私の1st写真集「穂高 煌めきの稜線」をAmazonから絶賛販売中です。
今日は(山岳)写真集の制作にあたり、写真集に掲載する写真のセレクト方法と掲載点数について私なりの私見をまとめてみます。
写真集に掲載する写真を選ぶのはとても難しく、それを確定させる過程は本当に大変です。掲載する写真の点数については、写真集全体のバランスを図るだけでなく、ページ数に一番関わってくるところですので、しっかり考えたいところです。
山岳写真集の平均的な掲載点数
私の写真集についてですが、これまでに出版されてきた山岳写真集の系譜を辿るような写真集を作りたいと考えていました。
やや抽象的な表現ですが、つまり、山の写真家である先達の写真集の構成や内容に近いものを作りたかったということです。それは言い換えれば、昭和初期から平成までに出版された古典的な写真集のDNAを引き継ぎたいと言えるかもしれません。
私の写真集にはそのような目的がありましたので、掲載する写真点数は過去の写真集を参考にしています。私は現在30冊程度の山岳写真集を所蔵していますが、掲載されている写真数は45〜65のものがほとんど。平均は55程度かと思います。
山岳写真集に限って言えば、作品数は「50」を一つの指標にすればいいと思います。
写真集を「本」として読むにあたり、ストーリーと起承転結、読み応えと惰性を考慮するに、掲載点数は50くらいがちょうど良いボリュームなのだと思います。
あまりにも掲載作品数が多いと、作品解説のボリュームも比例して増えてしまい、全体としてのページ数が膨らむだけでなく、やや冗長な印象になります。
作品解説やあと書きを掲載しないのであれば、作品数はもっと多くても良いかもしれません。
購入した山岳写真集を繰り返し手に取るうちに、作品数は50から60の間がちょうど良いと思うようになりました。結果として私の写真集には53点の作品を載せています。
全体のページ数とKDPロイヤリティの関係
KDPにのみ関してですが、掲載する作品数は全体のページ数、つまりはロイヤリティにも関係があります。
KDPのペーパーバック(製本版)では製本のための印刷費用がかかります。
最終的な販売価格から製本費用とAmazonへの手数料が引かれた金額がロイヤリティになりますので、販売したい価格が決まっている場合、ページ数が長くなればなるほど印刷費用がかかり、最終的なロイヤリティ(印税と同義)は低くなってしまうのです。
販売価格の考え方
私の1st写真集「穂高〜煌めきの稜線〜」は製本版1320円(税込)、Kindle版1200円(税込)ですが、印刷費用のかからないKindle版の方がロイヤリティは高く、製本版については雀の涙ほどのロイヤリティしかありません。
それを承知の上でこのような低価格に設定した理由はシンプル。販売という形態はとりたいが、利益を最優先に求めているわけではないからです。
販売価格は著者が決められますし、販売価格とページ数による最終的なロイヤリティも出版前に事前に確認できますので、自分がどのような目的で写真集を販売したいのか、目的を明確にしておきましょう。
そうすれば、自ずと販売価格の設定と全体のページ数、つまりは掲載できる作品点数も自ずと絞られてくるはずです。
掲載する写真の選定方法
掲載写真を選別する作業は全作業の中において『最も大変かつ時間がかかる作業』といっても過言ではありません。
私はAdobeのLightroomを使って写真の管理を日常的に行なっており、写真の選別についてもLightroomを使用しています。
もし、写真の管理にLightroomを使っていないということであれば、お金こそかかりますがこれを機に導入することを強くおすすめします。
【1】候補写真を大雑把にピックアップ
気に入った写真を片っ端からマーキングしていきます。
マーキングの方法はいくつかありますが、ここではざっくりとしたスクリーニングですので「 キーワードタグ 」をつけるが良いと思います。
この時点で多くとも500点くらいまで候補を絞りたいところ。あれもいいこっちもいいとやっていると永遠に終わりませんので、断捨離の気持ちが必要。
撮影前後で似たような構図の写真がたくさんあると思いますが、こだわり過ぎず、候補になり得るものは全て片っ端からピックアップしておきましょう。“やはりこちらの方が良かった”と思うことが後になってありますので、絞りすぎないことがポイントです。
【2】季節ごとに分けてマーキング
山岳写真集では春夏秋冬の写真を載せるのが一般的。
慣例に習うのであれば、候補に挙げた写真を季節ごとに分けてみましょう。残雪・夏・秋・初冬・厳冬のように写真を振り分けることで、各季節における作品のボリュームがわかりやすくなります。
Lightroomであればカラー(赤・黄・緑・青・紫)の機能を使って季節ごとにマーキングする。その中から改めて掲載したい写真を絞り込んでいきます。
【3】絶対に掲載したい写真を選別
各季節から絶対に掲載したい写真を選別します。ここではLightroomのコレクションを使うと便利です。コレクションというのは任意のフォルダのこと。例えば「絶対に載せたい」「落選写真」「どうしても決められないグループ」などに分けておくと良いでしょう。
この辺りの作業が非常に難しく、悩ましいところです。
例えば、山岳写真では雲の流れを捉えた写真が必ず掲載されると思いますが、大抵の場合、前後で多くの似たような写真を大量生産しています。
見栄えするシチュエーションですと、広角で撮ったり、望遠で撮ったり、前景を入れたり、角度を変えたりとバリエーションに厚みを持たせて撮影していることと思いますが、悲しいかな、どれだけ絶景だったとしても、同じシチュエーションから5枚も6枚も掲載するわけにはいかないのです。
最高の撮れ高だった風景の中からどの写真を掲載するか。
腐心しながらも好みの作品を蹴落とす作業が必要になります。
この時点で80点ほどに作品が絞れていればベストですが、まだ100も200も残っているようだと、選別が甘いということになります。掲載写真が後々入れ替わることは十分あり得ますので、コレクションを使って1軍・2軍・3軍のようにいくつかのフォルダ分けをしておくと便利ですね。
【4】写真集全体のバランスを図る
絶対に載せたいと思っている写真から最終候補となる50点を選び出し、それらの写真を俯瞰で見てみましょう。
Lightroomの「選別表示」が便利です。写真の順番を入れ替えて模擬的な写真集を作り、選別した写真が適切かどうか改めて検討します。
あまりにも似たような写真ばかりが並んでは困るし、テーマが感じられるような一貫性も重要です。特に、望遠・広角・標準など撮影の焦点距離のバランスが偏ってないか、春夏秋冬のボリュームがおかしくないか、似たような被写体ばかり選んでいないか、似たような構図ばかりになっていないか・・・確認すべきポイントはたくさんあります。
できることなら、憧れている写真家や好きな写真集を購入して参考にすると良いでしょう。私のように初めて写真集を作る場合、0から100までアイディアを出すのは難しいと思います。
「絶対に載せたい」と思っていたものが「落選」のコレクションに移ることがあれば、「落選」だと思っていたが写真を「採用」することも往々にして起こり得ます。
【5】見どころの確認
ここで、私が写真集の構成を考えた際に気をつけた最重要ポイントをお教えします。
それは・・・見どころだけが連続していないかという点です。
歌で言えばサビのパート、小説で言えば犯人が明かされるパート、アニメでいえば敵と戦っているパート。
あらゆる作品には「見どころ」が存在しますが、写真集だけに限った話ではなく、見どころだけで構成された作品というものはあり得ないのです。サビだけの歌がないように、山岳写真集で言えば全てが朝焼け・夕焼けという写真集はありません。
私は30冊の写真集を持っていると言いましたが、その全ての写真集には必ず「地味な写真」も載っています。初めは「どうしてこの写真を掲載したのだろう、もっと良いものが絶対あったはずなのに」そう思っていましたが、その理由はここにあったんです。
全てを見どころのある派手な写真にしてしまうと、全体の雰囲気が破綻してしまうのです。それゆえに誰もやっていません。これはSNSと反対の考え方だと思うので注意が必要です。SNSでは注意を引くために派手な写真が並びがちですが、それを写真集でやってしまうと「うるさい」写真集になってしまうでしょう。
言い換えれば、写真集全体のバランスを図る上で、見どころはどこで箸休めはどこなのか。導入でどのように盛り上げて、どのように結ぶのか。全体の起伏はどうか。どこで読者に盛り上がってほしいのか・・・これらを意識して作品を選ぶのがコツだろうと思っています。
(30冊も写真集を買った理由の一つがここにあります。)
私の写真集で言いますと「威風堂々」「静寂の北尾根」「夏の大気」「幽玄」「天空の宿」などは、もしかすると「なぜ掲載したのだろう」と感じる人がいるかもしれません。派手さだけを追求すれば掲載はしない写真です。事実、初めは掲載したいリストには入っていない作品でした。しかし、こういった背景を理由に、最終的には掲載することを決めました。
まとめ
ここまで説明してきたように、山岳写真集では45から65程度の作品を掲載するのが一般的です。それは飽きさせないための工夫であり紙面の関係からそうなるのでした。
KDPについていえばロイヤリティと印刷費用の関係からも妥当な枚数であることがわかりました。
山岳写真の例をあげましたが、撮影対象や写真集のジャンルが異なれば、一般論も異なっている可能性があります。理想的には、自分が作りたいと思っているジャンルの写真集を実際に調べてみることで、客観的なデータをもとに写真集を作成することが重要です。
掲載する写真を決めるのは本当に大変な作業です。しかし、自分が撮影した作品を徹底的に見直す機会となり、終わってみればとても有意義な時間だったと今では思います。
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