • サイズ:130cm×212cm×105cm(横、縦、高)
  • パッキングサイズ:17cm×27cm(短辺、長辺)
  • 本体価格:41200円
  • スノーフライ:18500円

特徴

エアライズとほとんど同じ構造です。

長所/短所

エアライズは多くの人が使っているとご紹介しましたが、ステラリッジはその比ではありません。多い時は、テント場の3~4割がモンベルのステラリッジテントという事も珍しくない。

そう、このテントの致命的な弱点は、テント場で誰かと被ってしまう事。しかも相当な高確率です。色のバリエーションはいくつかありますが、それでも「あ、ステラリッジだ」と言う具合でオリジナリティは皆無だと思った方が良いでしょう。

しかし、長所もあります。

それは入手しやすい事。モンベルは多くの町でストアを展開しており、店員さんに相談したり実物を見たりして決めやすいのです。

機能面、価格面いずれもエアライズと似ており、モンベルのポイントを貯めたい人はステラリッジが良いのではないかなと思います。私はモンベルのインナーウェアとか大好きなんですが、テントまでモンベルはちょっと…と言った具合なのでパス。

(じゃあ検討するなって思われますよね。でも、それ程にテントのベンチマークとして存在感があります。それくらいよく使われているということです。)

カミナドーム2(ファイントラック)

こちらも言わずと知れた、日本のアウトドア業界を牽引しつつある先鋭企業「ファイントラック」の製品です。ファイントラックは他のメーカーと比べると若干歴史が若いのですが、アウトドアのプロでも満足できるような、ハイスペックで尖った製品を作っている会社です。

基本的なスペックと価格

  • 構造:ダブルウォール
  • 重量:1.43kg(ペグを含めた総重量)
  • サイズ:130cm×212cm×105cm(横、縦、高)
  • パッキングサイズ:15cm×25cm(短辺、長辺)
  • 本体価格:66960円(本体)
  • スノーフライ:39744円

特徴

入口が長辺側にある横型のテントです。発売されたのが他のテントと比べると新しく、そのあたりは最近のトレンドを汲んでいるのではないでしょうか?

ダブルウォールなので本体を組み立て、上からフライシートを付ける一般的な構造です。

色合いが独特で、目立つ色をしているので雪景色の中でも見つけやすかったり、他の人と被らないなどの利点がありそう。実際、カミナドームを使っている人はまだまだ少数で、テント場でもあまり見かけません。

長所/短所

他のテントと比べて軽いことがポイントです。この大きさのテントで1.4kgしかないのは驚異的ですね。非常に薄い生地を使っているということで、機能は維持した上で、極限まで重さを削いでいるのが伝わります。

また、最新の設計、最新の素材を使っており、性能としては申し分ないと思います。その意味において、これから「しっかりしたテントが一つ欲しい」という人には打ってつけじゃないでしょうか?

でも、高い\(^o^)/

本体価格はいいとして、スノーフライのこのお値段は一体・・・。

これはファイントラック全般に言える事なんですが、細部までこだわりまくっている結果なのか、素材の問題なのか、ウェアもテントも何もかもが高額です。モンベル辺りと比べるとその値段は際立って高く感じます。

アウトドア用品のスペックと価格差について私の所感

 

これは私の考え方なんですが、アウトドア用品って上を見れば青天井、際限ない面があったりするんですよね。ファイントラックが目指しているのは緑の線を越えた所だと思っていて、確かに性能は高いんでしょうが、その分値段も跳ね上がります。

一方、じゃあモンベルなんかはどこにいるかと言うと、黒い線は越えてるんですよ、どう考えても。

緑を越えてからの領域に関しては、性能の上り幅は間違いなく鈍化します。ウェアで言えば「透湿性能」がまさにいい例です。どれだけ透湿性能が高いと言っても、全く蒸れないウェアなんて無いんですよ。程度の差はあれ、何を着たって汗をかいたら蒸れます。そして、その僅かな程度の違いのために結構な価格差になっていることも多いですね(あくまで私の所感です。感じ方には個人差があります)。

目次

4つのテントを横並びで比べてみる

それぞれのテントを、項目ごとに横並びで比べてみます。

長所は赤、短所は青で示しました。エスパースデュオXにもスノーフライはありますが、せっかくのシングルウォールにスノーフライを付ける事はまずないため、「-」で示しています。

さて、こうしてみると、やはり良いテントは値段が高いんだなぁという事に。エアライズとステラリッジは値段こそリーズナブルですが、入り口が短辺側で、これと言って決め手になる要素がないので見送ります。

通年使用をどれ程考慮するかが決め手

通年での使用を優先するのであれば、ダブルウォールであるカミナドームはかなり魅力的です。最新のテントなのでこれまでの研究成果が詰め込まれているでしょうし、素材よし、長辺側入口よし、サイズやパッキングサイズも申し分ありません。何より軽い。

一方、この記事の本題である「雪山」を意識すると、シングルウォールのエスパースデュオXも選びたい。雪山でシングルウォールと言うのは玄人なチョイスですし、何よりかっこいい。そしてスピーディーに設営できるのは極寒の環境では重要です。

エスパースデュオXに決定

冒頭で述べたように、普遍的な正解というものはありません。そんな悩ましい選択肢の中で、私はシングルウォールテントを経験してみたいという気持ちが他のポイントに勝りました。

値は張りますが、がっつり使っても数年は持つでしょう。しっかりとした強度のある素材で作られています。雪山の厳しい環境に持って行く相棒はエスパースデュオXに決めたいと思います。

雪山での使用からはじまり来年の夏山まで、使用感は実際に使ってレビューしていきます!まずは今年の冬にご報告できると思いますので、そちらもどうぞ楽しみにしていてください。

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