山は人生を豊かにしてくれる、生きる意味を与えてくれる、かけがえのない存在。大げさではなく登山が趣味の人にとって山はそれほどまでに偉大な存在です。
私の場合は登山と山岳写真が山との付き合い方ですが、山の楽しみ方は人それぞれ。
どんな方法であれ、山で過ごす時間は素晴らしいもの。
山と向き合うことができる趣味としての「登山・山岳写真」を全力でおすすめしたいところですが、山を趣味にするということは魅力的な一方で、おすすめしにくい側面も存在します。
今回はあえて登山や山岳写真を趣味にしてはいけない理由と題し、山を趣味にすることで生まれる大変な側面を紹介したいと思います。そんな側面を知った上で、登山や山岳写真にチャレンジしてくれる人が増えてくれたら良いなと思っております。
1. 怪我・遭難・死亡のリスクが存在する。
毎年・毎月、登山にまつわる悲しいニュースが聞こえるほどに、登山というのは怪我や死亡のリスクが高い趣味です。アウトドア活動全般に言えることではありますが、中でも登山における怪我や死亡リスクの高さは折り紙付き。
必ずしも初心者のリスクが高いわけではなく、登山経験が豊富なベテランでも事故に遭うのが厄介なところ。
特に事故が起こりやすいケースとして・・・
- 初心者で登山を始めたばかりなのにも関わらず…
- 年齢を重ねて体力が低下しているにも関わらず…
- 登山から遠ざかっていた期間が長いにも関わらず復帰直後に…
といった具合にで、身の丈にあっていない登山は怪我・遭難・死亡のリスクを高めます。
登山を趣味にする上で覚悟しなければならないのは、どんなに注意をしても事故を100%完全に防ぐ術はないという事。山でのリスクはゼロにならないことに留意すべきでしょう。山での事故をゼロにするには山に行かないという選択肢しかあり得ません。
通常のトレッキングだけでなく、クライミングや山岳写真、トレイルランニングなどを趣味にしたい場合は尚更ですね。
2. 金銭的な負担が大きい。
住んでいる地域や登山スタイルにより差が生じますが、いずれにせよ登山というのはお金がかかる趣味です。
東京や神奈川などの都心部から登山のメッカである長野県まで移動すれば、それだけで往復2万円近くかかるなんてよくある事。ことさらお金がかかるのが泊まりがけの登山。前泊の宿代、山小屋の宿泊代や幕営代がかかります。車で移動する場合は高速代とガソリン代も馬鹿になりません。
これから登山をゼロから始めたいという人は、登山装備を一式揃えるだけでも大変です。
計算したことはありませんが、これまで登山に費やしてきたお金を合計したらとんでもない額になっているでしょう。
登山の魅力に取り憑かれたら最後。夏山に留まらず冬山へも挑戦したくなるもの。雪山登山というのは夏山登山とは異なる装備が必要なのでさらにお金がかかります。しかも数年使えば交換が必要な消耗品ばかりです。
人生を楽しむために稼いだお金ですから躊躇なく使えばいいと思うのですが、結婚している場合は好き勝手お金を使えないですよね。「またそんなもの買ったの?」という質問を上手に躱すスキルも大切です。
登山を趣味にする場合、継続的にお金がかかることをぜひ知っておいてください。具体的にどれくらいかかったのか、いつか算出してブログの記事でご紹介したいと思っています。
3. 長距離移動がしんどい。
登山を楽しむということは、自宅から登山口までを移動するという事でもあります。たいていの人にとって、登山口までの移動時間は数時間に及びます。慣れるとはいえ、かなりしんどいです。
私の場合、最も利用している登山口である上高地までの移動時間は、自宅(横浜)から6時間〜7時間でしょうか。
初めの頃は長時間の移動も新鮮で楽しめるものですが、登山という趣味に慣れるに従い、自宅と登山口までの往復移動が嫌になることもあります。
山に行きたい気持ちはあるのに、登山口まで移動するのが億劫で行動できない・・・私はそんな時期があり、1年ほど登山を休んでいたことがありました。
山というのは概して「山奥」にあるわけですので、登山を楽しむということはイコール、登山口までの移動を繰り返すということです。
長い時間かけて登山口まで辿り着き、苦労して山頂まで登ってもガスで何も見えないかもしれません。それでも下山して自宅まで長い時間かけて戻らないといけないのです。
これは登山を趣味にしたいと考えるときに知っておいた方がいいと思います。自宅でできる趣味とは一線を画す苦労があります。金はかかるは時間はかかるは・・・それだけ聞くと「何がいいんだ?」と思われてしまいそうですが、それでもまた山に行きたくなる、そんな中毒性にも似た魅力が山にはあるんですけどね。
4. 休日の天気が最優先になる。
登山というのは、独身で恋人のいない方にこそ最適な趣味なんです。
それはなぜか?
登山というのは何よりも休日の天気が大切だから。週に2日ある固定休、その2日間が晴れるかどうかは直前まで分かりません。登山が大好きなあなたはその2日間の天気が何より気になるようになります。
登山にハマればハマるほど、休日の天気が気になって仕方がない。この病にも似た状態は進行すると「恋人やパートナーとのスケジュール」より「登山予定日の天気」を優先したくなってしまうのです。
だってそうでしょう?
恋人とのデートは晴れていなくても構いませんよね。いつだって調整できるでしょう?ドタキャンしたって埋め合わせができるじゃないですか。でも登山は天気がいい時に行きたいでしょう?だから登山予定日はいつだって空けておきたい。それって当然でしょ?
・・・そう思ったあなた、あなたは山を愛してしまったのですね。
結婚していても同様で、土日休みの人は土日の天気が気になって仕方がない。気がつけばあなたは1日の内に何回も何回も天気予報と睨めっこしています。終いには奥さんや旦那さんから「こいつは山にばかり行っている」と思われてしまうのです。それは度が過ぎれば夫婦間の不和に繋がるかもしれません。
登山を本格的な趣味にすると、登山予定日の天気が最優先事項になることは珍しくありません。
だからこそ、パートナーへの配慮が大切になります。山も大事だけど、人間関係だって大事です。
話が少し逸れましたが、独身で恋人がいない間に思いっきり登山を楽しんでおくことは重要だと思うんです。
これから登山を趣味にしたいという方は、登山には中毒性があることをぜひ知っておいてください。また、既婚者の方や恋人がいる場合は休みの日のスケジューリングに苦労します。パートナーと予定が入っている日に限っていい天気で、暇なときに限って雨だったりするものです。
結婚を考えている相手が登山中毒者だった場合、月に何回くらい山に行きたいのか事前に確認しておいた方がいいかもしれませんよ?(笑)
5. 山岳写真は超マイナージャンルである。
最後に山岳写真を趣味にすべきでない理由について。
山岳写真というのは日本独特のジャンルだと言われています。
日本は言わずと知れた山岳大国。昔から日本人の心にある風景でした。日本の山には明確な四季があり、移りゆく山の表情は美しいもの。日本人は山を崇拝し、その美しい風景に魅力を感じてきたわけですね。
それは風景写真のジャンルの中で山岳写真として一つのカテゴリーに昇華していきました。
ではなぜ山岳写真がマイナーなジャンルかと言えば、山岳写真を撮るには基本的な登山ができることが必要だからです。上で述べたようなリスクもあり、山で写真を撮るという行為自体が門戸を狭めているんです。
風景写真全般を撮るカメラマンと比べて、山岳写真を専門にしているカメラマンは圧倒的に少数です。
昭和の時代には盛んだった山岳写真ですが、今では専門とするカメラマンは急速に減ってしまったようです(あるいは山岳写真では食べていけなくなったと言えるのかもしれませんね)。
今も現役で活躍している山岳プロカメラマンもいますが、プロカメラマン業界の中では絶滅危惧種ではないでしょうか。山岳写真集を出版するような先生はほとんどいなくなってしまったようです(今の時代に、山の写真集を出したところで売り上げはたかが知れているでしょう)。
翻って、マイナーなジャンルであるということは、ライバルが少ないということでもあります(趣味で嗜む上ではあまり関係がないですが)。ライバルが少ないのは結構なことですが、情報も少なければ世間的な盛り上げりもイマイチ。
例えば、山岳写真を趣味にしたいと思っても、どこで情報を得たらいいのか今一つわからないですよね。目標とするプロカメラマンは誰なのか?山岳写真を始めるのに必要な心得は?機材は?ステップアップは?
全日本山岳写真協会や日本山岳写真協会などの協会はありますが、会員の年齢層はかなり高齢のようです。若い世代は育っているのでしょうか?ちなみに、山岳写真に限らず山岳会でも若手や後継者不足は深刻なようです。
マイナーなジャンルであることは趣味にする上でそれほど問題にはなりませんが、山に登って写真を撮るという点でお金はかかるしリスクもあります。そこまでして山の写真を撮りたいのかどうか、自分と向き合ってみると良いかもしれません。
まとめ
登山あるいは山に関連する趣味には常にリスクがつきものですが、それ以上に山から得られるもの、学ぶべきことはたくさんあります。おそらく、登山を趣味にして「後悔した」なんていう声はほとんど聞かれないと思います。
金銭的負担や天気との兼ね合いなど難しい面は確かにあるのですが、それ以上に山は素晴らしいものです。登山に興味がある方は、案ずるより産むが易しと言うように、まずは山の中に一歩踏み込んでみてほしいと思います。
四方八方を山に囲まれた日本。この国に生まれたからには登山を楽しまなければ損だというものです。何か趣味を作りたいけれど思い当たるものがない、そんな人はぜひ近場の山に目を向けてみてはいかがでしょうか。
お気軽にコメントください