投稿日:2019年12月15日 更新日:

雪山登山1年目のQ&A:冬山初心者が抱く疑問とその回答「15選」

登山に傾倒すると必ずと言っていい程、興味が湧くいてくる、そんな魅力が冬山にはあります。

雪山登山を一人で始めたいけど周りに相談できる人がいない。

夏山はかなり歩いてるけど冬山は一歩踏み出せないでいる。

そんな私と同じような境遇の人に向けて、雪山登山の始め方を7つポイントにまとめた記事を以前書きました。

本記事では概要から一歩踏み込んで、いざ冬山を始めるにあたり、雪山登山1年目の方が疑問に思いがちなポイントをQ&A形式でまとめてみました。

一人で雪山登山を始めた私自身の経験と視点を大切にしています。そのため山のプロフェッショナルやガイドさんが言う事とは多少違う点もあると自覚しています。

中には「え?」というヒヤリハットや「反面教師な事例」も含まれています。

でも実は、そんなグレーな境界線や初心者の視点こそ、雪山1年目の人が気になるポイントだったりするんですよね。

これから雪山登山を始めたい方へ、少しでも実用的なアドバイスをお届けできれば幸いです(๑´ڡ`๑)

目次

【質問1】初めからワンタッチ式12本爪アイゼンを買うべき?

回答:雪山登山道具をしっかりと揃えたい方、つまり今後何年も同じ道具を使う予定だという人はワンタッチ式の12本爪をおすすめします。

逆に、ライトな雪山登山のみを予定している方(岩稜は歩かない)は、セミワンタッチ式を検討してもいいと思います。

ワンタッチ式とセミワンタッチ式のアイゼンの違いは?

ワンタッチ式アイゼンは前後共にビンディング(金属)で固定するため、登山靴とアイゼンの相性に「遊び」がありません。

ブーツとぴったりフィットしないと簡単に外れてしまう恐れがあります。

一方で、セミワンタッチ式は前部が柔軟性のあるハーネスタイプ(樹脂製)なので、登山靴との相性が100点でなくても外れにくいことがメリットです。

冬山ブーツは値段が高いので、自分の足に合うこだわりの一足をはじめから買うことが多いので ⇒ せっかくこだわりのブーツを買うからには相性ピッタリのアイゼンも同時に買ってしまうのが合理的であり ⇒ それなら初めからワンタッチ式アイゼンを買ったらいいじゃないか…という理由。

ワンタッチアイゼンの方が固定力が強く、後からワンタッチ式アイゼンが欲しくなって追銭する心配もありません。

後からセミワンタッチ式アイゼンが欲しくなるということは考えにくいと思います(๑´ڡ`๑)

【質問2】三種の神器は無いと雪山デビューできない?

回答:雪山初心者が多く訪れる雪崩の心配のない定番山域で、定番のコースを歩く限りは初めから買う必要はないでしょう。

「定番の雪山」に定義はありませんが、例えば北横岳、入笠山、黒斑山、赤城山、天狗岳、蓼科山などです。

一方、残雪期に多くの人が訪れる立山は雪崩のリスクがあるためビーコンが必須。

人が多い=初心者向きでは必ずしもありません。

三種の神器をはじめから買うことは推奨されますが、雪山登山をはじめるときは金銭的な負担がとても大きく余裕が無いかもしれません。

それなら三種の神器を買う前に、雪崩リスクのない山で雪山登山の経験をしてから購入するのも遅くはないと思います。

ビーコンはなぜ手に入りにくい?

ビーコンは扱っているメーカーも売っている場所も非常に限られていて、かつ高価。

モンベルが売ってくれるといいのにな…と思っていたら、取扱をはじめたんでしょうか?(参考:雪山の世界へ踏みだそう! 雪山装備基本ガイド

店舗のみのようなので、今度行ったら視察したいと思います(๑´ڡ`๑)

【質問3】3シーズン用登山靴(夏靴)じゃ雪山は登れない?

回答:登れなくはないのですが、はじめから雪山登山靴を買うべきです。

反面教師な経験として聞いてほしいのですが、私は3シーズン用の登山靴で雪山を登ったことがあります。

実は厳冬期の乾雪はサラサラしているため、条件によっては3シーズン用の夏靴でもほとんど濡れることなく歩けてしまうんですよね。

雪山ブーツを初めから買うべきというのが回答でですが、雪山登山を今後も継続するか悩んでいる場合、簡単な雪上ハイキングをハイカットの夏靴で試してみてもいいと思います。

夏山登山靴でも使えるアイゼンは上記のように簡易的なものに限られますので、本格的な雪山登山を行いたいという場合はいずれにせよ冬季ブーツの購入が必要です。

冬季登山靴は3シーズン用の夏靴と何が違うの?

  1. ソールが固くてアイゼンの装着が可能。
  2. 防水性が高い。
  3. 保温性が高い

冬季ブーツは雪山登山に必要不可欠な要素を揃えていますが、値段が高く、購入を躊躇する人がいるかもしれません。

北横岳や入笠山で雪山登山の一端に触れ、それでも続けたい場合に購入を検討しても遅くはないかもしれませんね(๑´ڡ`๑)

【質問4】おすすめの雪山登山の靴(ブーツ)ってあるの?

回答:履き心地で決めてしまって構いませんが、予算に余裕があれば足首まで覆うタイプを選ぶと、歩き心地は向上する可能性があります。一方、登山靴が登る山を選ぶ訳ではないので、なにより履き心地が大切です。

初心者の私には、雪山登山靴のブランドや人気、知名度などは分かりませんでした。

とりあえず『LA SPORTIVA』が圧倒的に人気です。

お金に余裕があれば選んで間違いないという雰囲気であることは分かりました。

実際、雪山で使っている方はとても多く、雪山に行けば高い人気度がわかります。避難小屋や山荘では履き間違えが起きていると聞く程に広く選ばれているようです。私も試し履きをしましたが、足首まで覆うタイプで保温性が高く、歩く際の一体感が強いように感じました。

しかし、値段はかなり高めです。

ハイエンドな登山靴でなくとも日本の雪山は登れますので、個人的な感覚としては、訪れた登山店の中で最も自分の足に合うと思うものを選べばいいと思っています。

なるべく軽く、平地でも歩きやすい靴がいいですね。

雪山登山とはいえ、アプローチや登山口までの移動は平地を歩きますから。

雪山登山は夏山以上に体力勝負です。

保温性も大切ですが、軽さと歩きやすさがとても大切だと感じます。

冬季用ブーツにモンベルのASOLOを選んだ理由

私はモンベルが代理店を務めているASOLOを使っていますが理由はシンプル。

  1. 同じモンベルのアルパインクルーザーは重いし足に合わなかった。
  2. ASOLOは甲高の人でもフィットするように作られている。
  3. ASOLOは厳冬期用ブーツだが軽くて平地も歩きやすい。
  4. 値段が手頃で魅力的。

好日山荘などで他の冬季ブーツも色々見たのですが、当時LA SPORTIVAを買う予算はありませんでしたし、甲高の私にはASOLOのフィット感が心地よかったんです。

夏靴かと思うような歩き心地で、かなり推しの冬季ブーツです

冬季ブーツはアイゼンとの相性が大切だと言いましたが、もちろん靴を選ぶとき一緒に買っていますよ。

【質問5】おすすめのピッケルとアイゼンってあるの?

回答:正直いまでもブランドや形による違いが今一つピンときません。あまりこだわらず、好きな見た目、メーカー、色などで決めてしまっていいと思います。

ブランドによってはピッケルもかなりの値段がしますが、いきなり高い物を買う必要は全くないと感じています。

といいますか高い理由がわからない・・・。

私はクライミング・テクノロジーのピッケルを使っていますが、理由はシンプル。

  1. クビレのあるピッケルの方が真っ直ぐのタイプよりカッコイイと思ったから。
  2. 店頭でたまたま売っていたから。

50cmや65cmなど身長にあったピッケルであれば何でもいいでしょう。例えばブランドの企業理念や好きなブロガーさんと同じものを選ぶなど、それくらいリラックスして選んでも大丈夫な装備だと思います。

ただ一点、ピッケルには登攀用と縦走用があるので間違えないように。登攀用とはピッケルが折れ曲がったようなアイスクライミング用途、縦走用はまっすぐか少しくびれのあるトレッキング用途のものです。

アイゼンにもピッケル同様に多少の個性がありますが、それは雪のお団子がアイゼンに付着しにくくなっているとか、刃の角度が歩きやすいようになっているとか…。

結果として、使ってみない分からない事が多いので、ブーツと相性が合っていれば神経質になる必要はないでしょう。

ブーツとの相性はメーカーを揃えた方が安心感があるかなと思います。

なお、アイゼンの他にクランポンと言うこともありますが、アイゼンはドイツ語、クランポンは英語と言葉の違いであり全く同じ意味です。

【質問6】初めからわかんも買ったほうがいい?スノーシューは必要?

回答:冬季用登山靴と同じで、まず何回かは雪山登山を継続するかテストしたいという場合は不要です。雪山登山に傾倒する覚悟と熱意がある場合は買ってしまいましょう。

ワカンは必ず使う場面が、近い将来出てくるはずです。

スノーシューの検討は、ワカンを使ってラッセルを経験したうえで、それでも必要性を感じたなら検討すべきです。

山域や登山スタイルによってはお荷物なだけですので、必須と言う装備ではありません。

なお、ワカンはピッケルやアイゼンと比べて商品の選択肢がずっと少ないです。私は定番のエキスパートオブジャパンのものを使っています。

反っているタイプとフラットなタイプがありますが、これもそれほど気にする必要はありません。

反っている方が登りでも歩きやすいといいますが、それ程の差があるのかは今一つ不明。

【質問7】厳冬期の行動着はどれくらい着込むべき?

回答:例えば北横岳や蓼科山を歩く場合、晴れていれば厳冬期用のインナーにアウター(あるいはフリース)1枚、風が当たる山頂や森林限界より上ではさらにフリース(あるいはアウター)を着ています。

行動中は厳冬期といえど体温が上がるため、あまり着こみ過ぎない方が賢明です。

汗冷えは夏山以上にリスクとなります。

パンツも同様、厳冬期用のインナーに暖かいパンツを履くだけです。

雪山登山のウェアについて調べるとレイヤリングについて熱く語っているメーカーサイトや個人ブログがヒットしますが、全て買おうと思うと予算がいくらあってもたりません。

本当に大切なのは、厳冬期用の厚いインナーを使うこと。冬だからといっていきなり着込みすぎないこと、ですよ。

【質問8】冬季用ハードシェルは絶対必要?レインウェアで代用できない?

回答:北横岳や蓼科山のように初心者定番の雪山で登山デビューする場合、冬季用アウターが絶対に必要かと言えば、レインウェアでも全く問題ありません。

その後も雪山登山を継続するタイミングで購入しても遅くはないでしょう。

冬季用ハードシェルはレインウェアと何が違うの?

そもそも冬季用ハードシェルとレインウェアで決定的に違うのは保温性というよりも、素材の丈夫さと、雪面での滑りにくさ(摩擦)であると思っています。ラッセルの際に雪が侵入しにくいなど細かな違いもありますが、特筆すべきは耐久性のある素材です。

冬季用ハードシェルはアイゼンやピッケルで簡単に破れない素材で作られていますが、レインウェアは驚くほど簡単に破れます。

レインウェアでの雪山登山を推奨している訳では決してないのですが、雪山ハードシェルをいきなり揃える必要性があるかはいささか疑問です。

雪山登山の道具を一度に全て揃えるとなると、予算的に厳しいことも多いでしょう。

そこでまずはレインウェアで雪山登山を体験し、今後も冬山を続けるのか見極めた上で購入することをおすすめしたいと思います。

【質問9】寒い冬山でもスマホGPSを確認できる?

回答:ポケットに入れている限り、基本的には動きます。GPSの確認も可能です。

ポケットに入れておけば、体温によりスマホの温度は一定以上に保たれるからです。

ウェアの外にずっと放りっぱなしでは電池が切れると思いますが、たまにポケットから出したりしまったりする分には作動しますよ。

注意すべきはスマホを落とさない事。雪上でスマホを落とすと見つからない可能性があります。

斜面だとスマホが滑って回収不能となったり、落とした場所がわからなければ、埋もれてまず見つかりません。

【質問10】山小屋がない時、トイレはどうするの?

回答:携帯トイレを使うことが環境面では理想的ですが、テント設営後を除き、行動中に都度使用することは困難です。雪山登山でお花摘みやキジ撃ちは避けられないのが実情かと思います。

女性はその意味で男性より苦労することが多いかもしれません。

この辺りは女性ブロガーやSNSで経験者に相談してみるといいでしょう。

厳冬期の稜線でキジ撃ちして凍傷にならない?

急な腹痛はコントロールできません。厳冬期の稜線で急にお腹が痛くなることもあります。

わたし自身の経験として、厳冬期の仙丈ケ岳、それも森林限界より上で急な腹痛に襲われ、人生初のキジ撃ちを余儀なくされました。

自然環境への影響などお叱りもありますが、それどころではない場合もあります。生きるか死ぬか…といっても過言ではないほど焦りましたからね。今では笑い種ですが、冬山の稜線は隠れる場所もないんですから。

厳冬期では環境以上に自分のお尻も心配です。

凍傷になるんじゃないかとヒヤヒヤしたものですが、サッと済ませて何とかなりました。

大変お下品な話題で恐縮ですが、冬山での腹痛は命取りになりかねないので、腹痛持ちの人は特に注意した方がいいでしょう。

【質問11】雪山登山ってどうやってルートを決めたらいいの?

回答:基本は夏道を辿るように歩きます。雪山登山だからと言って特別なルートを作ることは稀です。

夏道の上は樹林がなく、雪の踏み抜きリスクも少ないので歩きやすいことがほとんどです。夏道に従うという意識を持ち、トレースが無ければGPSをこまめに確認しながら着実に進みましょう。

トレースがあっても時に間違っていることもあるので注意が必要です。

私も間違ったトレースを付けてしまったことが何度かありますが、トレースが必ずしも正しいわけではありません。

稜線では雪庇に気を付け、なるべく平坦な場所を歩きます。

痩せ尾根は滑落のリスクが少ない中央を歩くことがほとんどです。

雪山の稜線や尾根でルートファインディングできるかは、夏山登山の経験が大きく関係してきます。雪の下に隠れている夏道が想像できるくらいには、3シーズンでしっかり経験を積みましょう。

迷いやすい樹林帯にご用心

夏道が樹林帯の中を通っている場合、同じような景色が前後左右に続くため迷わないよう注意が必要です。

視界が開けていてトレースがあれば迷うことはありませんが、樹林帯は視界良好でも迷いやすいもの。

上の写真は霞沢岳の樹林帯ですが、進行方向が分かりにくかったです。

下る必要がある場合はなおさらですね。

間違った尾根に入ってしまったり、間違った谷を下ると一気に遭難予備軍となってしまいますので、進むべき道に自信が持てない場合は絶対に進んではいけません。

夏山もですが、雪山では撤退する勇気も時には必要です。

【質問12】滑落してもピッケルがあれば本当に止められる

回答:焼岳のアイスバーンで滑った経験からすると、滑落停止は現実的ではないと感じました。

事前に相当訓練していて、かつ斜度や雪質が滑落停止に向いていて、ザックを背負ってなければ止められるのかもしれませんが・・・。

雪山登山において滑落は最も怖いリスクの一つですが、雪山初心者が急斜面で転倒・滑落した場合おそらく止められません。

滑落の危険がある急斜面、とくにトラバース中は転ばないようにピッケルワークとアイゼン歩行に全神経を向けるべきですね。

【質問13】閉山後も登山していいの?

回答:閉山後の登山に規制はありませんので、登っても大丈夫です。男体山(二荒山神社の私有地で冬季は登山禁止)のような特殊事例を除き、閉山後の冬季だからと言って登山が制限されることはありません。

例えば富士山や北アルプスの上高地では閉山式が行われますが、閉山とはシーズン中(一般登山適期や山小屋などの営業期間)の山や自然に感謝する儀式のことであり、登山規制のことではないんですね。

冬季の富士山やその他の山で事故が起きると家族や友人から「雪山って登っていいの?」という質問をよく受けますが、たとえ富士山や剱岳の様に冬季の の登山が容易でない山であっても、制限はありません。

ただし、剱岳の様に登山届の様式や時期が義務化される例もあります(参考:富山県警察)。

閉山後は山小屋や宿泊施設の営業が終わり、一気に観光客がいなくなり寂しくなりますが、逆を言えば静寂の中で登山を楽しめる唯一の時期だと言えます。

一方で、危険に遭遇した場合、発見されて助かる確率もグッと減りますので注意が必要ですね。

【質問14】登山装備でリフトに乗ったりゲレンデを歩いていいの?

回答:問題ありません。チケットを購入すれば、スキーヤーやスノーボーダーと同じようにリフトやゴンドラに乗ることができます。

ゲレンデも邪魔にならないよう脇を歩けば問題ありません。スキー場によっては歩く場所を細かく指定されることもあるようなので、その場合は指示に従いましょう。

スキーやスノーボードではゲレンデから滑降するだけですが、私たち雪山登山家にとってはゲレンデ最上部が「登山口」です。

リフトから降りた後、雪山に向かっていくと注目を浴びることもあります(๑´ڡ`๑)

【質問15】どこの山小屋にも冬季小屋ってある?使っていいの?

回答:積雪のある山小屋では冬季小屋があることがほとんどです。

日本全国調べたわけではありませんが、日本アルプスなどメジャーな山域では併設していることが多いようです。

利用には有料のこともあるので支払いを忘れずに(料金箱に入れる事がほとんど)。

山小屋のホームページを調べても冬季小屋について説明されていないことも多いので、利用したい場合はヤマレコやブログで事前に調べたり、夏季に問い合わせたりした方がいいでしょう。

雪山登山をはじめようと思うと疑問に思う事、不安な事がたくさん出てくると思います。

一歩踏み出すのに勇気が必要です。

夏山登山と比べてリスクが大きい事も事実です。

しかし、雪山登山で得られる経験は計り知れず。冬山の美しさは言葉になりません。

登山をしているのであれば、ぜひ四季折々の、特に冬の美しい山をご覧ください。

冬山の始め方に関して、他にも疑問に思う事、不安に思う事があるかもしれません。

そんなときはお気軽にTwitter(@kiyomiyakenta)で質問いただければと思います(๑´ڡ`๑)

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