シュラフ(寝袋)と言えば「日本一周から週末キャンプ、はたまた高所での登山」までアウトドア最重要装備の一つです。
アウトドアで1泊したい人にはマストハブな重要装備。
シュラフを扱うメーカーはたくさん存在しますが、中でもモンベルのシュラフは高いストレッチ性能と分かりやすい分類/料金体系が魅力で人気があります。
モンベルのシュラフには羽毛(ダウン)のダウンハガー/アルパインダウンハガーと化繊のエクセロフトがあり、暖かさに応じて番号(#)分けされています。
多くの種類があるように見えますが、他メーカー分類が明瞭なので迷わず選べると思います。
(個人的に、イスカやナンガはラインナップの分類が煩雑で「どれを選べばいいのか」難しく感じてしまいます。)
そんなモンベルでさえも、いざ買う際に「自分はどの番号(#)を選んだらいいのか?」という悩みにぶつかりました。シュラフは決して安い買い物ではないので尚更ですね。
かく言う私も悩みました。
自転車日本一周から登山を見据え、モンベルにすることは決めたものの「自分に合った#番号はどれなのか?」本当に悩みました。
同じような悩みを持つ人がたくさんいらっしゃるようで、記事はだいぶ前に書いたのにも関わらず、いまだに年間を通して多くの人に読まれています。
そして今、自転車日本一周や四季折々の登山経験を通じて、あらゆる状況の中でモンベルのシュラフを使い倒してきました。
【春】緑が芽吹く頃、イメージとは違い外で野宿したり山での幕営は寒いものです。
【夏】初夏の心地よい時間はすぐに終わり、酷暑の夏がやってきます。この時期の野宿は暑くて堪えます。高所での山岳キャンプは快適な時期です。
【秋】例えば晩秋の3000m近い高所でのキャンプは下界と温度感がまるで異なります。
【冬】雪に閉ざされた世界ではシュラフの性能が大きく影響し、時に命にも関わります。
「あらゆる季節や場面を通じて万能な一つ」を決めることは難しいですが、それでも「どれを選んだら自分には最適なのか」の指標を示すことはできると思い、私の経験から使用シーンに応じたおすすめのシュラフをまとめてみたいと思います。
1. 年間を通じてシュラフを使おうと思っている人へ
私のように春夏秋冬シュラフを使いたい人です。例えば春から冬にかけて自転車で日本一周する、季節に関係なくキャンプに行く、週末旅を楽しんでいる、そんな人たち。
夏が暑く、冬が寒いのはイメージできると思いますが、「春と秋は(今)想像したより絶対寒い」という理解が大切です。
暖かくないシュラフに意味はありません。暖を取れることがシュラフの全てです。年間を通じてあらゆる季節でシュラフを使うのであれば少し暖かい物を選ぶのが肝要。
私自身の経験から、春夏秋冬(厳冬期除く)で使える最もバランスのいいシュラフはダウンハガー800#2です。
もし厳冬期(1月~2月)に雪が降るような場所での使用を考えているのであれば、迷わずダウンハガー800#1を選んでください。
登山の例として厳冬期の奥白根山(マイナス10度)で#2を使ったことがありますが、#2では寒すぎて震えました。
初春、晩秋、冬にシュラフを使う予定の人は、ダウンハガー#3より上(#3と#5)を考える必要はありません。絶対に寒くて後悔します。
シュラフを購入して後悔することがあったとすれば、それは「寒すぎた」に他なりません。多少重くてかさ
ばったとしても、暖かい方が総合的な満足度は高いと断言できます。
#0という選択肢が残っていますが、これは冬の北海道で厳しい野宿を考えているような人向けです。
自転車日本一周のように「少しでも荷物を軽くしたい」、登山の様に「ザックのスペースに限りがある」人にとって#0では重すぎるしかさばりすぎる上、オーバースペックとなるでしょう。
2. 春から秋にかけて自転車日本一周を考えている人へ
日本一周チャリダーで最も多い、春から秋にかけて自転車旅をするケース。春から秋とは3月から12月までを想定しています。やはりおすすめはダウンハガー800#2ですね。
一方、とにかく少しでも荷を軽くしたい、とにかく1円でも安いシュラフが欲しい、そんな人はダウンハガー800#3でもいいと思います。
過去の日本一周チャリダーで#3を選んでいる人が多いですが、値段にして5000円の違い。くどいようですが、私は#2をおすすめします。
汎用的なモデルである#3を経験則的に選ぶ人が多いようですが、上でも述べたとおり、想定より寒かったという経験を救ってくれるのは暖かいシュラフです。
#2と#3は重量や体積にそれほど大きな違いがないので、#3を選ぶ理由は見当たりません。#2を四季折々使い倒しましたが、#1を買えばよかったと後悔したことがあるくらいです。
一方、#3の方がよかったと感じたことは1度もありません。
3. 夏場のキャンプで使いたい人へ
夏場のキャンプ場だけの使用を考えるのであれば、ダウンハガー#3とダウンハガー#5で好きな方を選べばいいですね。
使う場所によりますが、避暑地として有名な那須塩原や上高地などの最低気温を見ると、夏の間は10℃を下回ることがなさそうです。
最低気温から考えるに、夏だけのライトユースなら#5で事足りますし、「紅葉の時期にも使う可能性がある」という人は#3を選んでおけば間違いないでしょう。
4. 厳冬期雪山登山で使いたい人へ
厳冬期の雪山登山と言っても、山域によって気温は大きく異なります。
厳冬期登山を考えると#1と#0での判断になりますが、まずメーカーであるモンベルの記載を見てみましょう。
ダウンハガー800 #1
国内2,000m級のほとんどの冬山で幅広く使用できるモデルダウンハガー800 #0
国内の3,000m級の冬山で使用できるモデル引用:モンベル公式ページ
丹沢、日光、奥秩父など比較的低所で標高が3,000mに届かない山域が主たる登山対象であれば、#1で決まりかと思います。
難しいのは北アルプスや南アルプスの様に3,000mの稜線での幕営を視野に入れている場合。モンベルの記載によれば#0を選びたくなるところですが、#0は本当に大きく、かさばり、重たいです。
ザックのスペースなど総合的に勘案して、私は日本国内の厳冬期登山であれば#1が最適解だと思っています。
実際、私はダウンハガー800#1を使っています。初めは#0を買おうと思っていましたが、そのあまりの大きさと重さから断念。
雪山登山ではホッカイロを活用するなど、シュラフにプラスすることで劇的に温かくする方法もあるため、私としてはシュラフは#1を選び、その他の方法を合算することで快適な就寝温度を保つことをおすすめします。
冬季登山ではアルパインダウンハガーも選択肢に
冬季に限り、アルパインダウンハガーも選択肢に加わります。アルパインダウンハガーとはダウンハガーより収縮性を抑えたモデルです。
ある意味、モンベルのシュラフの特徴を殺してしまっていますが、名前に「アルパイン」と入っていることからも登山用途を想定していることが伺えます。
なぜ冬季限定かと言えば、シュラフはよく伸びた方が使い心地が良く、快適な眠りに繋がる一方、厳冬期のような酷寒の環境下では寒さに縮こまり、何とか夜を凌ぐイメージになるため、シュラフの快適性能はそれほど大切ではないからです。
アルパインダウンハガーの収縮率が120%に対してダウンハガーは135%とよく伸びます。快適性に違いがある分、値段はダウンハガーの方が1万円も高い。
冬季登山は本当にお金がかかるので、少しでも出費を抑えたい場合には、冬季に限りアルパインダウンハガーも選択肢に入ってくると思います。
Q&A:シュラフにまつわる疑問にお答えします
購入前は頭を抱える程に悩んだシュラフの選択ですが、多くの経験を経て、当時疑問に思っていたことがクリアになりました。
上で4つのタイプに分けて最適なモンベルのシュラフをおすすめしましたが、タイプ横断的に、シュラフ購入の際に生じ得る疑問にQ&Aの形でお答えしていきます。
ダウンハガー800#2では、夏が暑すぎないのか?
回答 : 暑い場面もあります。年間を通じて一つのシュラフで済ましたいと考える場合、これは仕方ありません。
実際、真夏の平地ではダウンハガー#2のシュラフに入ったら暑くて寝られないでしょう。しかし、実用面では全く問題がありません。なぜなら、「真夏の平地ではシュラフに入る必要がない」からです。シュラフのジッパーを開け、掛布団として使用してください。シュラフのサラサラした感触が冷たく、気持ち良いこと間違いなしですよ。
一方、北アルプスのような高地では真夏にダウンハガー800#2でちょうどよく、とても気持ちのいい眠りに就けると思います。涸沢のように標高が低い場所ではやや暑い場面もありますが、ウェアでいくらでも調整可能です。実際、夏の涸沢では半袖Tシャツ+シュラフで寝ているような人もたくさんいます。
シュラフは軽いものにして、ウェア類で温度調整すればいいのでは?
回答 : 暖かいダウンウェアを持って行けるような場合、それも可能です。
一方、登山や自転車日本一周のように持ち運べるウェアの数や種類に限りがある場合、暖かいシュラフを選んだ方が絶対にいいでしょう。なぜなら、地域によって、季節によって外気温はめまぐるしく変わるため、最終的にはシュラフの暖かさに頼る側面が大きいからです。いくらでもウェア類を持てるような場合(車中泊など)であれば、暖かいシュラフに固執する必要はありません。
毎日シュラフを使い続けると保温性が下がらない?
回答 : 下がります。ダウンシュラフはロフト(寝袋のもこもこ具合)が潰れると保温性が下がるため、ハードユースすると保温性が下がります。
私は自転車日本一周をしているので誰よりも使い込んでいますが、最後の方になると明らかにペシャッとなり、ロフトがつぶれていました。
裏返せば、一般的な使用では多くとも年間十数回の使用だと思いますので、きちんとメンテナンスしながら使用すれば数年から10年程度は使えるものと思います。
時を遡って、日本一周前にシュラフを買うとしたらどれを選ぶ?
回答 : 年間を通じて使用し、冬も使うことを考えればダウンハガー800#1を選びたいところですが、自転車で持ち運ぶのであればやはりダウンハガー800#2でしょう。
冬に野宿したい、冬山で山小屋やテントで泊まりたい人は#1も魅力的ですね。理想は冬とそれ以外でシュラフを使い分けること。例えば寒くなってきたらシュラフを実家に送り、#1を郵送してもらうなどの対応が理想的です。
#0は自転車日本一周の使用対象にはなりません。デカすぎますので。
アルパインダウンハガーとダウンハガーって何が違うの?
回答:アルパインダウンハガーが120%の収縮率に対してダウンハガーが135%の収縮率とよく伸びます。
それ故に、寝返りを打ったり、シュラフの中で着替えをする際に便利です。同じ番号のダウンハガーとアルパインダウンハガーは保温性はほとんど同じですが、ダウンハガーの方が値段が高いです。収縮性をとるか、値段をとるかで決めて問題ないでしょう。
ダウンハガー650とダウンハガー800は何が違うの?
回答 : ダウンハガー650や800は「フィルパワー」という羽毛の性能を示す値で、大きい方が高品質で保温性が高いです。そのため、ダウンハガー650#0とダウンハガー800#0を比べると、値段こそ800#0の方が高いけれど、保温性は高く収納サイズは小さく収まっています。どちらにせよ高い買い物になるので、私は後悔しないようにフィルパワーは800を選んだ方が良いでしょう。
ダウンハガー#4はどうか?
回答:#4という型番はありません。昔はあったのか、欠番の理由はわかりませんが、#4はありません。
シュラフカバーは必要?
回答 : 冬山登山をする以外は基本必要ありません。
シュラフカバーの主目的はテント内結露の滴からシュラフを守ることですが、春~秋ではテント内がそこまで結露することがないので不要です。あったら便利という声も聞きますが、私個人としては必要性を感じたことはありません。
冬はテント内と外気温の差が大きくなり、自身の発する蒸気(汗や呼気)がテントに触れて凝集し、シュラフに垂れる恐れがあるのでシュラフカバーをする人も居るようですが、厳冬期などは結露が凍って水になることがありませんので、私にはシュラフカバーの恩恵が今一つ分からないでいます。
化繊のシュラフはどうだろうか?
こちらの記事でも触れていますが、化繊シュラフのデカさはハンパじゃありません。これは実際に店頭で見ていただいて、それでも「安いシュラフが欲しい」と思った場合のみおすすめします。化繊シュラフは洗濯機で洗濯できるというメリットがありますが、ダウンシュラフもお風呂場で簡単に洗うことができるので、あまり気にしなくてよいと思います。
登山をするのであれば化繊シュラフは大きすぎて絶対に止めた方がよく、自転車日本一周では論外です。
車中泊用、車で移動してすぐキャンプサイトへ移動できる場合など、シュラフを運ぶことが億劫でないケースでのみおすすめします。
シームレスダウンハガー900はどうか?
モンベルのシュラフの新作ですね。画像で見て分かる通り、シュラフで一般的に採用される隔壁を取っ払った革新的なモデルのようです。シュラフのダウンは使えば使う程、また洗った際などにダウンが偏ります。
ダウンが偏ると、ダウンがない場所(コールドスポット)は保温ができず寒くなります。そんな偏りを防ぐために、シュラフには小さな「部屋(隔壁でできたコンパートメント)」の中にダウンが詰められているのですが、このシームレス ダウンハガーではその隔壁をなくしてなお、偏らないように工夫されているようです。
シームレスダウンハガー900#1とダウンハガー800#2の保温性能は同一(コンフォート温度0度、リミット温度-6度)ながら、重量が80g軽くなっています。体積も小さく小型化に成功しているようです。
一方、値段は約2万円高いので・・・金銭的に余裕がある場合のみ試してみる価値がありそうです。
登山の観点から言えば、80gと言うのは「無視できる」違いですのであまり魅力は感じません。自転車日本一周においてはまるで違いが感じられない差だと言えそうです。個人的には選びませんね。革新的で面白い発想だとは思うんですが、さすがに高すぎます。
モンベルシュラフを横並べて比べてみる
参考までに、それぞれのシュラフの値段や重量、使用できる温度をまとめておきます。改めて見てみると、#1から値段も温度も跳ね上がります。ここが厳冬期で使うかどうかの線引きでしょうね。
私は#2を使って真夏から-10℃まで寝たことがありますが、リミット温度というのは文字通り「何とか寝られる本当にギリギリのライン」だと思ってください。
コンフォート温度、リミット温度、エクストリーム温度の公式表記と清宮見解を記載しておきますね。
コンフォート温度
(公式)代謝が低く、寒さに対する耐性が低い人がリラックスした体勢で寒さを感じることなく睡眠できる温度。
(清宮)厚着すればゆっくりと眠ることができる温度。
リミット温度
(公式)代謝が高く、寒さに対する耐性が高い人が、寝袋の中で丸まった状態で寒さを感じることなく睡眠できる温度。
(清宮)かなり厚着しても寒くて震える温度。かろうじて寝れるが、寒さで目を覚ますこともある。
エクストリーム温度
(公式)代謝が低く、寒さに対する耐性が低い人が、寝袋の中で丸まった状態で厳しい寒さを感じ震えを伴いながら6時間まで持ちこたえられる温度。
(清宮)アウトドアがトラウマになって今後家から出たくなるレベル。何とか一晩は乗越えられるが、長時間続けば本当に危険。リミット温度以下で使用すべきではない。
私が自信を持って記述しているのは、シュラフを本当に様々な場所と時期で使ってきたからです。ダウンハガー800#2を使ってリミット温度やそれ以下を経験しているからです。
私は代謝が高く寒さには強いタイプで、普段はかなりの薄着で過ごしております。そう考えると、寒がりの方はより一層暖かいタイプのシュラフを選んだ方が良いと思います。
「行動している時に感じる温度」と「寝る時の温度」は異なる
例えば-10℃という気温。もちろん寒いは寒いんですが、登山をしている時を考えると、ザックを背負い歩いているので意外と大丈夫だったりします。
しかし、だからと言って安心はできません。-10℃の中で行動するのと、-10℃の中で寝るのとでは大きな違いがあります。寝る時は誰だって代謝が下がり、体温が低下します。昼間活動していた時と寝る時とでは、例え同じ気温だとしても驚くほど体感温度が違うものです。
そのことまで考慮に入れ、各シュラフのリミット温度を見るべきでしょう。
まとめ
モンベルのシュラフは収縮性が高く、季節を問わず寝やすいのでおすすめです。
値段もイスカやナンガと比べてもリーズナブルで、表記や分類も分かりやすいと感じています。
この記事では使用シーンごとに最適だと思われるシュラフをまとめてみました。
これからシュラフ購入を検討している、あるいは他メーカーからの買い替えを検討している方の参考になれば幸いです。
お気軽にコメントください
コメント一覧 (8件)
具体的な経験を踏まえた説明でとても役に立つ内容です。私もダウンハガー800#2にします。
参考になり幸いです。ありがとうございます(๑´ڡ`๑)
すごくわかりやすくまとめてあり、参考になりました。
ありがとうございます!
こちらこそ、参考になり幸いです(๑´ڡ`๑)
色んなケースを想定した説明が非常にわかりやすく参考になりました。
800♯2が有力候補です。ありがとうございました
コメントありがとうございます!
参考になれば嬉しいです(*´ω`*)
シュラフも大切だけど、マットも大事
私はダウンハガー#7とゴアテックスシュラフカバー、エアマットで10月の尾瀬にテント泊して朝フライシートが凍ったが問題ありませんでした。
背中が冷えなければ意外と眠れるもんです。
とても参考になりました。
ありがとうございます