山岳写真のはじめ方:登山で写真を撮るための手順と気を付けるべきポイント

登山をしながら写真を撮りたい派、写真を撮るために山に登る派、どちらの方もいらっしゃると思いますが、山で写真を撮るのは本当に楽しいものです。

特に山自体の写真を撮ることにフォーカスした山岳写真に魅力を感じています。

山には絶景が広がっています。

私もまだまだ山岳写真を始めたばかりではありますが、日本全国色々な山に登り写真を撮ってきました。

これまでの経験から山岳写真の撮影ワークフローや山で写真を撮ることのリスクを併せてご説明します。

これから山で写真を撮りたいと考えている方の一助になれば幸いです。

目次

【準備1】行きたい山域の決定と撮りたい山岳風景のイメージ

兎にも角にも、登りたい・撮影したい山域を決めます。

あまり山の情報に詳しくないという方は、登山ブログを読み漁ってみたり、ヤマレコなどから調べてみるといいですね。

山岳写真集をいくつか購入してみるというのもおすすめです。

次にどのような写真を撮りたいのかイメージするわけですが、一度行ったことのある山か否かでアプローチが変わります。

今はGoogle Earthを活用してデジタルにロケハンができる便利な時代ですので、事前によく調べてみることが大切。

北アルプスのように大きな山域であれば、複数の山をピックアップしてもいいでしょう。

複数の山を候補に挙げる理由は、行きたいと思っても、時期によっては、登山レベルによっては行けないこともあり得るからです。

【準備2】登山の難易度を徹底調査

行きたい山が複数決まったら、自分に登れる山なのか、ルートがあるのか調べてみます。

山岳写真で重要なことに、そもそも行きたい山域へ機材を運びながら到達しなければなりません。

その意味で、登山レベルというのはすごく大事になってきます。

これを無視してしまうと撮影云々の前に怪我をしたり遭難をしたりとリスクが大きくなるからです。

 

 

【準備3】撮影場所の考察と選定

登りたい山域、アタックしたい山が決まったとして、大まかな登山計画も見えてきました。

次に決めたいのは、撮りたい山岳風景をどの場所から、どういった方角から撮るかということです。

ターゲットの山を狙う場合、東西南北どこから撮影するかによって見え方はガラリと変わってきます。

山によってはある角度からの風景が圧倒的に有名だったり、撮影しやすい場合があります。たとえば、有名な剱岳や穂高岳などです。

方角だけでなく、撮影場所が山頂直下なのか、少し下った中継地点か、あるいは隣の山か。

具体的なポイントの情報を集め、良さそうなポイントを考えます。

Google Earthは地形までかなり詳しく再現できているので、事前のロケハンをおすすめします。

山は簡単に撮りに行けないからこそ面白いものですが、成功の確度を事前に高めておくことに越したことはありません。

【準備4】登山計画の確定と撮影時間帯の検討

山岳写真に彩を与える朝焼けと夕焼け。山が赤く染まる景色は圧巻です。

山岳写真を目的に入山する場合は朝夕の時間帯は外せません。

何時に自宅を出て、何時に幕営地について、何時に撮影ポイントについて・・・と詳細を確認していきます。

「ご来光の時間が〇:〇〇だから、幕営地を〇:〇〇に出発して、写真を撮ろう。その後、〇:〇〇に着いて、幕営地に戻る…と。」

地図をしっかり読み込み、コースタイムを吟味して、撮影ポイントに遅れることなく到達できるよう気を付けます。事前準備を徹底することが、安全な登山にもつながるので極めて重要です。

登山計画とご来光/日の入りの撮影場所を事前にシミュレーションしておきましょう。

日の出と日の入りの時間は要事前確認

山に入ると電波が無いことが多いです。

ご来光と日の入りの時間が何時なのか、月齢や暦はどうか、事前に確認してメモしておきましょう。

【準備5】撮影に必要な機材の検討

撮影ポイントから被写体までの距離を地図から考え、必要なレンズを持って行きましょう。

そもそも論になりますが、撮影機材の選定以上に重要な事は、撮影機材を運ぶ体力があること。

まずは撮影機材を運びながら簡単な山に登り、自分の実力を確かめることは必須のステップアップです。

山岳写真に必要なカメラとレンズ

広角・標準・望遠すべてを持って行くことが難しい場合もあります。

むろん、全て持って行くのがベストですが、相当重くなります。

重要なのは撮りたいイメージに必要なレンズを忘れないこと。こればかりは一度行ってみないとわからないことも多いものですが、地図やGoogle Earthでのロケハンから必要なレンズや焦点距離は経験的に理解できるようになっていきます。

【準備6】登山日の天気チェック

いよいよ登山直前。ここで重要なのは登山当日の天気です。

大家の白籏先生などは「士気が下がるから天気など確認しない」とおっしゃっていますが、安全登山のためにも天気はよく確認しましょう。

ガスに包まれると何も撮れませんので、雨予報の時は出発しないのが無難です。とはいえ、ガスが晴れた直後や天気が崩れる前には朝焼けと夕焼けが劇的な表情を見せることが多く、晴ればかり狙ってもマンネリになりがち。

荒天をどうやり過ごすか、撮影時の天候をどう持ってくるか、山岳写真で一番大切な天気の予測には訓練が求められます。

【撮影1】ロケハンと撮影イメージの微調整

いよいよ登山当日、登山口から撮影場所へ到着しました。まず着いたらしたいことが現地でのロケハンです。

Google Earthでロケハンしたとしても現地にいかなければわからない情報はたくさんあります。

そのため、少し早めに撮影場所に到着し、事前に想定していた撮影イメージと一致しているかチェックします。

他に良さそうなポイントがあれば、現地で調整して変更することもあります。

【撮影2】被写体の多角的な撮影

登山の末に、苦労の末に、撮影ポイントで山の写真を撮るのは本当に楽しいもの。

いつも夢中でシャッターを切っています。

しかし、後で後悔しないためにも、なるべく被写体を多角的に撮影しておきましょう。

山の角度・遠近感・被写界深度・前傾など、現地での感覚と後で振り返った時の感覚が異なることもあり、大きなPCディスプレイとカメラの小さなディスプレイでは印象が異なることも多々あります。

ご来光や夕景の場合は撮影できるベストな時間が限られていますので、可能な限りベストなアングルを事前に決めておきたいですね。

【撮影3】撮った写真の振り返り

その場ではよく撮れたと思っていたのに家で見たら「もっとこうしておけばよかった!」という後悔をいつもしていますが、振り返りはやはり大切です。

同じ場所に何度も足を運ぶことが多い風景写真。

写真は足で稼ぐなんていいますが、振り返り&実践を繰り返すことで審美眼やスキルを上げていきたい。

簡単に見に行けない景色だからこそ、一回の成功確率を高めたい。

山岳写真Q&A

普通の登山と何が違うの?

登山では、計画したルートを歩いて山頂に到達し、無事に下山することが目的だと思います。

一方で、写真を意識した登山、特に写真を撮るために登っている場合は理想とする写真を撮ることが目的です。

必ずしもピークハントするわけでもなく、必ずしも有名な山に登ることが目的ではありません。「写真」の比重をどれくらい置くかによってスタイルは変わってくるはずです。その比重が登山から写真に傾くほど、例えば多くの機材を運ぶかもしれません。同じ山に何度も何度も登るかもしれません。

登山の目的が山を歩き写真を撮ることであるならば、登山に加えて写真撮影の分、普段よりやっていることが増えるので、通常の登山よりリスクが上がると考えています。

写真など撮らず、目で見て記憶に焼き付けた方がいいのでは?

それも本当にアリだと思います。写真を撮ろうと思うと、どうしても景色を見ることに100%集中することはできません。その場の臨場感を余すことなく感じたいのであれば、写真を撮らず記憶に焼き付けるというのも大いにアリです。

しかし私は、山の写真を撮るのが好きなんです、あの圧倒的な迫力を、写真に収めることが何より楽しいんです。だからこそ、どんな苦労をしてでも山の中で写真を撮りたいと思うんです。

これから山岳写真を始める場合、まず何が必要?

これから登山を始める場合は、まず登山に必要な装備一式。山岳写真は基本的に日帰りではなく山で泊まることが前提だと思っています。その為に、テント泊装備、必要なウェアが何より大事です。

その上で、写真を撮るという意味で、一眼レフ/ミラーレスと好みのレンズ、さらには三脚とレリーズが必要です。

重たい撮影機材を運ぶのは登山のリスクを高めるのでは?

間違いのない事実です。登山では、荷物は軽い方がいいに決まっています。だからこそ、山の中で写真を撮ることに重きを置くのであれば、登山の経験をしっかりして、かつ重たい機材を運べるだけの体力が必要です。

リスクに打ち勝ちながら、登山計画を遂行できる高い計画能力と自分自身のマネジメントが必要だと思っています。

機材はどれくらい軽くすべき?

2泊や3泊の縦走登山では、登山装備だけでかなり重たくなります。水が採れない山では特にです。そんな時は最低限、三脚+カメラボディ+標準レンズ(+広角レンズ)かなと思います。

撮影スポットが被写体から離れている場合には70mm以上のレンズが欲しいですが、基本的には上記装備でもかなりカバーできるはずです。

山の天候で撮影機材が壊れることはない?

雨の時にカメラやレンズを野ざらしにすることはないでしょう。ガスに包まれたり、霧雨の時が一番怖いです。カメラ内部が結露してしまうと写真が全く撮れませんので、湿度が高い時や、雪山登山でテントからカメラを出し入れ数時などは特に気を遣う必要があります。

山の天気はどうやって知ったらいい?

自身で勉強することはとても重要です。気圧配置から山での天気、撮影に適した天候をある程度推測することは素人でも可能です。

こちらの書籍は幅広くかつ深く山岳気象について書かれているのでおすすめ。天気予報で言えば月額数百円で利用できるヤマテンは登山家から厚い信頼を得ています。山岳写真やるなら必須の天気予報だと思います。

山岳写真にお勧めの機材ってあるの?

今はコンデジも性能がとてつもなく上がっていますが、しっかり写真を始めるなら今後を見据えて一眼レフかミラーレスがおすすめです。

また、今の時代の流れ、今後のカメラやレンズの時流を考えれば、新調するのであればミラーレスカメラがいいと思います。

しかし一方で、山岳写真で何より重要なのは、感動の瞬間に出会うことができるか、その景色をきちんと写真に収めることができるかどうか。もしすでに一眼レフやミラーレスを持っているのであれば、まずはそのカメラから始めることで全く問題ないと思います。

山岳写真で一番大切なこと

体力をつけておくことです。とにかく、体力です。山を歩き切る体力が無ければ山岳写真はできません。

重たい撮影機材を運ぶ必要がある山の写真では特にです。どれだけ絶景が広がっていても、まずはそこに辿り着けなければ話になりません。頻繁に山を歩くこと、山にいない時も筋トレやランニングを欠かさないこと。

体のメンテナンスが山岳写真では本当に重要です。

素敵な山岳写真ってなんだろう?

もし自分が撮った写真をプリントしたり、写真集にしたらと想像してみてください。ディスプレイを越えて素敵な写真だと思えるということは、やはり素敵な山岳写真だと思います。

山岳写真の主役は山であると考えています。山の存在感、空気感、その場の臨場感が伝わる写真こそ素敵な山岳写真ではないでしょうか。

写真の中で「山」をどれくらい大きく写すかによって印象が異なります。小さくして周囲の景色を入れるほど、主題がややボケるので注意が必要です。

スマホでよくないですか?

スマホでも割ときれいな写真が撮れる時代になりましたが、あくまでスマホで見る前提の写真です。

PCやプリントしたら見れたものではありません。

特に山岳写真は朝や夕方撮ることも多く、この時間帯にスマホで一眼レフやミラーレスのような写真を撮ることは現状不可能です。

まとめ

山で写真を撮るという目的があると、登山に一層の深みや楽しみが加わると感じています。

無心で山を登るのも楽しいものですが、目的を持った登山もやりがいがあります。

一歩間違えると大きなリスクに繋がる山岳写真ですが、山の懐は広く、麓から撮る山岳写真もありますから、自身の体力はスキルに併せた撮影スタイルで楽しんでいきましょう。

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