写真撮影が趣味だという人には、写真展開催と本の出版を目指す人が多いと思う。
いずれも簡単な話ではないが、目標を言葉にして宣言することで、前向きにそして積極的に取り組むことができる。手元にはかけがえのない経験とたくさんの写真があり、様々な機会に恵まれた現代では、尻込みしていたらもったいない話だ。
有名人でも作家でもない一般人が『本』を出版するにはどうしたらいいのか、現実的な方法を考えてみました。
本を出版する5つ方法
- 自費出版
- 企画出版
- Amazon Kindleダイレクトパブリッシング
- 製本&セルフ販売
- クラウドファンディング
大きく分けると、上記5つの方法がある。それぞれについて詳しく詳しくみていこう。
1. 自費出版
自費出版とは、本が書店に並ぶまでにかかる費用を著者が負担し、出版社に製本から流通まで依頼する方法。
製本版のいわゆる『本』を出すうえでネックになるのは流通であり、余程のインフルエンサーでも無い限り、個人の力では限界がある。そこで、各書店に流通チャネルを持つ出版社に依頼するわけだが、流通や製本にかかる必要を自身で負担すると、最低でも200~300万円はかかってしまう(大手出版社であればさらに必要)。
いくら有名書店の棚に並ぶ可能性があったとしても、この額では一般人にとって現実的な方法とは言い難い。下記で紹介するように、現在では出版する方法論が増えており、自費出版はお金を持て余している人以外にとって、堅実な方法とは言えない。本を出版したいと考えた場合、まずは残り3つの方法を検討した方が良いと思う。
2. 企画出版
企画出版には2つの戦略が考えられる。いずれにせよ、出版会社に本のアイディアを売り込む方法であり、行動力が求められる。出版側が売れると判断すれば費用を負担してくれたり、企画を買い取って原稿料を払ってくれたりする。「本を出版する」というイメージに一番近いかもしれない。
企画出版のメリットは自費出版に比べて費用が大幅に少なくなるか、自己負担ゼロで本を出せること、紙の書籍が書店の店頭に並ぶこと。
出版社に営業をかける
具体的にどうするかと言えば、出版したい本の内容を簡潔にまとめたプレゼン資料を作成し、片っ端から出版社に売り込むこと。売り込むと言っても、わざわざ会社まで出向くのではなく、まずはメールか電話をしてみるのがいい。
出版社と言っても最大手の集英社や講談社といったイメージではなく、もっともっと小さな会社を含めて営業をかける。どのように出版社を調べるのがいいだろうか。効率的なのは、書店で売られている本やAmazonで販売されている本を実際に出版している会社を片っ端からリストアップすること。Googleのホームページを調べようと思っても、なかなかうまくいかない(小さな会社のホームページはヒットしない可能性がある)。
この際に成功確率を高める方法として、プレゼン資料が優れていることはもちろんのこと、本の内容が具体的に決まっていること。かつ、SNSのフォロワーが多かったり、発売した際に初動である程度の数売れる見込みが高ければ、出版社も検討しやすい。
ちなみに・・・100社に営業をかけて企画出版に至った例を聞いたことがあります。
SNSでの影響力を高める
こちらは簡単ではないが、自分から営業をかけるのではなく、出版社が本を出版したいと思えるように、自分自身の影響力を高める方法。インフルエンサービジネスが盛んな現代において、出版社のお眼鏡にかなうような影響力を身につけるのは容易ではない。翻って、本を出版したとしても、何かしらのプラットフォームでフォロワーがいなければ本が売れにくい世の中なのも事実。
一見遠回りのように思えるが、出版したい本のジャンルにおいて、TwitterやInstagramを始めとしたSNSに注力しておくことは、出版後を見据えても決して無駄にはならない。
3. Amazon Kindleダイレクトパブリッシング(KDP)
Kindleを始めとした電子書籍は当たり前の時代になり、スマホで本を読むことも当然の時代。一昔前であれば、本を出版するというのは、紙の本を出すことと同義だったものが、現代では紙の本と電子書籍の2通りが可能となった。もちろん、この記事を読んでいる人は紙の本を出版したいと考えていることと思うが、仮に不可能なのであれば、電子書籍からトライして、自身の影響力や出版力を高めてから、再び2.の企画出版にトライすることもできる。
加えて、2021年秋からAmazonがセルフ出版としてAmazon KDP (Kindleダイレクトパブリッシング)を利用して、個人が紙の本を出版することが可能となった。Amazonで販売することが基本だが、外部流通に乗せるオプションも用意されている(販売価格などの諸条件あり)。Amazon KDPでは電子書籍と紙の書籍いずれも出版可能であり、リスクなく本を出版することができるため、初めて本を出版したいという人に最適のサービスだといえる。
特に電子書籍は著者へのロイヤリティーも高いので、出版する内容が一般向けであればあるほど(最近では特に投資関係の本が人気)収益も期待できる。
このサービスを利用して写真集を出版したので、興味がる方はぜひ手に取ってみてほしい。また、AmazonKDPを利用して出版するノウハウをまとめているので、ぜひこちらもチェックしていただきたい。
- 写真集「穂高 煌めきの稜線」発売のお知らせ
- Amazon KDP 苦労してでも「写真集販売」という道を選んだ理由
- Amazon KDP 出版社を介さず写真集を出版する「メリット・デメリット」
- Amazon KDP 「写真集発売の手順」写真集の構想から販売開始まで
- Amazon KDP 「写真のセレクト方法」と「掲載枚数」について
- Amazon KDP 「写真集のテーマ決め」と「主題」の絞り方
- Amazon KDP 写真集に「作品解説」や「あとがき」など文章情報は掲載すべき?
- Amazon KDP 写真集出版に向けた「入稿用データ」の作成方法(製本版・電子書籍)
- Amazon KDP 写真集出版で辛かったこと&嬉しかったこと「10選」を振り返る
4. 製本&セルフ販売
こちらは写真集に多いやり方だが、印刷所や製本会社でフォトブックを制作して、Stores、Base、Shopifyなどの個人ECショップで販売する方法。
前者3つとは毛色が違い、出版するという感覚よりは、物販に近いイメージとなる。メリットは、印刷会社にて製本するため、プリントの質が高いこと。SNSなどで予約を呼びかけたり、ブログやYoutubeなどで宣伝ができる人は、事前に需要を測ることができること。デメリットは、過剰に作ってしまった場合は在庫することになるし、何より注文者一人一人に自分で配送する必要があること。
何回かに分けて予約を取り、オンデマンドで販売すれば、一般的な流通に乗せなくとも自分自身の写真集を販売することができる。
5. クラウドファンディング
最後はクラウドファンディングを利用する方法。前項の「製本&セルフ出版」と概念は近いが、クラウドファンディングのプラットフォームを利用することで、幅広い層にターゲットできる可能性があり、かつ、成功すれば大きな資金を集めることができる。資金が集まれば、より質の高い本を作ることができるため、本の品質や内容に拘りたい場合は、こちらの方法が向いている。
例えば100ページを超えるような写真集を前項の「製本&セルフ出版」で販売する場合、製本代が高くつくために、フォトブックの売価を高く設定しなければそもそも販売することが難しい。どんなに安くとも、5000円以上の売価は必要となる。
一方で、クラウドファンディングなら応援金額の設定次第では、製本に必要な費用を十分生み出すことが可能であり、予算に縛られることもなくなる。クラウドファンディングで成功するには、事前に友達や家族、同僚やSNSのフォロワーなどの協力者に声をかけて、応援してもらうしかない。初動で一定の金額が集まるかどうかが最も重要で、初日から数日で数十万円集まれば、その後は一般の方も参加してくれる可能性が高まる。逆を言えば、初動でほとんど応援がない場合は、そのまま塵と消えてしまう可能性が極めて高くなる。
ここでもSNSのフォロワーがものをいうのは世知辛いところだ。
それぞれの長所短所を比較
自費出版 | 企画出版 | Amazon KDP | 製本&販売 | クラファン | |
実現可能性 | ◯ | △ | ◎ | ◎ | ◯ |
制作の自由度 | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ | ◎ |
制作費用 | X | ◯ | ◎ | ◎ | ◯ |
アプローチできる読者数 | ◯ | ◯ | △ | △ | △ |
制作の手間 | ◎ | ◯ | X | △ | △ |
ロイヤリティ/収益 | △ | ◯ | ◯ | ◎ | ◯ |
SNSフォロワー数の重要度 | X | ◯ | ◎ | ◎ | ◎ |
X:重要ではない/非常に厳しい
△:あまり重要ではない
◯:重要/良好
◎:非常に重要/非常に良好
実現可能性
自己努力で完結できるAmazonKDPや製本&セルフ販売が最も確実に本を出版・販売できる。自費出版はお金さえあれば実現可能だが、これは最終手段だと思う。
クラウドファンディングは実施しやすいが、極端に失敗してしまった場合、支援の形式にもよるがリターンを用意するのが手間になってしまう。SNSのフォロワー数が多く、自信がある場合以外にはおすすめしない。企画出版に関しては、出版したいカテゴリーや本の内容次第であり、最も不確実性が高いが、自信があればリスクの無い良い方法だと思う。
制作の自由度
出版社を介さない3つの方法であれば、内容は著者の自由にできる。特に、製本&セルフ販売とクラウドファンディングでは完全に自由にできる。AmazonKDPでは紙質が選べない、本のサイズに決まりがあるなど、一定の制約があるので、上記2つの方法と比べてやや見劣りする。自費出版と企画出版については、出版社と相談のうえ決めるしかないので、出版ジャンルやあなたの出版者としてのパワーに依るところが大きい。
制作費用
自費出版は全額自己負担なので、場合によっては本当に大きな金額となる。自費出版が最善の方法かよく考える必要がある。企画出版の場合、流通に関する費用は出版社が負担するが、製作費は著者負担となる場合もあり、出版社とよく相談した上でプロジェクトを進めることが重要。
費用面ではAmazonKDPが最も優れており、こちらは本当に一切お金がかからない。製本&セルフ販売やクラウドファンディングは想定以上に購入者や応援者が集まらなかった場合、いくらか自己負担が発生する可能性がある。
アプローチできる読者数
あなたが余程のインフルエンサーでない限り、大手の書店に並んだとしても、お客が手に取ってくれるかどうかは別の話。この記事で紹介している通り、本を出版するハードル自体は下がっているが、読者にアプローチするのはいつの時代も大変だ。競争が多い現代では、なおさらかもしれない。元も子もないが、あまり検索されないようなマイナーカテゴリーでは特に、SNSやYoutubeといった宣伝できる媒体を育てておくことが極めて重要となる。
制作の手間
出版社からの販売であれば原稿や写真を用意するだけで済むかもしれない。AmazonKDPに入稿する場合はAdobeイラストレーターかフォトショップが必要であり、デジタルに慣れていない人には難しい。
ロイヤリティ/収益
自分自身で売価を設定できる製本&セルフ販売が最も優れており、本の内容に自信があり、かつフォロワーが多い場合かなりの収益を見込める。AmazonKDPでは製本の手数料やAmazonの取り分が大きいため、売価を少なくとも2000円以上にしないとあまり儲からない。
クラウドファンディングでは、手数料が3割かかるため、これを組み込んだ支援金額を設定するのが賢い。自費出版や企画出版の場合は印税のみとなる可能性が高いため、余程売れないと収益には結びつかないと思われる。
SNSフォロワー数の重要度
本や出版に限ったことではないが、SNSのフォロワー数やYoutubeの登録者数というのは極めて重要な指標となっている。企業側からすると、例えば企画出版の話を持ちかけられた際、これらの数は間違いなくチェックが入る。なぜなら、繰り返し説明してきた通り、実際に出版した後の売上はこれらのフォロワー数や登録者数と比例するとみてまず間違いないからだ。
SNSもYoutubeもやっておらず、それでも本を出版したいという場合は、本の内容で勝負するしかない。企画出版で出版までこぎつけ、出版会社にPRしてもらうという道筋になる。
まとめ
私自身は、Amazonから直に本を出版できるKDPを利用したわけだが、本の内容によっては企画出版に全力を出すのも良いと思う。特に、自己啓発系・副業・投資などサラリーマンが手に取りやすい内容であれば、企画出版がいいのではないだろうか。
いずれにせよ、自費出版しかない時代と比べれば本を出版する方法論は増えたと言える。設定するゴール次第ではあるが、まずは出版してみないことには始まらない。小さく始められるAmazonKDPはそんな小さな一歩を応援してくれるいい方法だと思っている。
AmazonKDPから写真集を出版したノウハウをまとめたので、詳しくはそれぞれの項目をご覧ください。
- 写真集「穂高 煌めきの稜線」発売のお知らせ
- Amazon KDP 苦労してでも「写真集販売」という道を選んだ理由
- Amazon KDP 出版社を介さず写真集を出版する「メリット・デメリット」
- Amazon KDP 「写真集発売の手順」写真集の構想から販売開始まで
- Amazon KDP 「写真のセレクト方法」と「掲載枚数」について
- Amazon KDP 「写真集のテーマ決め」と「主題」の絞り方
- Amazon KDP 写真集に「作品解説」や「あとがき」など文章情報は掲載すべき?
- Amazon KDP 写真集出版に向けた「入稿用データ」の作成方法(製本版・電子書籍)
- Amazon KDP 写真集出版で辛かったこと&嬉しかったこと「10選」を振り返る
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コメント一覧 (2件)
参考になりました。電子出版を検討中なんですが、宣伝費用(SNSなどに費やす時間を含む)がかかるっていうのがデメリットの一つだと思います。宣伝しないとなかなか人目にも触れにくいですから。
コメントありがとうございます(๑´ڡ`๑)
そうなんですよね。出版すること自体はKDPで可能になりましたが、そこから宣伝をして、いかに購入に繋げるかというのはとても難しいテーマだと感じます。
SNS・ブログ・Youtube・・・何かしら情報発信する場所がないとAmazonのモール内検索だけに頼ることになりますので、大変ですが、いずれかの方法は必要かもしれません。