剱岳(つるぎだけ)、それは登山家にとって憧れの山。その峰は、日本の登山における最高難易度の一つとして知られています。今回はそんな剱岳を紅葉の時期に登ってきました!
剱岳登山:雷鳥沢キャンプ場~別山北峰~剣山荘~剱岳~雷鳥沢キャンプ場
前日は立山の雷鳥沢キャンプ場でテント泊。今日はここから別山北峰に寄り道してから、剱岳を目指します。別山北峰に寄るのは剱岳の写真を撮るためです。剱岳の展望地として有名な場所ですね。
雷鳥沢キャンプ場
おはようございます(朝の1時)。雷鳥沢キャンプ場から別山北峰までの距離感がイマイチ分からないので、かなり早めの起床です。うん、早すぎた。
とにもかくにも、力を付けるために朝ラーします。
朝の1時過ぎにラーメン食べるんですかって?それが山です。
バリバリ食べます。お腹空いたー。サッポロ一番みそラーメンに辛口が発売されて喜んでいるのは私だけじゃないはず。
雷鳥沢キャンプ場~新室堂乗越
朝の2時頃には出発です。今日は雷鳥沢キャンプ場まで戻ってくる予定なので、テントはそのままにして、軽荷で出発。
雷鳥沢キャンプ場から別山へ向かうには、まず木道の橋を渡ります。気温は0度あるかないかと言った感じで、橋が凍ってますね。下は川です。ここで滑って着水したら試合終了。用心して進みましょう。
橋を渡るとすぐにこの分岐点が見えてきます。ここを右(剱御前)に行くと雷鳥坂、真っすぐ(大日方面)に進むと新室堂乗越へと通じています。
どちらからでも別山に行けますが、今日は新室堂乗越経由で行ってみたいと思います。(後日談ですが、雷鳥坂から行った方が歩きやすいのでおすすめです。)
新室堂乗越からの道は、ハイマツがうるさい箇所が多い印象。真っ暗な中、もくもくと歩いていると、突如。
「バサバサバサーッ!!!」
って、うおーぃい!?なんだなんだ!?
雷鳥でした。かわゆ。
この辺りは雷鳥沢という名前の通り、雷鳥が結構いるみたい。北アルプスでは雷鳥をよく見かけますが、立山・後立山は特に多いみたいですね。しかし、いきなりの羽ばたき音でマジびびりでした。
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早く出発し過ぎたので、剱御前小舎で暖を取らせてもらいつつ、ご来光の時間に合わせて出発します。暗がりを歩き、やって来ました!
別山北峰から望む剱岳
剱岳です。
岩と氷の殿堂と呼ばれる、剱岳。ご来光は雲に隠されてまあまあでしたが、それでも、十分美しい。荒々しくも気高いこの姿は、他のどの山とも一線を画した独自性を備えているように感じます。
雷鳥沢キャンプ場から登って別山に辿りついた時、目の前に現れる剱岳の迫力たるや、本当に圧倒的でした。初めて見る剱岳に感動。
これからこの山に挑戦するのかと思うとワクワクしてきますね!
別山北峰から少し戻って、剱岳方面へと進みましょう。寒すぎて水溜まりが凍ってます。
別山から剱沢キャンプ場へと下っていくんですが、この辺りから眺める剱岳も悪くないんですよね。雪渓が残っている時期なら、手前に雪渓を入れつつ、この辺りから広角で撮るのも悪くないかなあ?
剱岳は撮っていて最高にワクワクする山なので、今後重点的に撮影していこうと心に決めました。
別山からの下りはザレた急坂です。転ばないよう下りていきます。
剱沢キャンプ場
剱沢キャンプ場までやって来ました。何だここは、目の前に剱岳があって、絶景だし、むしろ威圧されてる感じすらします。
ご来光の写真撮るのにナイトハイクしたくないと言う方や、少しでも近くから剱岳にアタックかけたいという方は剱沢キャンプ場がおすすめですね。
トイレあり、水場あり、登山道状況のボードありと、まさに剱岳登山のベースです。特に雪がある時期などは心強い存在になりそう。
剱沢キャンプ場~剣山荘
今から向かうのは剱岳に最も近い山小屋「剣山荘」です。その手前に「剱澤小屋」もあるので、剱岳登山は小屋泊を利用すると便利です。特に、この後の苦労を考えると・・・小屋泊で体力を温存して、登山に全力を充てるのはありだと感じました。
紅葉の立役者~ナナカマドとチングルマ~
別山から標高を落としているため、この辺りは紅葉がまさに見頃!真っ赤に染まったナナカマドがきれい。
高山での紅葉と言えば、ナナカマドとチングルマ。夏は白い花を咲かせ、晩夏に綿毛となり、秋は真っ赤に草紅葉します。木が全然ないこのエリアでは紅葉の立役者となり、辺りに赤い絨毯を敷き詰めます。
剣山荘
さあさあ、剣山荘までやって参りました。
とりあえず腹ごしらえです。7:30なのでお昼ご飯としましょう。
何と言っても朝ご飯が朝の1:30でしたからね、既におなかペコペコ。お昼ご飯はパンでサクッと済ませる派です。
・・・カロリーを摂取したところで、いざ剱岳へアタックです!!・・・
剱岳 別山尾根ルート
剣山荘の裏手から、剱岳登山の幕開けです!
剱岳と言えば、長い間「登頂不可能な山」として地図の空白地帯となっていた伝説がある、そんな山です。今でこそ登山道が整備されてはいますが、それでも一般登山者が登る山としては最高難易度の一つであることに違いなく、普段より一層気を引き締めて臨みます。
剱岳は四方に登山コースがありますが、登攀(クライミング)なしで登れるのは南西側の別山尾根(私はここから登ります)と北西側の早月尾根。
別山尾根ルートは、まるで壁かと思うような坂を上るところからスタート。
見上げるような、かつてない程の急坂を登っていくんですが、これがなかなか疲れます。剱岳=危険な岩場というイメージがあったので、序盤の急坂は何と言うか想定外。実は、剱岳の事故の多くはこういった何でもない場所で頻発しているそう。つい先日も、60代の男性が転落・死亡のニュースがあったばかりです。
この角度は転んだらシャレになりませんね。剱岳の序盤はとにかく疲れます。
そんな一方で「あれ?剱岳ってこんなもん?」と、思う気持ちもありました。もっと怖いとか難しいものだと思っていましたが、ちょっと拍子抜けかな。
と、・・・そんな風に、思っている時間がありました。
前剱岳
そもそも、今登っていた急登は剱岳の中の、前剱、だったんですよね。
うん、よく考えたら当たり前でした。
急登を登り「ゴール!」だと、勘違い。そんな訳ないのにね。まだ鎖場もないし、カニにすらなってないと言うのに…!!
山頂はまだまだ遥か先でした。圧倒的ディスタンス。
「いつから、前剱が山頂だと勘違いしていた?」って、笑っちゃうような錯覚を起こしていました。それくらい、前剱が急登だったんです。
「これ、登れるのだろうか?」
「はたして、どこから登るのだろうか?」
山頂付近は、そう思わずにはいられない、岩の要塞。遠くから見た雰囲気では、同じく岩の大御所である穂高岳が幾分可愛く感じられる、そんな山容をしています。
前剱岳から岩場/鎖場の連続:剱岳登山はここからが本番
おぉ、ジーザスなんてこった。遠くから見ると、およそ人が歩くような場所には思えない道を行くようです。
今日は土曜日という事でそれほど人が多くないのが幸いし、自分のペースで歩くことができます。心を落ち着かせ、しっかり鎖を掴んで、焦らず騒がず、着実に進んでいきます。
岩を垂直に、真横に、縦横無尽。
写真は平蔵の頭という難所。こうして遠くから俯瞰してみるとすっごく怖いですね。実際歩くと、そうでもないんですが、遠目で見るとブルってしまうような、恐怖心が煽られます。
最大の難所来たる:カニのたてばい
岩場を右へ左へ、上へ下へ。順調に鎖場をこなしていき、かの有名な「カニのたてばい」までやって来ました。
ここは剱岳登山の中でも難所として知られ「人がカニのように岩にへばりついて登る」場所。
垂直です。完全に垂直ですね。
これまで、垂直に近い岩場は幾度となく上り下りしてきましたが、完全な垂直って初めてです。
足場がつけられ、鎖もあります。
いざ…!!
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クリアー!!(さすがにカニのたてばい中に写真は撮れませんでした。)
これは登り切ったところですが、やはり完全に垂直でした。下が見えません。そうですね、感想としては。思っていたよりかなり恐怖\(^o^)/ガクブル
さあ、ここを越えたからにはもう山頂は目の前です。後はガレた岩場を歩いて行くだけ。
(何だあれ・・・。あれは帰り道なんですが。見てはいけないものを見てしまった。)
剱岳(2999m)
剱岳、登頂しましたー。
かの有名な2999mに到達しましたー!!さすがに嬉しいので記念撮影しておきましょう。なお、剱岳の標識は4種類と豊富にそろえてあります(笑)
剱岳山頂は当然360度の大パノラマとなっており、こちらは立山方面。後にある峰々は北アルプス南部エリアです。薬師岳、黒部五郎岳、笠ヶ岳、槍ヶ岳などが見えてます。
こちらはお隣の後立山連峰。白馬岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳と旧知の山が並んでいるのを見ると、嬉しくなりますね。昔は知らないエリアばかりでしたが、今では歩いていない場所がだいぶ少なくなってきました。
「知っている山が増えていく」これこそ、登山の楽しみの一つですよね。
下山の難所:カニのよこばい
山頂からの景色を堪能して、下山します。下山直ぐに現れるのが難所「カニのよこばい」です。
こうしてみると、頭おかしい所を歩いていたんだなと言う自覚が湧いてきます。カニのよこばいは、鎖にしがみついていないと本気で死亡します。
鎖にしがみついて、勇気を出して足を降ろします。見えていない場所に足を引っ掛けなければならないため、はじめの一歩が非常に怖いです。でも、その一歩を踏み出せれば、あとは何とかなります。
後はカニのように、岩場を横に進みます。
上のお姉さんたちに「はじめの一歩、足場があっているか見ていてもらえませんか?」何て言うイベントがありましてですね。もしかしたらフラグ立っちゃうんじゃない!?とか思いましたが、特にイベントは起きなかったことをご報告いたします。
その後は前剱からジェットコースターみたいな坂を下りていきます。この時12:30。これから上に行こうとする人がたくさんいまして、時間的にギリだと思ったので挨拶がてら皆さんに「どちらまで?」と尋ねると「山頂まで」と。
分かってやっている方も多い反面、何人かは私と同じ勘違いをして、前剱が山頂だと思っていたよう。「え?まだ奥にあるの!?」と驚かれてました。
剣山荘(戻り)
剣山荘まで戻って来ましたー。これで一息できます。カップヌードルを購入して小腹を満たします。ふぃー、生きてた。
剱岳登山の感想と注意点
折角登ったので、私なりに気づいた点を書き残しておこうと思います。
- カニのたてばいなど核心部が注目されがちですが、剣山荘~前剱の急登具合がハンパじゃないです。特に、疲れ切った下山では転倒に注意。
- 非常に疲労する山です。雷鳥沢キャンプ場から往復するのは健脚でないと難しいと思います。
- カニのたてばい/カニのよこばいは高所恐怖症を克服してから挑戦しましょう。剱岳は逃げません。恐怖で動けなくなる可能性が大いにあります。
- 挑戦目安としては、槍ケ岳の山頂部(垂直ハシゴ含む)が楽勝だと思えれば大丈夫でしょう。
こんな所でしょうか。疲労して下山中に転倒・転落という事故が多そうだなという印象です。安全な登山を楽しみたいですね。
剣山荘~雷鳥沢キャンプ場
剱岳の紅葉が思いのほかきれいだったんですよねー。想定外のラッキーでした。
こうやって人を入れると、剱岳の迫力に圧倒されますね!
剱御前小屋を過ぎ、帰りは雷鳥坂から雷鳥沢キャンプ場まで戻ろうと思います。下には地獄谷や室堂が見えてますね。
絶景の雷鳥坂:雷鳥沢と立山の紅葉
雷鳥坂からは立山がバッチし見えます。きれー。
立山は台形のずんぐりした山なんですが、この角度は個人的にお気に入り。
雷鳥坂自体も紅葉してます。
緑、黄色、赤のグラデーションが最高じゃないですかー。紅葉登山は来る時期が難しいんですが、立山はギリギリセーフで滑り込めた感じ。本当は2017/9/27あたりがピークだったんですが、前線が来てしまって大雨。
まだきれいな時期にこれてよかったです。
雷鳥沢キャンプ場に戻ると、テントがめっちゃ増えてる(笑)
200張りくらいでしょうか?同じく北アルプスの涸沢は1000張りくらいあったそうですから、まだマシな方ですね。
期待していた立山の夕焼けはこんな程度\(^o^)/
明日は立山をぐるっと縦走します!
コースタイム(2017/9/30)
- 2:00 雷鳥沢キャンプ場(出発早すぎた)
- 4:40 別山北峰
- 6:50 剱沢キャンプ場
- 7:30 剣山荘
- 9:00 前剱
- 9:50 カニのたてばい
- 10:20 剱岳
- 11:20 カニのよこばい
- 16:00 雷鳥沢キャンプ場
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コメント一覧 (4件)
カニのたてばいにカニのよこばい、初めて聞きました。這いながら進む険しい道(壁)を進んだ先の絶景、計り知れない感動なのだろうと推測します。
大迫力で美しい剱岳の写真を拝見させて頂きました、ナナカマドの燃える様な紅も最高に美しい光景ですね。
ありがとうございます。
カニのたてばい、カニのよこばい、穂高のザイテングラートなど、山には面白い名前が付いているものが多いですね!
歴史を紐解きながら登ると、一層楽しみが増す気がします(๑´ڡ`๑)
剱岳は登山における一つの指標といいますか、実力試しみたいな側面もあるので、
一つの区切りだったのかなと思っています。
ナナカマドの紅葉きれいですねー。ぜひフミオさんもいつか見てみてください☆
清宮さん、こんにちは
雄山から縦走して、別山で初めて間近に現れた剱岳を見た時の印象は今でも覚えています
大袈裟ですが山に圧倒される、というのは初めての経験でしたね
その時は眺めるだけで精一杯であの山に登るなどとは全く考えも及ばなかったですが
私も今年登頂を果たしました
穂高、槍、剱を制して、次はどこを目指されるのでしょうか?
今後も更新を楽しみにしています。
こんにちはー(๑´ڡ`๑)
剱岳、圧倒されますよねー!間近の展望台から眺める岩峰は、本当に迫力があって大好きです。
グリベルさんも今年登頂されたんですね!おめでとうございます!
私は基本的に、クライミングというよりは、写真を楽しみながら登山したいなと考えているため、
岩稜の超難しいバリエーションルートなどには行かない予定です(剱岳の八峰とか)。
でも、剱岳の雪渓ルートは登れるようになりたいなと思っているので、ある程度登攀の技術も学びたいと思っています。
私の山の目標は北海道のカムイエクウチカウシを据えています。
色々経験しながら、登山レベルもアップして、良い写真が撮れるように頑張りたいです(๑´ڡ`๑)