Amazon KDPから写真集を発売した経験をもとに、写真集制作について私の考えをご紹介。
今回は写真集における作品解説やあと書きなどの文章情報について。作品解説やあと書きは掲載した方が良い?写真集なんだから写真があればそれでいい?
私は作品解説もあと書きも絶対に掲載した方が良いと思っています。
私のマイルール
自身の写真集を制作・出版するにあたり、先人たちの写真集を参考にすることを決めました。
出版社から発売するのとは異なり、AmazonKDPでは全ての事を自分自身で決めます。だからこそ、独断と偏見で決めるのではなく、山岳写真集の先例を学ぶことが重要だと考えました。
自分の写真集なので好き勝手したって構わないのですが、有料で発売する以上、読んでくださる方のことを考えないわけにはいきません。
そのためにも、先達の写真集から学ぶことは重要だと思っています。
「作品解説」と「あとがき」は掲載必須
山の写真集を買い漁ること30冊。
これ程の量を見比べれば、否が応でも見えてくるものがあります。
まず初めに、作品解説は掲載するのが一般的だということ。次に、あと書き(正確にはあと書きではありませんが、ステートメントともやや異なりますので、あと書きで統一します)にて著者の想いや撮影背景が書かれていること。最後に、これらの文章情報は写真集を単に閲覧する物ではなく、読者の撮影の手助けをする参考書として存在意義を高めていること。
観て終わりではなく「役立つ本」へ
私が山岳写真集を買い集める中で感じたのは、その本を手に取ったことで「ここに行ってみたい」「ここから撮影したい」「俺もこんな写真が撮りたい」と影響を受けたことでした。
実際に、私の作品の中で「雪稜と流雲」は白旗史朗先生の影響を受けた構図です。
私も写真集として作品をまとめるからにはそんな影響力を与える写真集にしたい。そう考えるようになりました。
ただ綺麗な写真が並んでいるだけではなく「読んでくれた方が、自分自身で作品を撮りたい」と思ってもらえるような本にしたい。そう願いながら編集しました。
作品解説は風景写真と相性が抜群
作品解説の書き方についても先達の写真集から大いに学びました。
どのような語彙が使われ、どのような記載が山岳写真集としてふさわしいのか。時間をかけて検討しました。
「写真集穂高 その流れに沿って」や「鹿島槍・五竜岳 天と地の間に」が作品解説では特におすすめかな。ちなみに、私の拙著「穂高 煌めきの稜線」の作品解説のフォーマットは後者から拝借しています。
作品解説は写真集における自己表現の一つだと思うんです。写真集であるからには写真が中心であるのは間違いないのですが、そこに文章での表現があったっていいし、山岳写真は特に相性が良いと感じます。
その風景を写した理由、撮影の背景、その時の心情や状況などを文章で補完する。作品解説は写真を読み返す楽しみを生み出す。写真だけでは伝えることが難しい、撮影の意外性や舞台裏を垣間見ることができます。
芸術作人では解釈を委ねて説明はなしということも珍しくありません。しかし、風景写真は空想上のものではなく、現実を写したものです。
解釈の余地が大きい抽象画のような芸術作品と比較して、読者の解釈の余地が少ないのは事実。だからこそ、作品解説を掲載しても違和感がない。なぜなら作意はあれど、作品は現実世界の延長線上にあるから。
重要な点として、読者は風景写真を見て解釈や推察したいのではなく、その風景のことを詳しく知りたいと思っている。この点は、他の芸術と風景写真の違いではないかと思います。
著者が表現したかったことを視覚的、感覚的、そして理論的に知ることができる。それが作品解説の役割ではないでしょうか。
作品解説と作品は表裏一体
写真と作品解説は表裏一体の関係。
作品解説を掲載する以上、写真が感覚的に伝えたかったことと文章が乖離せぬよう注意を払う必要があります。また、どれだけ写真が素晴らしくても、作品解説が稚拙では全体の雰囲気をぶち壊してしまいます。それゆえに、写真に注ぐ情熱と同程度の情熱を注いだ上で、作品解説を掲載することが重要だと考えます。
作品解説の内容が写真とチグハグだったり、重厚な雰囲気の写真に軽薄な説明が付いていたら読者は戸惑いますよね。つまり、写真に解説文章を載せる以上、写真と作品解説が揃って初めて作品になる。そんな意識が必要だということです。
あと書き(ステートメント)は最高の読者サービス
さて、あと書きに何が書いてあるかといえば、これは著者により様々です。山岳写真ですと撮影対象の山域説明、出版までの経緯、影響を受けた写真家や恩師への想い、登山経験、撮影時に気をつけたこと・・・自由度の高い場所ですね。
作品解説とは異なり、記載する内容は多様で自由度が高い。このスペースは読者へのファンレター(少しでも写真集を楽しんでほしい、著者のことを知ってほしい)。あるいは読者サービス(扱っているテーマについて知識を提供したい)だと思っています。
ある意味、写真と作品解説が写真集の本質であれば、あと書きは付加価値・付加情報としての意味合いが強い。そういった意味で作品解説とは一線を画していると言えます。
私の写真集では「山との出会い」「デジタルとアナログの狭間で」「葛藤」「穂高の魅力」「山岳写真」を掲載しています。
まとめ
私は山岳写真集しか持っていないのですが、ジャンルが異なれば違った文化があるのかもしれません。
残念なことに、山岳写真というのは若い人が積極的に扱っている撮影テーマではありませんし、これからも新刊がたくさん発表されるジャンルでもありません。
多くはフィルムカメラで撮られた古い写真がほとんどで、良くも悪くもアップデートされていないジャンルです。私の1st写真集はそんな歴史の系譜を辿る形で構成していますが、必ずそうしなければいけないという訳でもない。絶対に「こうしたい」という想いがあれば型破りでも構わない。だって、貴方自身の写真集なのだから。
一方で、初めて写真集を作るので右も左も分からないという方は、同じジャンルの写真集をいくつか購入し、どのような形式で作られているか勉強するのが近道。作品解説やあと書きについても割かれているボリュームや記載内容に傾向があるはず。
作品解説や後書きのような文章は腰を据えて読むことができる写真集との相性が抜群。風景写真ならなおさらのこと。写真集制作を考えている方はぜひ掲載してみてはいかがでしょうか。
ちなみに、作品解説やあと書きなどの文章を作成しするのは・・・写真集を作る中で「最も大変な作業」となります。文章があると写真集としての品格がグッと上がりますが、とても大変な作業だということだけは覚悟しておくとよいでしょう。使用する語彙の選定、全体のバランス調整、何より文章の校正がとても大変だからです。
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