【北アルプス】奥穂高岳 雪山登山(初冬・小屋泊)ジャンダルムを眺めに北アルプス最高峰へ!

10月末某日、北アルプス最高峰『奥穂高岳』へ行ってきました!

奥穂高岳というと、私にとっては普段「撮る対象」ですが、奥穂高岳山頂から眺める景色も日本山岳風景における絶頂の一つ。特にジャンダルムを眺めるにはこれ以上ない場所です。

山頂には穂高神社の嶺宮が祀られており、日頃から北アルプス登山でお世話になっている一人として、久しぶりにお参りに行きたい気持ちもありました。

そんな北アルプスの主峰にして最高峰「奥穂高岳」への登山についてご紹介していきます。

目次

コースタイム

1日目
上高地(5:30)→ 明神(6:10)
明神(6:10)→ 徳沢(7:00)
徳沢(7:00)→ 横尾(7:50)
横尾(8:00)→ 本谷橋(8:45)
本谷橋(8:45)→ 涸沢ヒュッテ(10:20)
涸沢ヒュッテ(10:30)→ 涸沢小屋(10:35)
涸沢小屋(10:35)→ 穂高岳山荘(14:35)
穂高岳山荘(15:10)→ 奥穂高岳(16:20)
2日目
穂高岳山荘 ⇆ 涸沢岳
穂高岳山荘(8:30) → 上高地(15:00)

上高地から涸沢へ!

本日も新宿と上高地を夜間に直通で繋いでくれる「さわやか信州号」で上高地にやってきました。

到着する時間はどの時期(11月中旬で終了)でも変わりませんが、日の出の時間が遅くなったので晩秋や初冬に利用すると日の出前の到着となります。

平日にも関わらず同じ便に乗っている方も何名かいらっしゃいました。この時期だと蝶ヶ岳や涸沢までの利用の方が多いでしょうか。

朝焼けの宿「明神館」

特に狙ったわけではないのですが、朝焼けの宿こと明神館に到着するころにちょうどモルゲンロートが見られました。

上高地からフラットな道を1時間で着く山小屋ですので、明神や嘉門次小屋に宿泊してゆっくりと明神岳のモルゲンロートを眺める・・・なんていうプランも素敵ですね。

新雪と紅葉が美しい徳沢・横尾

何度も何度も歩いている上高地から横尾への道ですが、初冬の時期はとても見応えがあり、冠雪をいただいた明神岳と奥上高地の紅葉が実に美しい。

この時期は空気が非常に澄んでおり、青空を背景に初冬の高峰と黄葉のカラマツを観にくるだけでも十分価値があると思います。特にご家族やご夫婦で軽めのトレッキングを楽しみたい場合にはうってつけじゃないでしょうか。

横尾から本谷橋へ

横尾大橋を渡り涸沢へと向かいます。左手に屏風岩が大きくそびえるこのルートですが、晩秋以降は樹木の葉が落ちて展望がとても良くなります。

奥に見える白い山は北穂高岳。裸になったカラマツも趣のある景色を醸成しており、雪を頂いた高峰との対比が実に見事です。

さて、本谷橋へ到着しました。夏は賑わう場所ですが、冠雪後は一気に人通りが少なくなります。

また、夏期には吊り橋と木の橋二つの橋が利用できますが、閑散期になると吊り橋が撤去されて木の橋のみになります。涸沢ヒュッテ・涸沢小屋営業終了後には木の橋もなくなりますので渡渉が必要。

とはいえ、岩から岩へうまく跳び移れば問題はありません。意外にジャンプポイントが悩ましいので、岩が凍結している時間帯はご注意を。

本谷橋を過ぎると冠雪した登山道

面白いことに本谷橋を越えると一気に積雪が増えました。

この辺りの登山道は樹林帯で日が当たらないこともあり、ツルツルに凍結しています。登りはまだしも下山時には恐怖を覚えるくらい滑りますので、転倒防止のためにチェーンスパイクを持参するのが賢明です。

とはいえ、今回私はアイゼンを持っているのでチェーンスパイクは持ってきていません。

今の時期はアイゼンとチェーンスパイクの使い分けが非常に悩ましく、岩が露出している場所が多い時はチェーンスパイクの方が有効です。

どちらも携帯するか否かは判断次第ですが、もし不安だったり悩んでいるのなら、両方持っていく方が賢明かと思います。

白銀の奥穂高岳

ソーダラップ(起源を調べてみるもイマイチわからず・・・)やSガレまで来ると新雪を纏った白銀の奥穂高岳が視界に飛び込んできます。

この辺りまで来ると一気に雪山登山といった装いで、自然と歩く足にも気合が入ります。

ナナカマドの朱い実は結構遅くまで残るんですね。モノクロの世界に残された果実は一層色鮮やかです。

涸沢岳と涸沢槍と残月。月をモチーフに取り入れた山岳写真を撮りたいと思いながらも、タイミングが難しくまだ撮れていません。

たまにTwitterなどで月と山を含めた写真を拝見しますが、朝夕などのマジックアワーとは違った魅力的な写真になりますよね。

初冬の涸沢

涸沢に到着する頃にはしっかりした積雪となりました。右手の涸沢小屋に向かってもいいですが、とりあえず涸沢ヒュッテ側から積雪状況を見て、登るルートを判断したいと思います。

さて、そんな涸沢ヒュッテですが盛夏の面影は全くなく、売店などの建物は撤収されていました。ヒュッテへの入り口付近は解体せず支柱を何本も立てて積雪から小屋を守るようです。

涸沢小屋と違って涸沢ヒュッテは厳冬期の間に完全に雪に埋れてしまうため、山小屋を守ための作業が欠かせません。なんと言ってもカール地形・沢のど真ん中に位置しますから、積雪量は半端じゃないでしょう。

涸沢ヒュッテから積雪状況を判断

肉眼で見るより望遠レンズで見た方が遠くの積雪判断がしやすくて楽です。しかし、こうしてみると雪面は割としっかり落ち着いているように見えますが・・・これがまた、実際に歩いてみるとそんなことはなく、初冬だということを考慮しても新雪が非常にパウダーでラッセルに苦労しました。

小豆沢もしっかり冠雪しているので歩けそうですが、岩が露出している箇所も多く、すでに日も高く昇っているので落石リスクが気になります。

涸沢小屋から夏道を回り込んでザイテングラートまで進み、そこで改めて判断することにしましょう。

涸沢小屋から夏道を進む

涸沢ヒュッテから穂高岳山荘へ向かうにはパノラマコース(上部)を歩いてザイテングラートへ行くか、涸沢小屋を経由してザイテングラートまで向かうか。

今回迷わず涸沢小屋経由で向かうのには理由があり、ヒュッテ上部(巨岩が密集している地帯)がまだ完全に冠雪しておらず、岩と新雪・深雪のミックスでとても歩けたものではなかったからです。ここに突入してしまうと「無理じゃない?」と撤退したくなること間違いなし。

そのため、今回は涸沢小屋を経由してザイテンへ向かいます。

涸沢小屋(北穂高岳側)はご来光の後、割とすぐ日が当たるので融雪が早く、夏道が露出している箇所もありました。

新雪と岩のミックス

これが本当に歩きにくい「新雪と岩のミックス」状態です。まだ雪が固まっていないため、雪の下に隠れている岩や登山道の状況が読みにくく、いきなりズボッと足がハマったり、岩と岩の間に足を挟んでしまうことも。

私はよくブログで

『雪山登山を始めるなら厳冬期から』

とおすすめしていますが、これこそが初冬の難しさ・歩きにくさであり、初冬登山が一概におすすめしにくい時期である理由です。

ザイテングラート

涸沢小屋からザイテングラートへトラバースしながら進みます。雪がパウダーでアイゼンが効きにくく、滑りやすいですね。

この辺りでピッケルを出し、一歩一歩、しっかりと雪に足を埋めながら進んでいきます。

ザイテングラートの取り付きまでやって来ました!

「ズボー!!!」っと腰まで沈みます。尾根に取り付く場所って雪が溜まりやすいのか、他よりも深さが桁違いです。

なんかこう、深雪の中でもがいている時ってまるで泳いでいるかのような、雪に絡めとられているような不思議な感覚です。実際は汗だくでもがいているだけなのですが(笑)

この瞬間「やっぱり沢を直登した方が良かったかな?」って思うのですが、沢も沢で雪が深いので、実際かかる時間はそれほど変わらないのかもしれません。

そんなこんなでザイテングラートにようやく到着です。写真は下部を振り返って一枚。

涸沢ヒュッテから見ると遠近感が狂ってしまい、稜線まであっという間に到着しそうですが、実際そんなことはありません。夏道でも急な登りとなりますが、新雪のこの時期はラッセルが激しく、とても辛い登りとなりました。

こんなにラッセルするならやっぱり小豆沢を直登すれば良かったと何度思ったことか。

とは言え、文句ばかり言っても始まらず、とにかく上へ上へと登るのみ。特に今日は夕景を奥穂の山頂から撮りたいので16時まで山頂にたどり着きたい。そう考えるとチンタラ歩いている余裕はありません。

実はですね、今日は初めての「山小屋泊」ということでテントやシュラフを持っておらず、普段よりずっと軽荷です。

山荘泊を選んだのは「山小屋に泊まってみたかった」「夕景に間に合わすために軽荷で登りたい」「初冬の平日で空いているはず」など複合的な理由から。

烈風の奥穂高岳山頂へ

天気は文句のない晴れですが、稜線では強風が残っているようです。雪煙が太陽で照らされて実に美しい光景です。

私の予想ではもう少し風は弱いと思っていましたが、どうやら前日の予報よりやや強風が残る気圧配置になったようです。

穂高岳山荘に宿泊

私と言えば100%テント泊での登山スタイルでしたが、山小屋に泊まってみるというのも一興ですし、何より穂高岳山荘のスタッフさんや雰囲気は大好きなのでぜひ泊まってみたいと思っていました。

とは言え、素泊まりなのである意味では山荘の良さを完全には感じられないかもしれませんが(汗)

ちなみに、この日は私含めて2人しか宿泊しておらずとても静かでした。この時期に3,000mの稜線まで上がってくる人は稀なので、小屋の営業終了ギリギリを狙うと快適な山小屋泊を経験できるかもしれません。

強風の稜線

穂高岳山荘から奥穂高岳までは夏山のコースタイムで約1時間

垂直の梯子を登って稜線の舞台に上がりました。思った以上に風が強いのでゴーグルを持ってこなかったことを後悔・・・。ただ風が強いだけならなくても問題ありませんが、積雪がサラサラした雪なので雪煙が厄介です。

大キレットは強風が収束する場所なので、今はすごい風速になっているでしょうね。

先日の大雪が思った以上に残っていて、ジャンダルムにもしっかり雪がついていました。ジャンダルムは見ての通り急峻な岩稜なので雪がすぐ落ちてしまう・溶けてしまいます。この時期ならではの写真ということで雪が残っているか心配していましたが、杞憂だったようです。

奥穂高岳までは大きな雪田を3つ程通過します。それほど細い稜線ではありませんので、雪庇踏み抜きのリスクはあまりないかと思います。強いて言えば勾配はかなり急なので、下山時に滑落しないよう注意が必要。

特に雪面がツルツルの時に注意が必要です(残雪期や、初冬でも雪→雨となった後など)。

奥穂高岳(3,190m)登頂

山頂付近は強風が吹き荒れてなかなかのコンディション!

本来なら寒くて記念写真を撮ってすぐ下山しよう・・・なんて言いたくなるコンディションですが、私はここから写真を撮るために来たので今からが本番です。

兎にも角にも、日が落ちる前に山頂に到着できて一安心。目の前には岩と雪がミックスした荒々しい姿のジャンダルムが迫って来ます。

風速は3,000mで15m/sの予報ですが、まさにそれくらいあったと思います。

初冬用のグローブをつけて、フリースとダウンを着込んではいるものの、ジャンダルムの写真を撮ろうと思うと雪煙が顔面にビシバシと当たってくる。

顔面が凍傷になるかと思いました。少しでも強風の可能性が残る時はバラクラバゴーグルの準備をお忘れなく。

これくらいのコンディションになると写真を撮ること自体がかなり難しくなります。

まだ10月にも関わらず、常に低温強風に晒されていたカメラ(Nikon Z6)は稼働こそしてくれたものの、背面ディスプレイは落ちてしまいファインダー越しの撮影しかできませんでした。

この後は日がさらに落ち、稜線や雪煙が真っ赤に染まりました。その様子はまた別の機会で。

穂高神社「嶺宮」にお参り

奥穂高岳の山頂には穂高神社の嶺宮があります。この1年は穂高岳の撮影に注力していましたし、これまでのお礼と今後の安全祈願を込めてお祈りさせていただきました。日本アルプス総鎮主というのも、北アルプス最高峰の奥穂高にぴったりですね。

穂高神社には燕岳に登った際に参拝しました。

安曇野の穂高駅にある神社で御祭神は穂高見命。大海原を統べる海神(ワタツミ)の子にあたる神様であり、安曇野(アヅミノ)はワタツミが転じた地名だというのは有名な話ですね。

日没まで山頂で写真を撮っていたので急いで穂高岳山荘まで戻って来ました。さすがに1時間のコースタイムなので途中からヘッドライトのお世話になりました。

小屋泊だとストーブがある室内でゆっくり過ごせるので本当に楽ですねー!静かで人もいないし、こういった閑散期には積極的に山小屋を利用したいと思うようになりました。

(ただ、誰が寝たのかわからない布団で寝るのはあまり気持ちの良いものではなく、その辺りは一長一短だと思ったのでした。ボソッ)

2日目は涸沢岳へ

先日の強風でいささか疲労が溜まっていることもあり、2日目の朝は涸沢岳にやって来ました。

貫禄たっぷりな前穂高岳の奥には富士山南アルプスの蓮嶺が見事。北アルプスから眺める富士山もまた乙なものですね。

涸沢岳から眺める奥穂高岳

東の空にはやや雲が多いものの、美しいご来光となりました。この日の太陽は黄色が強く、真っ赤に焼ける北アルプス…とはならなかったものの、一期一会の景色に心を打たれました。

実は穂高岳山荘でもう一泊しようか悩んだのですが、昨日の夕景も今朝の景色も素晴らしく、撮れ高がかなりあったこと、そして何より昨日の夕方でかなり疲労したこともあり、今日下山することに。

今日一日晴れるので雪もかなり溶けてしまいそうですしね。

下山は小豆沢から

下山は小豆沢をガッシガシ下っていきます。

小規模ではありますが表層雪崩の痕あり。一気に積雪した後の谷筋は雪崩リスクがあるため、どこを歩くか積雪判断が欠かせません。

こうして振り返るとザイテングラートではなく、小豆沢を直登した方が楽だったんだろうなと今更ながら思います。

去年、北穂高岳を歩いた時も「南陵ではなく北穂沢を歩いた方が楽だったんだろうな」と同じことを考えていました。

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今回は当然そのことが頭にあり、どちらを歩くか最後まで悩んでいたんですが、判断が悩ましく難しいところです。

涸沢から本谷橋まで凍結注意報

涸沢に着いた時点でアイゼンを外しましたが、涸沢から本谷橋までの凍結した登山道を下山するのが核心的に滑りました。

一回スッテーンと転んだのはお恥ずかしい限り。場所によっては危ないですし、できればチェーンスパイクを履いた方がいいでしょうね。あるいはギリギリまでアイゼンを付けて下山した方が確実かもしれません。

上高地に戻って登山完了

上高地に戻り、無事に登山完了です!

Youtube動画はこちら

Youtube:初冬に登る奥穂高岳(3,190m)穂高岳山荘泊 | 4K | 上高地〜涸沢〜奥穂高岳

今回の登山はYoutube動画にもアップしていますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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