Amazonから出版できるサービスKDP(Kindleダイレクトパブリッシング)を利用して写真集を発売しました。
自分の写真集を出版できたことはとても嬉しいことです。しかし、大変なこともたくさんありました。
KDP出版シリーズの締めくくりとして、写真集の出版で辛かったこと&嬉しかったこと10選をご紹介します!
辛かったこと7選
写真集を作る上で、あるいは販売する上で辛かったこと、大変だったことを7つご紹介します。
実際は大変だったことの方が多いかもしれません(汗)
【7】販売と無料公開の葛藤
写真とSNSは相性が良いため、無料で公開しようと思えば「いつだって・無料で・簡単に」公開できます。『販売』がベストな方法なのか何度も悩みました。販売なんて面倒なことをせずに、SNSやブログで公開すればいいのではないか?そう思ったことは一度や二度ではありません。
販売と公開のジレンマ
さらに、写真集を販売することを意識し始めてからというもの、SNSやブログで写真を非公開としてきました。「売るかもしれないものを無料では公開できない」という考えからです。どの写真を掲載するか分からない以上、SNSやブログの更新で使える写真が「絶対に掲載することがない微妙な写真」だけになってしまったのは問題でした。
後述する「SNS集客」とは逆行する愚策だと言えます(本来はSNSに写真を日常的にアップしてフォロワーさんを増やし、その人たちに買ってもらうのが最も賢い方法)。
販売用の秘蔵写真と、日々公開する写真の2通り用意できるのが理想かもしれません。そのためには圧倒的な活動量が必要になりますが。
【6】誰にも相談できない孤独な作業
AmazonのKDPで製本版の本を出版できるようになったのは2021年の秋。私が調べた範囲で言えば、製本版の写真集を出版しているという事例は見当たらなかった(電子書籍はたくさんあります)。
写真集を作るためには写真の選定から始まり入稿用データの作成まで、誰にも相談できない孤独な作業の日々・・・。「本当にできるのか?」という不安はもとより「本当に需要があるのか?」と不安に思うことも多かったです。だからこそ、無事に出版することができて、購入してくれる人がいて、胸を撫で下ろす思いでした。
【5】集客
いざ出版をしたものの「全く売れなかったらどうしよう?」という不安はかなり大きなものでした。
SNS集客が基本
Amazonからセルフ出版する場合、主たる集客方法はSNSです。私はSNSをやってこそいますが、それほど活用していません。上記の通り、写真集を出版しようと思い始めてからはSNSとブログで写真を非公開にしてきた経緯があり、なおさらフォロワーさんは増えませんでした。
Youtubeとブログ
Youtubeで宣伝することができれば強力な集客ツールとなります。これも皮肉なことに、主たる撮影や活動を終えてからYoutubeチャンネルを作ったこともあり、私の場合は上手に活用できたとは言えません。一方でブログですが、ブログの主たる読者は「何かしらの情報を探している通りすがりの人」なので、購入率は決して高くはないでしょう。ちなみに、集客の足がかりになるような大きなブログを作ること自体、非常に難しい時代になっています。
宣伝場所は必須
写真集を出版したいという場合、どのように集客して買ってもらうのか「ある程度は」戦略を考えなければ、全く売れないという事態は起こり得ます。SNS・Youtube・ブログが主たる宣伝の場になりますので、これらのプラットフォームを育てておく必要があります。
Amazonの強みとしてモール内検索が挙げられますが、ジャンルがニッチであればあるほど、調べる人は少ないでしょう。今の時代にどれだけの人がAmazonで「山岳写真」と検索しているか・・・考えるまでもありませんね。
【4】値段設定
写真集の販売価格を決めるのは難しい。
私は当初2000円 ~ 3000円くらいで販売することが妥当だと考えていました。掲載している写真の内容はもちろんのこと、山岳写真を撮る苦労を思えば安売りはしたくない。それでも結果として、1300円前後と安価な値段設定にした理由。それはAmazon KDPの紙質です。ペーパーバックの紙質を選ぶことができず、また、紙質が写真集にふさわしい品質ではないと言わざるを得ないことが理由です。
「思っていた以上にしっかりした紙だった」というお言葉もいただきましたが、一般的な写真集と比較すれば薄いことは事実です。
【3】センサーゴミの除去
認識が甘かったと今では思います。写真の現像作業にはかなりの時間を使っています。センサーゴミがないかどうかも当然確認していました。そのはずなのですが・・・。実際にKindle版を購入して確認したら・・・ゴミがこんなに!?
センサーゴミのせいで、一度は出版したものを停止、再出版、再び停止、再出版・・・何度も繰り返すことになりました。写真集を作るとき、まずは徹底的にセンサーゴミがないか確認することを強くおすすめいたします。
【2】文章作成
私は写真集の最後に作品解説とあと書きを載せています。作品の掲載枚数が53点なので、作品のタイトルと作品解説だけでもかなりの文章量。加えてあと書きパートが2ページあるので、全体として相当な文字数になりました。これだけの文章を作成するのは重労働。販売用なのでなおのこと。
過去の写真集や語彙を学ぶ機会
作品一つ一つにタイトルと解説を考えるのは地獄の作業。10や20ならいざ知らず、50作品ともなると本当に大変な作業です。そんなプロセスが写真集出版の経験を「実りあるもの」にしてくれるわけですが・・・まあ骨の折れる作業です。
山岳写真集で使われる表現を学ぶため、30冊近い写真集を実際に購入、使えそうな語彙をピックアップして作業に臨みました。
【1】文章の校正
センサーゴミ同様、こちらも入稿作業が終わった後でミスに気付く。
誤字脱字が後から後から出てくるのは不思議としか言いようがありません(私は誤字脱字のチェックが苦手なのもあります)。
文章を作成するのも大変でしたが、入稿まで終わって「完成したー!!!」と息をついた後日、ミスがあるのを発見した時、まさに天国から地獄。愚かなことに、私は何度も何度も修正しましたので、途中で投げ出しそうになったほどです。知人友人に誤字脱字の校正だけでも依頼すれば良かったのかもしれません。
嬉しかったこと3選
大変な思いをしてでも出版したかった写真集!機会が与えられているのは恵まれている証。挑戦せずにいるより少しでも前進したい。
苦労の果てに、苦悩の先に得られる経験と喜びがあります。
AmazonのKindleダイレクトパブリッシングから写真集を発売して本当に良かったと思っています。
【3】在庫不要の販売体制
Amazonから写真集を出版したいと思った主たる理由は、やはりこちらです。
在庫を抱える必要がないと言うこと、自分で配送する手間がないと言うことです。SNSなどで観察している限り、プロの方を含めて写真集を販売する主な方法は出版社で限定部数を作成して、ご自身で購入者に郵送すること。質の高い写真集が作れる一方で、限定部数しか作れないことや、郵送作業が面倒なこと、後から注文を受け付けられないことなど、デメリットも目立ちます。
一方で、AmazonのKDPなら作成さえ済めば残りは自動化。全てAmazonに作業を委託することが可能。
私のようにブログから恒常的な集客が期待できる場合、相性が良いサービスだと言えるでしょう。思い描いていた状態を実現することができて、とても満足しています。
【2】写真を振り返る絶好の機会
自分自身が撮った写真データ・・・見直してますでしょうか。
ネットにアップしてお終いはもったいない
撮ってお終い。撮ってSNSにアップしてお終い。そんな方が大半ではないかと思います。写真集を作ると言うことは、自分自身の撮影や作品と向き合うことだと気づきました。写真種を作ったからこそ、そして販売という責任ある方法を選んだからこそ、自分の写真を体系的に、そして包括的に振り返ることができました。
写真愛好家の皆さんと比べたら、私なんかの撮影枚数はずっと少ない方でしょう。そんな私ですら、写真を見直して、その中から掲載写真を選び出し、作品解説を考える。一連の作業は本当に大変でした。しかし、こうした機会でもない限り、撮ってお終い・・・そんな有様になっていたことは想像に難くありません。
SNSの重要度はかつてないほどに高まっていますし、SNSに写真をアップするは重要です。アカウントを育てるのはやりがいがあると思います。しかし、それだけでは皆と同じことをやっているだけ、そんな風にも感じます。写真の内容だけではなく、アウトプットの方法で差別化することも重要な時代ではないでしょうか。
写真集発売を一つの節目に
今回、写真集をAmazonから発売したことで、私のこれまでの写真という趣味に一つのピリオドを打つことができました。ケジメ・・・今風に言えば「マイルストーン」となったのは間違いがありません。これまでを「まとめ終えた」たから「次」へいける。そんな思いで充実しています。
【1】「本を買いました」のご報告
数は重要だが、問題ではないのかもしれない。SNSをそれほど活用していないと書きましたが、それでもTwitterやFacebookのフォロワーさんが「買いました!」とご報告をくれた時、全ての苦労が報われたかのような、達成感と充実感を感じることができました。
写真集を販売するということは、自分だけで鑑賞していた写真を、有料で観てもらうということです。無責任だった趣味に、一種の責任が生じる瞬間です。だからこそ真剣に取り組むことができる、だからこそ、実際に購入してくれたら心から嬉しい、そんな風に思うことができるのだと思います。
まとめ
ブログを見て購入してくれた方もいるでしょう。改めて、この場を借りて御礼を申し上げます。
プロでもない、誰だかよくわからない人間の本にお金を払うということは、金額の大小に関わらず勇気のいることだと思います。ご購入いただきました皆様、本当にありがとうございました。
私の小著が登山の魅力、山岳写真の魅力、山で写真を撮ってみたい、そんな気持ちや原動力に繋がれば、それほど嬉しいことはありません。
2nd写真集はいつ出来上がるか全く分かりません。ゼロからのスタートになりますので、時間がかかるでしょう。簡単ではないことが、山岳写真の魅力でもあります。
最後になりましたが・・・山岳写真はすばらしいジャンルだと確信しています。撮るものが無いと悩んでいる皆様、山で写真を撮ってみてはいかがでしょうか。
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