「日本で一番の絶景はどこだろう?」…大きな枠組みで見れば、それは間違いなく飛騨山脈(北アルプス)です。そしてさらに分解するならば、答えの一つは後立山連峰だろうと私は思うんです。
今回はそんな北アルプス後立山連峰の一座であり、日本百名山に指定され、多くの登山家を魅了してやまない五竜岳(ごりゅうだけ)へ挑戦してきました!
2017年12月、厳冬期の遠見尾根へ挑むも、トレースゼロの深雪ラッセルに阻まれ、中遠見山までしか進めなかった五竜岳。今回は残雪期という事で、厳冬期とはまた違った山の姿を楽しみながら日本屈指の絶景を求めて再び五竜岳へと向かいました。
・・・波乱万丈の幕開けとなることを、この時は、知る由もなく。
・・・自分をビンタしたの産まれて初めてかもしれません。笑
仕事帰りに新宿から長野県松本へ前泊移動!
例のごとく、会社の後そのままの足で向かったのは新宿駅のバスタ新宿。
後立山がある長野県大町までは遠く、当日の朝移動では間に合わないため、登山に際して前泊の必要が出てきます。以前は深夜バスを利用したものの、アレはあかん、30歳を迎えたナイスエイジには堪えます。今日は手前の松本でストップして前泊、始発列車で白馬五竜を目指すプランをとりました!
松本のカラオケで前泊!
社会人にもなってカラオケで前泊するのは元日本一周チャリダーの性でしょうか?
(後になって調べると、松本駅近にカプセルホテルがあったようです。今後はこれを利用します)
明日は早いので2~3曲歌って早めの就寝。音楽聞きながら眠りに就きます。明日は5:48発の電車に乗ります。これを逃すと次は3時間ほど開いてしまい、登山できなくなるので寝坊は厳禁!
いいですか?寝坊は厳禁ですからね!?
絶対寝坊すんなよ?ふりじゃないからな?絶対だぞ!?
5:47起床(電車は5:48発)
・・・オワッターーー\(^o^)/
“よく寝たぁ”とか思ってたらよく寝過ぎて電車の発車時刻1分前でした。
自分でこれ程までに強烈で、しかも無意識のビンタを繰り出したのは生まれてはじめての経験でございました。ほっぺたに残る痛みと罪の意識を引っさげながらも、最善を尽くすべき出発します。
嘆いていても始まらない!松本駅から神城駅まで電車で行くのは物理的に不可能となった今、選択肢としては山域を変えるか(例えば北アルプス南部)、途中まで電車で行って後はタクシーを利用するか否か。
“電車が使えないならタクシーを使えばいいじゃない”と、アントワネットばりの結論を導き出しまして、信濃大町まで電車で移動、そこから神城までは大人の力(金)で解決することにしました。
タクシー代8,000円は痛手でしたが最も優先されるべき事項は、登山口までたどり着くことです。
さもありなん。
しかし!タクシーから眺める景色は爽快!
爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳を眺めながらのドライブは最高!
白馬五竜スキー場(8:15)
3カ月ぶりに白馬五竜スキー場へやってまいりました。あの時は雪も降り、厳冬の寒空に震えていましたが、3月最終日の今日は暖かく、季節が冬から一気に春へ進んだのだと改めて感じます。
エスカルプラザ
実際、エスカルプラザ前の雪は驚くほどに少なくなってました。
テレキャビンで登山口へ!
寝坊しましたが、なんだかんだテレキャビンの始発ちょい後に着けたので結果オーライ。テレキャビンに乗って登山口へと向かいます!
白い丘、青空、そこを歩む登山家。
残雪期になり、登山客が一気に増えたようです。厳冬期では「誰とも出会わない」なんてことが往々にして起こります。静かなる山行、大自然の厳しさに向き合う時間は最高なのですが、残雪期の賑やかな雰囲気も悪くないものですね。
春霞に邪魔されることもなく、北信や上信越の山を振り返りながら、小遠見山を目指します!
Twitterのフォロワーさんとお会いした!
私はTwitterをやっているんですが(@kiyomiyakenta)、フォロワーの方も遠見尾根に登るという情報を前日にキャッチしておりまして、お互いトレードマークを教えあい、実際にお会いする事ができました!
登山と温泉のブログ「あくくり」を書いておられるHiroさん(@HMS_Hiro)です!以前八ヶ岳にて、ブログ読者の方に「清宮さんですか?」とお声がけ頂いたことがありましたが、Twitterのフォロワーさんと山でお会いするのは初めて!
山好きの方とお会いできたのはうれしいものです。
私はテント泊の装備を背負っているので歩くのが遅かったのですが、Hiroさんがペースを合わせてくださり、種々の話に花を咲かせながらの楽しい登山。
12月に一人で強風ホワイトアウトの中をラッセルしていた時とはまるで景色が違いますね。
それにしても暑い。この時期のウェアリングは難しいですが、インナーに半袖で十分みたい。
小遠見山(10:00)
第一のピークである小遠見山までやってきました。
遠見尾根は小遠見⇒中遠見⇒大遠見⇒西遠見⇒白岳⇒五竜岳といくつかの小ピークを時折蛇行しながら歩く道です。お隣にある八方尾根(唐松岳)はほぼ真っすぐになだらかな道であり、歩く距離やアップダウンの多さで異なります。
厳冬期の五竜岳が容易に人を寄せ付けない理由がここにあります。遠見尾根は長いんです。しかし、難しいから、厳しいからこそ尊い。山のそんなツンデレなとこが好きなんです。
燦々と降り注ぐ太陽を反射する残雪を歩きます。
“これ程までに気持ちのよい尾根歩きがあるだろうか?” そんな気分にさせてくれる快晴の遠見尾根でした。
ここ最近の陽気で雪庇はずいぶんと小さくなったようですね。Hiroさんとお話ししながら黙々と歩いて行きます。
中遠見を過ぎて程なく、鹿島槍ヶ岳がようやく双耳峰たる姿を現しはじめました。鹿島槍ヶ岳は遠見尾根から眺めるのが最も美しく、そのキリっとした双耳峰が魅力です。
先へ行くにつれ南峰が見えてくるのがたまらなく嬉しいんですよねー!
五竜岳と対峙するHiroさん。絵になりますねん。
大遠見山(12:00)
大遠見山へ着き、私たちの目を喜ばせたのは鹿島槍ヶ岳の雄姿!
北峰(左側)と南峰(右側)が吊尾根で左右均等にキリッと屹立としてそびえるその様は、後立山連峰の盟主たる堂々としたもので、山好きの人なら、ここから眺める鹿島槍ヶ岳から目を離すことは簡単ではないのです。
イエーイ!!!\(^o^)/
まさかこうしてTwitterで知り合った方とお山を登れる日が来て、記念撮影できるなんて夢みたい。白いキャンバスの上に赤と青のコントラストがめちゃくちゃいい写真じゃないですか!撮ってくれたお姉さんのセンスが光りまくる!
ふぁー!鹿島槍ヶ岳があまりにカッコよくて、五竜岳登らなくても満足感ありすぎる遠見尾根!明日朝焼けが見れるといいなぁ。
後立山連峰は絶景がビンビンにほとばしる日本の誇るべき景色。高山植物の宝庫でもあり、多くの雷鳥が住む楽園でもあるんです。
北信・上信越の連嶺。
雨飾山、火打山、妙高山、高妻山、戸隠山。
大遠見~西遠見中間地点で幕営(テント泊)
中遠見山から西遠見山までは緩やかな登り~平坦な箇所がほとんどで、雪のある時期は幕営地を選ぶのに苦労しません。
多くの方は少しでも五竜岳に近い大遠見や大遠見~西遠見中間地点に幕営します。西遠見まで行くと平坦地が無くなるため注意です。
稜線の五竜岳山荘の陰にテントを張るというのもありですが、こっちの方が景色いいと思うので、個人的には尾根上にテントを張るのがおすすめですよ!
残雪期という事であちらこちらに「空き家」が見つかります。
ブロックが積まれていたので、今回は自分で労することなく雪壁に守られた優良物件にテントを張ることができました。
どなたかわかりませんが、ありがとうございますー!
テントを張ってランチ&コーヒータイム。
テント場の前には黒々とした岩が隆起した五竜岳。
テント泊をすればこんな絶景に囲まれてゆっくりできちゃいます。今日は日帰りだったHiroさんも「次はテント泊したい・・・」とこぼされてました。
厳冬期は難易度高いですが、残雪期であれば遠見尾根の敷居はそこまで高くないと思いますよ。
五竜岳アタック(14:40)
ここまで出番のなかったアックスを出して、いよいよ五竜岳へアタックします!
動向を伺っていると多くの人は幕営翌日の早朝にアタックするようです。私は五竜岳の山頂で夕景を見たいので、こんなあり得ない時間にアタックを開始し、ブログでご紹介こそしますが、私の山行計画はあまり一般的ではないとお断りしておきます。
こんな時間に五竜岳へ登り始める人はいません。人とすれ違うことなく、一人山頂へと歩みを進めます、慎重に、かつ大胆に。
西遠見を過ぎると大きなクラックがあって、もうしばらく融雪が進むと大規模な崩壊が起きそうでした。これからの時期は大小様々な規模の雪崩が頻発しますからね。状況判断はくれぐれも慎重にしたいものです。
西遠見を過ぎ、白岳へと登っていきます。
五竜岳へ直登したくなりますが、カール地形は相当な傾斜があるためコース通り白岳経由のコースを取ります。
西遠見から白岳へは見た目以上に時間がかかりました。
振り返るとこんな感じです。大きなカールを少し巻きながら登ります。斜面を滑落しないようにだけ注意。落ちたら止まらないでしょう。
五竜山荘(16:00)
五竜山荘のある稜線まで上がってきました!五竜山荘と言えばこのブログのタイトルと大きな関係がある山小屋。
(五竜山荘)山が好き、酒が好き。
(当ブログ)山が好き、写真が好き。
ブログのタイトルは五竜山荘の名物Tシャツからインスパイアさせて頂いたものなんです。それくらい「山が好き、酒が好き。」という響きが好きなんです。山屋の核心をこれでもかと言うほど端的についていますよね。
五竜岳の核心部へ挑戦
いよいよ、五竜岳の山頂を目指し、核心部を攻めていきます!
稜線はクラストしてるのでアイゼンが効き歩きやすい。アイゼンの刃を雪へしっかり噛ませ、慎重に登っていきます。
しかし、五竜岳山頂までの道は易しくありません。むしろ、肩幅ほどしかない道が続き、落ちたらそこで終了。アイゼンをズボンに引っかけるような初歩ミスが命取りになるため。
慎重な行動と判断が求められる場所ですね。
振り返って唐松岳方面。
どこを歩くかの判断が求められますが、それこそが雪山登山の醍醐味でもあります。残雪期はトレースがあることがほとんどだと思いますが、北アルプスではまだまだ雪が振る可能性はあり、降雪直後は一層慎重にいきたいものです。
稜線だけあって風が強い場所もありますが、概ね穏やかで歩きやすかったです。
相当な急斜面を越えていきます。五竜岳山頂直下は夏道でも危険なのですが、雪山は本当に侮れません。
暗くなる前に下山する数パーティーとすれ違い「これからですか!?」と、お声がけいただきました。気をつけてね、と。逆の立場なら私もそうしますもん。お声がけありがとうございました!
山頂の気配を感じます。
美しいシュカブラを眺めながら、最後のステップを刻みます。
五竜岳 2814m
五竜岳(2814m)登頂です!
五竜岳に来るのはこれで2回目ですが、雪山の五竜岳に登った喜びは相当なものでした。やりましたー!!!
圧倒的なスケールの北アルプス北部。
雪の鎧をまとう剱岳。
唐松岳、白馬岳へと続く稜線はまだまだ残雪豊富です。
五竜岳からの景色で何よりも特筆すべきは、大きな大きな鹿島槍ヶ岳!
朝や昼では逆光気味となってしまうんですが、この時間は最高にきれいです!五竜岳から眺める鹿島槍ヶ岳、夕日を浴びて最も美しい状態だったのではないでしょうか。雪を頂いたこの山を眺めることができ私は大満足でした。
春霞のためか夕焼けとはいきませんでしたが、山肌が赤く染まるだけが夕日ではありません。この優しい雰囲気も私は大好きです。
鹿島槍ヶ岳と剱岳に囲まれて眺める夕景、この至福の時間こそ私の人生なのです。“生きてるなぁ!!”って感じるんですよね。自分の足で到達する山の絶頂、最高のタイミングを計り、それが実現することほど嬉しく、感動的なことはありません。
“一度は退けられた五竜岳”
絶景を堪能し、達成感に包まれた私は心から満足して山頂を後にしました。
…
そのあとはご想像の通りです。満月の月明かりに照らされ、一人静かに、粛々とテント場まで1.5時間かけて戻りました。
2日目
翌日は晴れとも曇りともよくわからないお天気。
昨晩は夜中に猛烈な山谷風が時折吹いていましたが、ブロックもあり快適でした。気温的にも-5℃くらいしかないので、暖かいものです。
ご来光は見えているのですが霞が強くてドバーッと朝焼けにはなりませんでした(涙)
それでも、私はこの構図で写真が撮りたくて撮りたくて、ずっと憧れていた構図だったんです。それだけに、カメラを構える私の高まりは相当なものでしたね。
これはこれですごく好きな感じです。爆焼けのモルゲンロートだけが山の朝ではありません。しっとりした絶景は、山の厳かな雰囲気が陰影により強調されている感じがしますね。
下山開始(7:30)
ご来光前に五竜岳を目指すパーティーが多かったようです。稜線は強風予報なので、山頂アタックはせずに下山するパーティーもいました。私はと言えば昨日登頂したので後は下山するだけです。
名残惜しくもテント場を後にします。
今日は気温が上がる予報なんですが、朝方は雪が締まっていて非常に滑りやすかなっていますので、不安なら迷わずアイゼンを付けた方がいいと思いました。
私もはじめはツボ足でしたが途中でアイゼンを装着。
12月の山行で幕営した場所、どなたかテント張ってました。
長くて急な遠見尾根を下って・・・。
スキー場まで戻ってきましたー!
テレキャビン戻り(9:00)
テレキャビンにて祝杯のコーラを買って登山完了。
神城駅(10:00)
白馬五竜から神城駅までは歩きました。この時間はまだシャトルバスが動いていないからです。白馬五竜から神城駅までは大体15分くらいでしょうか?
神城から信濃大町までは電車で戻ります。信濃大町から見えるのは鹿島槍ヶ岳。昨日はあんな標高にいたのかと思うと、なんと感慨深いことでしょう。
松本までの電車、車窓の風景は私の目を再び喜ばせてくれます。中でも嬉しかったのは、人気の北アルプスにあって謙虚な名峰「餓鬼岳」を見つけた時でした。
私が北アルプスデビューを果たした思い出深い山域です。
バスではなく電車を選んだ理由とは?
白馬五竜からも松本からもバスが出ていますし、バスの方が安いのですが電車を選びました。
それは登山の一人打ち上げのためです!笑
しかし、登山の後の祝杯のうまさたるや!!
五竜岳残雪期登山まとめ
- 残雪期日帰り登山、五竜岳登頂は時間的に厳しい。夏山でも日帰りは登山はぎりぎりのコースタイムとなるようです。
- 日によってはかなり暑いので、行動は「長袖インナー+半袖Tシャツ+ソフトシェル」くらいがおすすめ。夜中はマイナスまで下がるため、防寒着も必要。
- 幕営地は大遠見~西遠見の中間地点がおすすめ。中遠見~大遠見までは平坦な場所がたくさんあるので、幕営地には困りません。
- 西遠見から少し先に大きなクラックが発生しやすいようなので要注意。
- 遠見尾根は雪庇も多いため、雪庇崩壊に要注意。
- 五竜山荘から先は急峻で急登、狭い道が続きます。
- 五竜岳革新部は、夏道と冬道のどちらを歩くかは状況によります。本記事ではトレースもあったので夏道を歩いていますが、トラバース気味に斜面を歩く夏道ではなく、冬道を歩いた方が安全な場合が多いです。
しかし、遠見尾根と五竜岳の景色は圧巻の一言。
ぜひ、その目で確かめてみてくださいね。
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コメント一覧 (2件)
清宮さん
こんにちは〜
ヨーロッパ出張に行かれたりと仕事充実で頑張っておられますねー。
その忙しい中での残雪期登山お疲れさまです。
今回も素晴らしい景色を見せて頂き有難う御座います。五竜岳から眺める鹿島槍ヶ岳は最高ですねー。九州では絶対見られない絶景ですね。
私もこちらの山を月2〜3で登っていますが、山仲間で北アルプスに行った方は九州の山とは全然違うと言ってました。
仕事と山これからも頑張ってください。
お一人様の打ち上げを早く卒業されるのも心待ちにもしています。
日本一周していたのがだいぶ昔に感じられますね~(๑´ڡ`๑)
就職して早々に海外行かせてもらったりと今は恵まれまくっているので、この機会に成長して還元できるようになりたいですー。五竜岳は最高でしたねー!私が最も好きな山の一つですし、ここから見える景色は本当に格別です。
九州でも厳冬期は雪が付くので、レベルアップして厳冬期の祖母山なんてよさそうな気がしちゃいます(๑╹ڡ╹๑)p♪
おひとりさまはだいぶこじらせているので、険しい道のりとなりそうです笑