梅雨入り前の好天を掴んで涸沢から穂高岳山荘・涸沢岳へ行ってきました!1ヶ月前にも穂高の稜線へ登ろうとしていましたが、ゴールデンウィークの大量降雪で叶わず、奇しくも1ヶ月後にリベンジとなりました。
1ヶ月でこんなにも雪が溶けて景色が変わり、緑が芽生えて春を感じられるのかと驚きました。新緑の上高地は本当に気持ちが良くて、思わず上高地でゆったりと時間を過ごしたくなるほどに。
小豆沢の雪渓を登ったのは初めてですが、下山時の傾斜は目眩がするほどに急でした。
コースタイム
1日目(6月9日) |
上高地(5:40)→ 明神(6:20) |
明神(6:20)→ 徳沢(7:00) |
徳沢(7:00)→ 横尾(8:00) |
横尾(8:10)→ 本谷橋(9:10) |
本谷橋(9:10)→ 涸沢(11:10) |
涸沢(12:00)→ 穂高岳山荘(15:00) |
2日目(6月10日) |
穂高岳山荘 ⇆ 涸沢岳 |
3日目(6月11日) |
穂高岳山荘(7:30)→ 涸沢(8:30) |
涸沢(8:30)→ 上高地(13:30) |
凛とした空気の上高地
ブログで何度か紹介している「さわやか信州号」を利用して上高地に朝の5:30に到着。昨晩は湘南新宿ラインが遅延しており、さわやか信州号にあわや乗り遅れそうでしたが何とか間に合いました。
公共交通機関での移動では遅延が命取り。さわやか信州号を逃す=登山キャンセルに発展する大事態ですからね。
残雪期のマストアイテム「日焼け止め」
残雪期の登山で雪上を歩く場合、1年で最も日焼けをします。紫外線が足元の雪で反射するので通常の2倍焼けるイメージで、本当に焼けます。私は普段日焼け止めを使うほどデリケートではないのですが、この時期だけは日焼け止めを使います。それくらい焼ける。
使わないと首元や鼻が火傷したくらい焼けますので、日焼け止めはこの時期マストアイテムですね!
新緑が眩しい春の上高地
バスターミナルから河童橋まで来た瞬間「来てよかった!」ってなる景色。6月の上高地は新緑が眩しくて、天気が良ければご覧の通り、この辺りを散策するだけでも本当に気持ちがいい、新緑が瑞々しい最高の季節です。
まだ沢筋に雪の残る岳沢と吊り尾根を眺めながら朝から小梨平でコーヒーを飲むなんていうプランも絶対最高だと思いますよ!
若いうちは山に登り、齢を重ねたらそんな風に山を愉しめたらいいな。そんで「昔はよく登ってたもんだ」なんて言いながらキャンプしてビールを飲もう(めっちゃいいじゃん!)。
焼岳はすっかり夏山の装い。グリーンバンドも少しずつ標高を上げているようで、あと1ヶ月の間に雨に打たれ、夏山の姿に変わって行くんですね。
朝の柔らかい光を浴びて輝く新緑。上高地の緑ってこんなに綺麗だったかな?そう思うくらいこの日の上高地は綺麗でした。まだ残る残雪との対比も美しい。
明神
明神岳もすっかり雪が溶けて夏山の装いです。明神岳の登山も計画しているんですが、中々実行に移せておらず、その頂に登るのはいつのことになるでしょうか?
明神から涸沢を目指していつもの道を歩きます。これだけ何度も歩いていると「歩きながら何を考えているんだろう」なんていつも振り返りながら思うものですが、不思議と上高地から横尾までの3時間はあっという間に過ぎてしまうもの。その先にある厳しい登山への緊張感や、景色への楽しみを胸に、3時間の水平移動はあっという間に過ぎていきます。
徳沢
徳沢に来れば新緑がいっそう眩しく輝いています。
この1ヶ月で上高地あたりの標高にはシダ植物が一気に増えました。上高地ってこんなにジュラシックパークな雰囲気だったっけ?そう思うくらいシダ植物が豊富でした。
横尾
上高地から2.5時間ほどかけて横尾まで到着!夏になると暑くてたまらない水平移動も残雪期の朝であればそれほど苦には感じません。
むしろ、雪山登山の緊張感とは程遠い新緑のハイキングに楽しさを感じる程です。雪山シーズンの厳しい自然と緊張感もいいですが、その冬が終わった後の新緑の春もまた格別だと感じます。特に雪山から春山まで連続して登山をしていると、四季の移り変わりはこれほどまでに美しかったかと、改めて感じることができる上高地トレッキングでした。
(晴れているからこその景色。ぜひ晴れを狙って歩きたいものですね。)
横尾から夏道を通って涸沢へ
横尾から涸沢への道もこの通りすっかり夏模様。1ヶ月でこれほどまでに雪が溶け、緑が輝きだすものですね。ツツジっぽい花が咲いていたので調べるとムラサキヤシオという種類だそうです。
5月上旬に涸沢へ行ったときの様子はこちら。
北アルプスで残雪期登山を楽しみたい場合、登る時期でこれほどまでに様相が変わりますので、事前調査やリアルタイムの積雪情報は非常に重要です。5月下旬から6月に入ると雨の日が増えて季節が一気に進みます。持って行く装備類も悩ましい時期。その辺のことは別記事にまとめたいと思います。
大きく迫る北穂高岳を眼前に、横尾谷を進んでいきます。この辺もまだまだ夏道ですが、北穂の上部にはしっかり雪が残ってそう。
本谷橋〜涸沢
雪解け水で勢いを増したのか、沢がゴーッと気持ちの良い轟音を奏でています。
本谷橋を過ぎると少しずつ残雪の上を歩く場所が出てきました。涸沢ヒュッテの方が雪切りしてくれていることもあり、アイゼンを使うような状況ではありません。夏道のほうが多いので下手にアイゼンやチェーンスパイクを着けてしまうと歩きにくいかもですね。
こればかりは残雪の具合を見ながらアイゼンの有無を現地で判断するしかないでしょう。
なお、私は夏靴で登っていますが・・・絶対に冬靴で来てください。冬靴+厳冬期用のアイゼンがあったほうが良いです。これは反面教師的にぜひそう伝えたい。
奥穂高岳が見えてきて涸沢までラストスパート!
夏だと歩きにくい沢筋も残雪期は歩きやすくて良いですね!横尾から涸沢までこんなに近かったかと錯覚するくらい楽に来ることができました。
涸沢
涸沢に到着!平日ということもありますが、あまりに人がいないのでスタッフさんが売店に常駐しておらず、作業中の方に声をかけてラーメンを作っていただきました。ありがたし。コーラも購入して体力は満タン。来る小豆沢の急登に備えます。
値段は張りますが、山小屋でお昼ご飯を済ませられるのって本当にありがたいですよね。それだけで上高地から遥々歩く価値があるというものです。
小豆沢の急登から穂高岳山荘へ
涸沢ヒュッテで栄養を補充したら万全の体制で小豆沢へ・・・!
と思っていたのですが、ここで持ってきたアイゼンにちょっとしたトラブルが・・・!?
登山をしているとトラブルが起きることはあるものですが、アイゼンとか雪山装備のトラブルは命に関わるため撤退も頭をよぎる。トラブルを乗り越えることもまた一つの経験ですが、やれやれだぜと思いながら先へ進みます(大丈夫だった)。
歩みを進めると横から轟音がしたので何かと思えば上部が雪崩れていました(汗)ブロック雪崩でしょうか?6月に入り雪が安定しているとはいえ、まだまだ雪崩のリスクも健在で油断なりませんね。この時期は特に降雨後の雪崩に注意が必要です。
まずはザイテングラート基部まで登っていきます。写真で見ると何だかあっという間に着きそうに見えますが、涸沢ヒュッテから稜線まで夏道で3時間のコースタイム。俯瞰で見ると距離感がバグって見えますが、ヒュッテからザイテングラート基部まで結構距離がある。
夏だと岩がゴロゴロしているところですが、まだまだ残雪豊富な涸沢です。6月中旬なのにアイゼンとピッケルが必須なんだから不思議なものです。
ザイテングラートの基部まで到着!
すでになかなかの傾斜。喘ぎながら登っていると上から同時に6個ほど落石が雪の斜面を転げ落ちてくるじゃありませんか!!!しかも3個は私の方を目掛けて転がってきたのでまあビックリしました。途中で進路が変わったのでことなきを得ましたが、無音で転がってくる落石がこれほど恐ろしいとは・・・。
ザイテングラートの中部はすでに雪から露出しているので夏道を歩くことも可能でした。しかし、上部はまだ雪の中で眠っていたので、いずれにせよ再度アイゼンを装着する必要はあります。それなら中途半端に夏道を歩いても仕方ないかと思い、雪渓歩きを続行します。
ただし、小豆沢の上部はこんな感じで尋常じゃない角度。まさに大自然の滑り台。一見すると滑っても「最悪でも死なないでしょ?」って思うんですが、岩が露出している場所や落石が露出している場所が結構あるので、ぶつかったらただでは済まないと思います。
トレースが全くなくてかつ朝早い場合、かなり緊張感のある登りとなりそうです。雪が固すぎても緩すぎても歩くのは難儀しそうですね。一歩一歩ステップをしっかり刻みながら、ピッケルで確保しながら進んでいきます。
とはいえ、登りは良いでしょう。正直、登りながら頭の中は下山時のことでいっぱいでした。
振り返ってこの角度、この傾斜。下りたくなさすぎる・・・。
稜線より少し下に大きなクラックが・・・!これから梅雨に入ると湿雪雪崩も怖いですが、少しずつ雪が溶けていくのか、大規模な雪崩が起きるのか、どうなんでしょうね?いずれにせよ梅雨時期の雪渓歩きは大いに気をつけたいものです。
穂高岳山荘
穂高岳山荘に到着ー!涸沢ヒュッテから地獄の小豆沢を登り終えた先にある穂高岳山荘はマジで癒しの存在、憩いの場、そして私は穂高岳山荘が大好きです。
穂高岳山荘の人めっちゃ優しいのよな(涙)
いつ来ても優しくて大好き。受付の女性がマジで優しい。巨大すぎる山小屋って塩対応の時あるよね。仕方ないのかもしれないけどね。穂高岳山荘の「誰でもストーブ使ってください」の優しさに涙出ちゃう。CCレモンを飲んで体力を回復させていただきました。
山荘前は山盛りで雪が残っているものの、テント場は雪がなくなっており快適なテント生活が送れそうですね。
涸沢岳(3110m)
穂高岳山荘から20~30分ほど岩稜を登り涸沢岳に登頂です!
今回の登山では涸沢岳からの撮影がテーマだったので、この登山で5回も登頂しました(笑)
涸沢岳は言わずと知れた奥穂高岳の展望台。目の前には前穂高から伸びる吊り尾根と奥穂高岳の巨軀をこれでもかと堪能することができます。
残雪期後期ならではの、岩と雪がミックスする光景はたまりません。初冬や厳冬とはまた違った趣のある素晴らしい景色ですね。ご来光前のブルーアワーの中、穂高岳の撮影に心を踊らせ、撮影に挑みます。
撮影的なことで言うと、涸沢岳から奥穂高岳を撮影する場合、24mmの標準レンズでも十分撮れますが、広角レンズがあると撮影のバリエーションがグッと広がりますよ。
今回は14-30mm F4が久しぶりに活躍する場面でした。
穂高岳山荘のテント場から眺める前穂高岳北尾根・・・まさにうちのブログのロゴそのものじゃないか!穂高岳山荘ではお昼に牛丼をいただき、貴重すぎるタンパク質を摂らせていただきます。ありがたい。タンパク質が本当にありがたい。ラーメンとカレー以外のメニューが本当に嬉しいのよ。
うちのロゴは「穂高岳山荘のテントから眺めた北尾根なんだ」という設定にします(笑)
晴れには晴れの、ガスにはガスの情景があります。夏山といえばガスってしまうことが多い夕景ですが、そんな時もガスを絡めてどのようにして撮影するか工夫したいものです。むしろ、ガスの流れる景色は山岳写真ではなくてはならない光景。夏山こそ積極的にガスや雲を利用して写真のバリエーションを広げたいものです。
涸沢岳は標高3110mある背の高い山。隣の奥穂や北穂はもちろん、遠くに富士山や浅間山、八ヶ岳連峰から後立山連峰まで鮮明に望むことができる好展望地。晴れていれば360度の絶景に心打たれること、間違いなしです。
今回の登山では好天に恵まれて、思い描いていた以上の撮影をすることができました。梅雨に入ってしまうと天気を読むのが格段に難しくなりますので、今の時期は一瞬の好天を掴めるかが非常に重要ですね。土日固定休みでは山の撮影はなかなか捗りません。
今回は奥穂高岳には登っていません。穂高の撮影の中心はやはり奥穂ですので、どうしても奥穂に行くことは少なくなりがちです。今年の夏は奥穂に行く予定がありますので、その際に改めて「撮らせていただいている」感謝を伝えに行こうと思います。
恐怖の下山
さあさあ!お世話になった穂高岳山荘を後に、いよいよ小豆沢からの下山です。この時が来てしまったか・・・。ここまでの勾配になるとある程度雪が柔いだ方が歩きやすいように感じました。雪がカチコチの場合、バックステップで下りざるを得ないでしょう。
雪が柔らかければ、雪を踏み潰すように、足をなるべく水平に維持しながら一歩一歩、慎重に下山していきます。
振り返ってこの傾斜です。
下りでは落石への注意が一層必要。一見小さく見えますが、30cm程度はあろうかという石が猛スピードで落ちてくるのを見ているので油断なりません。
涸沢〜上高地
小豆沢を下って涸沢ヒュッテに着いたときの安堵といったらありませんね!少しだけ休憩させていただき、あとはまったりと上高地に向けて歩みを進めます。なお、Sガレ付近は今の時期やや道が分かりにくいので、沢筋に入っていかないように注意が必要です。右へ右へと言う意識を持つといいでしょう。
徳沢でソフトクリームに舌鼓を打ちながら、新緑の回廊を戻り上高地へ。
毎度毎度、上高地に来ては眺める景色ではありますが、下山してから眺める梓川と穂高の景色には癒されます。無事にここまで戻ってきたと言う安堵の気持ちと、登山をやり切ったと言う達成感があるからこそ、上高地に戻ってきてから眺める穂高には特別な思いを感じます。
必要な装備やテント泊について
5月とは異なり、6月に入ると北アルプスの高山帯でも春の雰囲気を感じられます。そのため気温も過ごしやすく、最低気温も基本的には5℃程度ある日がほとんどで凍えることはなくなります。高気圧が来ていて晴れている時は(北アルプス的な)夏山に近い服装や装備でテント泊が可能となります。
穂高岳山荘のテント場は涸沢岳側についているので雪解けが早く、雪がなければ就寝時もあまり寒くありません。そういった意味で厳冬期や初冬とは違った、暖かい空気を感じながらのテント泊が可能となります。
一方で、涸沢や槍沢などはまだまだ残雪が豊富。特に涸沢や北穂沢はアイゼンとピッケルがなければ手も足も出ない様相ですので、雪山ブーツに12本爪アイゼンが必要です。アプローチは夏道なのでギャップが大きく辛いところです。
涸沢岳は岩陵で尖っているので厳冬期でも雪がつきにくく、奥穂や北穂と比べて圧倒的に早く雪が溶けます。そのため穂高岳山荘から涸沢岳への道は完全に夏道でした。穂高岳山荘から奥穂への道も6月には夏道が出ている場所が多くなります。遅くまで雪田が残る場所もありますので、アイゼンは状況を見ながら判断します。
奥穂へ登っていた人の話ではアイゼンはなくても登り降りできたとのことですが、積雪状況により難易度は大きく変わりそうですね。
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