厳冬期テント泊登泊(あるいは冬季小屋泊)に導入したエアーマットをご紹介します。
これまではサーマレストのリッジレストソーライトを使ってきましたが、厳冬期のような酷寒ではR値が足りず底冷えで寒い夜を過ごしていました。調べてみるとクローズドセルもエアーマットもそれほど重量が変わらないということで、同じくサーマレストのネオエアーXサーモを購入しました。
実際に冬山登山で使用してきましたので、耐寒性能・寝心地・使い勝手のなどの指標からレビューしたいと思います!
最強のR値を持つエアーマット「ネオエアーXサーモ」
このエアマットは市販されているマット類の中でも最強の断熱性能を持つマットの一つ。
断熱性能(耐寒性能)はR値として表現され、値が大きなほど寒さに強いことを意味します。ネオエアーXサーモはR値6.9を誇る厳冬期用マット。R値がどれくらい大きいのかメジャーなマットを表にしました。
ブランド | 製品 | R値 | 重量 |
Therm-a-Rest | リッジレストソーライト | 2.1 | 400g |
Therm-a-Rest | ネオエアーXサーモ | 6.9 | 430g |
NEMO | テンサーアルパイン | 4.8 | 475g |
Sea to Summit | コンフォートライト | 4.2 | 620g |
Sea to Summit | イーサーライトXTエクストリーム | 6.2 | 720g |
ネオエアーXサーモのR値が最も高くかつ軽量なのが一目瞭然。
厳冬期に使うエアマットとしては特筆したスペックを誇っています。
R値が一番高くて(耐寒性能が高い)かつ重量も軽い(登山では大切)訳なので、皆こぞってこの製品を使っていても良さそうなものですが・・・実は、私の肌感として一番人気なのはNEMO(ニーモ )のテンサーアルパインな気がしています(わたし調べ)。
エアーマットはR値や重量も大切ですが、もう一つ寝心地という大切な指標が影響してくるからだと思っています。
ネオエアーXサーモの耐寒性能(断熱性能)
実際に雪山でテント泊をした訳ですが、断熱性能は相当すごいです。
R値6.9は伊達じゃありません。
雪上テント泊をしているとは思えない。雪面と身体の接点が断絶されているような感覚。地面からの冷気をこのマットが遮断してくれるからです。
クローズドセルのマットや薄いエアーマットとは完全に一線を画す断熱性能があると言えます。
雪の上にいることを忘れさせてくれる・・・そう言っても過言ではないほどに底冷えを感じません。言い換えれば、それほど立体的で厚みのあるマットの上に寝ているということ。マットの中の特殊構造や空気の層が地面からの冷気をシャットアウトしてくれている訳です。
耐寒性能について言えば初冬から酷寒の厳冬期でも大活躍間違いなし。
雪山テント泊登山の大敵「底冷え」を蹴散らしてくれる。そんな安心感があります。
4枚のサーマキャプチャー層(熱反射板)が、地面からの冷気を防ぐと同時に体から出る熱を反射、細かく区切られたチューブの中に温かい空気を維持します(公式引用)。
これ以上のR値のマットを私は知りませんので、ある意味では寒さ対策で最上の策をとっていることになります。
どんな酷寒の環境でも安心して任せられるマット。それがネオエアーXサーモです。名前を覚えにくいことだけが玉にキズ。
もしこのマットでも寒いと感じるのであれば、それはマットで制御できる範囲を超えており、ウェアを着込むとかホッカイロを利用するなど他の手立てを考えた方が良いと思います。底冷えを100%無くせるわけではないですしね(あくまで寝ているのは雪上ですから)。
ネオエアーXサーモの寝心地
空気をパンパンに入れるとこれくらい厚く膨らみます。この空気の層が断熱に一役も二役も買っている訳ですが、マットの厚みが増せば増すほど、寝転んだときの安定性が低下するので寝心地が悪くなります。
他のエアーマットと直接比較した訳ではありませんが、ネオエアーXサーモの寝心地が「ベスト」ではないだろうと想像しています。多少なりとも「ゴロゴロ」しますし、寝相が悪いとマットから落ちる可能性があります(どのエアーマットでも言えることですが)。
ガス缶と同じような高さ。しかも中には空気が入っているため「クローズドセルと同じような安定した寝心地か?」と聞かれたらNoだとお答えします。
ただ、私の優先順位として、厳冬期用エアマットで大事なのは「寒さを極限まで和らげて、かつ熟睡できるか」ということ。
このマットの対象ユーザーはお手軽な低山雪山テント泊やゆるキャンを楽しみたい人ではありません。少なくとも「厳冬期の八ヶ岳」とか「厳冬期のアルプス」でテント泊や無人冬季小屋泊を考えている人だと思います。
そう言った登山者に対して十分な睡眠の質を提供できるのかと聞かれたらYesです。
かなり快適に熟睡できています。
寝相とか体の大きさとか体重とか色々な要素が影響してくるので一概に保証はできませんが、底冷えが改善されることで寒い環境でも熟睡しやすくなります。
テンサーアルパインと比較して優劣はあるのか?
SNSやネットで情報収集している段階では「NEMOのテンサーアルパインの方が寝心地がいい」という声が多かったように思います。
フォロワーさんから「寝心地の問題でネオエアーXサーモからテンサーアルパインを買い直した」という情報もありました。サイズ感は両者変わりませんので、マットの構造によるものかと思います。テンサーアルパインは溝が格子状(網目状)であるのに対してネオエアーXサーモは横線の水平です。
この溝の違いが寝転がった時の安定感の違いに繋がるのだろうなと想像しています。テンサーアルパインは使ったことがないのであくまで想像です。
仮に『ネオエアーXサーモの方が軽くてR値が高い(寒さに強い)。テンサーアルパインの方が少し重く、R値が低いが寝心地が良いという意見が多い』のであれば、使う人の優先順位により最適なマットが変わってくるだろうと思います。
(そもそも)厳冬期テント泊登山の寝心地は重要?
ゆるキャンならともかく「厳冬期テント泊登山において寝心地はどれくらい重要」でしょうか?
もちろん重要なことに間違いはありません。
が、しかしです。
これは持論ですが、マイナス10℃とかマイナス20℃といった酷寒の環境で、自宅ベッドのような睡眠の質を得たいというのは、そもそも難しい話です。
ネオエアーXサーモはレビューなどがあまりなく、購入前は寝心地について不安を感じていましたが、私の中の優先順位として「暖かくて少しでも軽いマット」が欲しかったのでネオエアーXサーモを選びました。
実際に使った感想として、十分熟睡できるエアーマットで満足しています。
ネオエアーXサーモ(R)の使い心地
R(Regular:183ch)とL(Large:196cm)の2サイズ展開。
私はRサイズを使っています。モンベルのダウンハガー#1と比較すると分かるように、十分な長さがあるので身長165センチの私が寝転がるとちょうど良い大きさです。
マット選びの際には重量を少しでも軽くするために身長よりかなり短いマットを選ぶ方もいらっしゃいますが、厳冬期用のマットはしっかりと身長を覆えるサイズを選んだ方が無難かと思います。一箇所底冷えする箇所があると、そこから身体が冷えてしまいますからね。
エアーマットというと空気の注入と排出が面倒なのですが、ネオエアーXライトに関していうとバルブが優秀なのでストレスを感じません。このマットをお勧めしたいポイントの一つです。見ての通りダブルロック(赤いバルブと黒いバルブ)になっています。
- 空気の注入だけ可能(一方通行)
→ 膨らませる時。 - 空気の密閉が可能(ダブルロック)
→ 寝る時。 - 空気の排気が可能(フルオープン)
→ 畳む時。
特に1.の空気注入モードが最高。息を吹き込めば吹き込んだだけ中に空気が入りますが、中から空気が漏れ出ません。この仕組みによりマットを膨らませるのが簡単です。ダブルロック機構があるので、上に寝転がった時、あぐらをかいた時に空気が漏れることは一切ありません。
空気を入れるためのポンプサックが付属されていますが、実戦では使いませんでした。呼気に含まれる湿気がマット内部で凍らないようにするための物ですが…息を吹き入れた方が圧倒的に早く膨らますことができますので、私は今後も使用しないと思います。
総じて使い心地は極めて良好。
クローズドセルと比べると使用後の排気からの畳む作業が面倒ですが、これは厳冬期用のエアーマットの宿命ですので仕方がないところです。
買う前と後のQ&A
Q:寝た時にパリパリとした音がしてうるさい?
A:私が持っているのは最新モデル。どうやらこの点は旧モデルから改良されているらしく、寝転がったり寝返りを打っても全く気になりません(無音ではない)。あまり気にしなくて大丈夫です。音に対して超絶神経質な人は、そもそも厳冬期用エアーマットが向いていないかもしれませんね。どんなマットでも多少は音がします。
Q:膝をついたりあぐらで座っても破れない?
A:ドッスンドッスンと座っていますし膝も突きまくっていますが、素材に高強度ナイロンが使用されており、かなり丈夫なので自重の負荷により破れる心配はまずありません(体重が極度に重たい人は慎重にどうぞ)。
Q:空気の注入や排気が面倒じゃない?
A:バルブが優秀なので想像していたより断然簡単だった。
Q:テンサーアルパインではなくネオエアーXサーモを選んだ理由は?
A:R値が小さくてかつ重いとなると、私の優先順位的に選ぶ理由がない。(実際のところは分からないけど)寝心地が多少良かったとしても軽いマットがいい。多少重たくても寝心地を重視したいのであれば、店頭で可能な限り寝比べてみるのが良いと思います。
Q:寝返りを打った時に落ちることはある?
A:そもそも厳冬期のテント泊登山で就寝時に頻繁に寝返りを打っていないと思う(寝ているので正確なことはわからないが)。少なくとも寝ている時にマットから落ちたことや落ちそうになったことはない。各社マットのサイズ感は似ているので、ブランド間で落ちやすさに有意な差があるようには思えません。
身長が180cmを超えているなど、マットに対して体のサイズに余裕がない場合は落ちやすいのかもしれない。その場合はL(ラージ)サイズの購入を検討すると良いと思います。
Q:お勧めできるユーザーは?
A:厳冬期の八ヶ岳・南アルプス・中央アルプス・北アルプス・北海道・東北の山岳など最低気温がマイナス10度以下になるような山岳でテント泊や冬季小屋泊を考えている人。奥秩父や日光あたりの標高であればもう少しライトなモデルでもいいと思う。一方で、クローズドセルと比べて重量が極端に重いわけではないので、雪山テント泊登山を考えている人なら買って損はないと思う。
Q:使おうと思っている時期は?
A: 11月下旬〜5月上旬。気温がマイナス5℃くらいの時に使用すると底冷えを全く感じない。厳冬期はもちろん、初冬や残雪期の登山で使用すると感動します。
まとめ
厳冬期テント泊で使っているエアーマットのご紹介でした。サーマレスト・ニーモ ・シートゥーサミットと悩ましいですが、とにかくR値が大きくて底冷えを軽減できてなるべく軽いスリーピングマットを探している方には、サーマレストの「ネオエアーXサーモ」がとてもおすすめできます。
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