【撤退】槍ヶ岳 残雪期登山(槍沢ルート) 〜腐れ雪・疲労・雪崩の恐怖に負け撤退〜

2021年4月24日 

ゴールデンウィーク前・小屋開け前ではありますが、晴天が続く予報なので北アルプスは槍ヶ岳を目指します。

新島々からバスに乗り込むも利用客は私だけ。

上高地へのバスが開通したとはいえ、GW前の2週間は上高地経由で登山をする人の数はかなり限られます。

昨年歩いた上高地トンネル。

自分で歩くと、ここをバスで通過できることに感謝しかありません。

行きはまだ良いのですが、帰りがしんどいんですよね。

さて、週末に季節外れ・・・北アルプスでは普通のことではありますが、4月中旬にして60cm程度の降雪があった北アルプス南部。

穂高も厳冬を思わせるような真っ白な装いに戻っています。

それはそれは美しくて結構なんですが、雪崩のリスクを考えるとあまり楽観的ではいられないところ。

上高地〜横尾

久しぶりに上高地にやってきました!

観光客のかたがちらほらいらっしゃいます。

この時期は売店もオープンしていて助かりますね。

上高地の水場も使えますよ。

上高地でも積雪が15cm程度あったようで、この辺りでは早速融雪が進み川のようになっています。

今回の登山はタイトルにもあるように槍ヶ岳まで届かず途中で撤退していますが、この時は不安な気持ちはあれど、さすがに「撤退」するとは夢にも思っていないのでした。

上高地の風物詩、河童橋と穂高連峰。

とても4月中旬だとは思えないような風光明媚なパノラマが広がっています。

撤退するならここでまったりキャンプでもしておけば・・・というのは当然、後出しの考え方。

今日の宿泊予定地である横尾を目指して進みます。

小梨平キャンプ場を過ぎたあたりで積雪した道となります。

この辺りで雪が残っているということ自体、週末の積雪量を感じさせます。

相当降ったに違いありません。

明神を通過して徳沢方面へ。

おそらく週末までにはこの辺りの雪は溶けて地面が露出していると思いますが、日陰は雪が残ると思うので、この時期にトレッキングをしたい人は長靴などの防水シューズがあった方が快適に歩けそうです。

小屋開け準備をしている徳沢を通過します。

徳沢から横尾まで、まだ営業期間前ということで河原沿いの車道??を歩かせてもらいます。

あそこを歩くとすごく楽ですが、普段は小屋の車も走っていますし、営業期間外の特典ということで。

横尾避難小屋はまだ利用可能。水も通っているのはありがたい。

横尾山荘は4月27日から営業スタートなので前日まで開放されているようです。

スタッフさんに声をかけていただき、利用する旨を伝えます。

それと同時に明日の予定を聞かれたので槍ヶ岳まで行くことを伝えると「横尾で30cm以上降っており、積雪が多く難しいと思う。雪崩のリスクも大きい。」と忠告をいただきます。

雪崩のリスクについては中程度の認識できていますが、夕方のヤマテン予報でも「雪崩に引き続き注意」とあり、自分の中で不安が大きくなるのを感じました。

そんなこともあり、避難小屋を独占しているにもかかわらず、よく眠れず。モヤモヤとした気持ちを抱えながら不安な夜を過ごしました。

横尾〜槍沢ロッヂ

日の出と同時に横尾からスタート。

沢沿いを進みますが、この辺りから本格的な積雪となります。

足元を見ながら歩いていると「ガサガサ」と大きな音がしたのでびっくりして前を見ると、カモシカが沢から上がってきました。

実はカモシカを見るのは初めての経験。

こうしてカモシカと出会えただけで、今回の登山は少し報われた気がします。

日本一周中に「カモシカは好奇心が強いので踊りながら近づくと逃げない」と学んでいたので実践したのですが、余裕で逃げられました(笑)

槍沢ロッヂのスタッフブログで一ノ俣には雪がないとありましたが、土日で状況が一変したようです。

昨日からわかっていましたが、上高地からトレースがあるんですよね。

月曜に誰か入山した?それともスタッフのトレース?

二ノ俣の橋が氷でツルツルになっていて危ない。

両手でしっかりと確保しながら慎重に進みます。

沢の横を進み程なくして槍沢ロッヂに到着です!

夏であれば横尾〜槍沢ロッヂはあっという間ですが、雪で歩きにくいのと、テント泊の装備が重たくてやや疲労気味。

そして小屋開け準備中のスタッフの方に「槍ヶ岳まで行くのは無理だと思う」とアドバイスをいただきます。

横尾では雪崩のリスクにウェイトをおいたアドバイスでしたが、槍沢ロッヂでは積雪の関係で無理だと諭されてしまいます。

・・・マジ??

槍沢ロッヂから程なくすると槍ヶ岳が顔を出しました。

・・・遠くねえか?

・・・ラッセルしながらあそこまでテント泊の装備で行けるか?

・・・いや、めちゃくちゃ遠くないか!?

槍沢ロッヂの少し上にテントがあって、私より少し先に入山している方でした。

ここまでのトレースはその方のもの。

疲労困憊で休んでから出発するとのことで、ここからは私が先頭に。

そして、この辺りから一気に積雪が増えます。

ラッセルと呼ぶほどの積雪ではありませんが、太陽が昇ってから2時間はたっており、雪が腐ってきました。

ツボ足では話にならない(全然前に進めない)ので、早々にワカンを装着します。

槍沢キャンプ場

槍沢ロッヂからここまでは少し急な登りになります。

雪が緩んでいて歩きにくく、大した距離でもないのにかなり疲れました。

ようやくババ平の幕営指定地に到着です。

この時点で「マズいな」という気持ちが芽生えています。

雪質が思った以上に悪くて全然前に進めないからです。

ババ平は地獄そのものでした。

雲ひとつない快晴の青空。容赦のない日射が照りつけてきて暑いのなんの。それに伴い融雪が進み、雪は沈み、水気が混じり滑りやすく、まるで砂の中を歩いているかのようにグリップが効きません。

・・・前に進まない。

さらに、ババ平から大曲までは代わり映えのしない風景が永遠と続いており、精神的にも苦痛が伴う。

普段であれば音楽を聞いて紛らわす場面ですが、雪崩のリスクがありそれも叶わず、しんどい状況が続きました。

横を見れば沢筋はデブリだらけ。

一昨日・昨日の晴天で沢筋の地形では雪崩が落ち切っているように見えましたが、歩いているのは巨大な沢の中。いつどこで雪崩があるかと思うと精神的にしんどくて、かなり辛い状況に。

撤退判断

大曲を過ぎて天狗原分岐を見上げている場面です。

実はここに来るまででバテてしまい、何度も撤退が頭をよぎっていました。

「やはり来るタイミングではなかった」という思いと「晴天が確約されている」という思いがせめぎあっていましたが、槍ヶ岳はまだまだ遥か先。ここから本格的な登りが始まろうかという場所です。暗くなっても殺生ヒュッテまで行ければ幕営できる・・・そんな想いが頭を巡るも、疲労困憊の状態で雪崩の巣の中を歩くのが「正しい判断」な訳もなく。

何度後ろ髪を引かれたか分かりませんが、今回は登頂を断念することに。

全く目的を果たせずに撤退することは初めての経験でした。ここから上高地へ戻るのだって大変です。それなら槍ヶ岳まで行った方が楽なのでは?俺なら行けるでしょ?・・・何度そう考えたか分かりませんが、本能が「撤退すべし」と言っているような気がしました。昨晩あまり眠れなかったことも影響しているかもしれません。

3000mの稜線は、いざ登れない現実に直面すると、普段より遥かに高い場所にあるように感じました。

厳しい北アルプスの冬を生き抜いたお猿たちが草を美味しそうに食べ、日光浴をしているのが印象的でした。

今回の登山の振り返りと反省点

  • 積雪のコンディションより連日の晴天を優先した日程を組んだ。
  • テント泊装備を背負いながら、腐った雪を歩くのが想像以上に大変だった。
  • 悪条件が重なっているにも関わらず、槍沢というロングルートを選んだ。
  • 初日は横尾ではなくババ平まで進んで幕営すべきだった。
  • 腐った雪、ノートレース、強烈な日射を考慮し、ナイトハイクすべきだった。
  • 槍ヶ岳に行くなら飛騨側(西側)から登るべきだった。
  • 雪崩への不安が精神的な疲労につながった。

過去にも山頂まで到達できなかったことはありますが、ここまで何も目的を果たせず撤退したのは初めての経験。

【吾妻連峰】西吾妻山 雪山登山(厳冬期・敗退)深雪ラッセルと西大顛の樹氷(スノーモンスター)

雪山1年目の西吾妻山は山頂まで行けませんでした。

しかし、樹氷をみれたので完全な撤退だとは思いません。

【北アルプス】霞沢岳 雪山登山(残雪期・テント泊)ゴールデンウィークに徳本峠から登る霞沢岳(K1ピーク撤退)

霞沢岳も山頂まで行けませんでしたが、もともとK1ピークで写真を撮ることが目的だったので後悔はしていません。

 

そういった意味で「完全撤退」は初めての経験でした。

大曲まで行って上高地まで戻るのは体力的・精神的に非常にしんどいものです。自宅から北アルプスまで行く労力や奇跡的な連日の晴天を考えると是が非でも目的(写真を撮る)を果たしたいと考えがち。でも、何よりも大切なのは無事に戻ること、帰宅すること。

撤退したことがあるという経験も大切だと今では考えるようにしています。

 

撤退の判断をするというのは、それが自分ごとになると難しいものです。

だからこそ、事前の計画が何より大切であると改めて思い知った山行でした。経験を積まないと計画は立てられないし、計画を立てて試行錯誤する必要があるのは言わずもがな。

総括すれば、こうして無事に戻ったのだから良しとしようじゃありませんか。今後の登山への大いなる糧として、これからも登山と山岳写真を楽しみたいと思います。


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