中央アルプス縦走のコース概要、難易度や宿泊場所(山小屋・テント場)の情報をまとめます。
木曽駒ヶ岳から越百山までの主脈は、素晴らしい稜線歩きと絶景が楽しめるおすすめのコース。気を付けたいポイントなどを踏まえ、ご紹介していきます。
中央アルプス縦走登山の概要
中央アルプス主脈は、木曽山脈の中でも木曽駒ヶ岳から越百山までの区間を指すことが多いです。
主峰の木曽駒ヶ岳がある山域北部と比べて、空木岳や南駒ヶ岳がある南部はアクセスが悪いこともあり人の数がぐっと減ります。静かな山行を楽しみたい人には南部がおすすめ。日本アルプスの中では比較的コンパクトな中央アルプス。2泊3日で縦走するのが一般的です。
1泊2日でも歩けますがかなりの健脚者向け。その場合は檜尾避難小屋か木曽殿山荘で1泊するのがおすすめ。ただし、下山は遅い時間になる可能性が高いです。また、木曽殿山荘は事前予約必須。色々と古いタイプの山小屋ですので、あまり遅い時間に到着しない方がいいかもしれません。
中央アルプス縦走の特徴
中央アルプスを縦走する場合(木曽駒ヶ岳~越百山)の特徴をざっくりと挙げてみます。
- 一部区間を除いてアップダウンが何度も連続する
- 木曽駒ヶ岳から越百山までの縦走はかなりのロングコース
- 稜線上には水場がない
- 木曽駒ヶ岳と檜尾避難小屋以外にテント場はない
- 有人の山小屋は檜尾小屋、木曽殿山荘、駒峰ヒュッテ、越百小屋と意外と多い
- 稜線はだいたいスマホの電波利用可能(下界の街が近いので)
携帯の電波が入ったり避難小屋が充実していたり、縦走する環境としては整っている方です。水場が少ないことだけ要注意です。
檜尾小屋がリニューアルオープン
檜尾避難小屋は2022年にリニューアルして「檜尾小屋」となりました。これまで避難小屋だけでしたが、テント場もオープン。ただし、北アルプスのように充実した山小屋ではないので、売店で売っているのは水・カップ麺・ジュースなど一部商品です。詳細はHPを確認しましょう。
中央アルプス縦走モデルコース
歩く範囲によってモデルコースは変わってくるため、いくつかのパターンに分けてご紹介していきます。
「このパターンじゃなきゃ縦走できない」と言うことではなく、あくまで一例です。どこで泊まろう?どこからどこまで歩こう?と、お悩みの方は参考にしていただけたらと思います。
1. 全山縦走(木曽駒ヶ岳 – 空木岳 – 越百山)
おすすめは越百山から木曽駒ヶ岳へと北上するルート。越百山を下山ポイントに選ぶと、最後の最後でバスが無い、タクシーを呼ぶにも倉本駅まで歩くしんどい最後となります。
何より縦走のゴールは最高峰の木曽駒ヶ岳の方が華やかでいいと思います。下山後も移動が楽ですしね。ロープウェイから下山すれば温泉に入ったりご飯を食べたり、下山後の楽しみも豊富です。
全山縦走ではマイカーが使えません。タクシーを使う場合の注意点ですが、縦走起点の1つである倉本駅(上の写真)はかなりの田舎。タクシーはまずいません。この辺りだと上松駅が比較的大きな駅でタクシー利用可能です。
山小屋を利用
- 倉本駅 or 伊奈川ダムまでタクシー
- 越百小屋(泊)
- 越百小屋
- 越百山
- 南駒ヶ岳
- 空木岳
- 木曽殿山荘(泊)
- 木曽殿山荘
- 檜尾岳
- 宝剣岳
- 木曽駒ヶ岳
- 千畳敷(下山)
木曽殿山荘ではなく駒峰ヒュッテを利用すると食事提供がないので要注意です(カップラーメンとアルファ米は売ってるみたい)。
避難小屋を利用
- 伊奈川ダム(タクシー利用)
- 越百山
- 南駒ヶ岳
- 摺鉢窪避難小屋(泊)
- 摺鉢窪避難小屋
- 空木岳
- 檜尾小屋
- 檜尾小屋
- 宝剣岳
- 木曽駒ヶ岳
- 千畳敷(下山)
避難小屋の場合、伊奈川ダムから摺鉢窪避難小屋まで距離があリます。タクシーを利用してスタートは伊奈川ダムとした方が無難でしょう。倉本駅からその日のうちに摺鉢窪避難小屋まで行くのは常人には無理です(コースタイム15時間くらいな上に悪路)。
タクシーを使わないで全山縦走
- 倉本駅
- 金沢土場避難小屋(泊)
- 金沢土場避難小屋
- 越百山
- 南駒ヶ岳
- 摺鉢窪避難小屋(泊)
- 摺鉢窪避難小屋
- 空木岳
- 檜尾小屋(泊)
- 檜尾小屋
- 宝剣岳
- 木曽駒ヶ岳
- 千畳敷
3日目に摺鉢窪避難小屋から木曽駒ヶ岳まで行って下山することも不可能ではないですが、早朝から行動して下山もロープウェイギリギリになると思いますので、計画は慎重に。
また、初日に金沢土場避難小屋を利用する場合、倒壊と水漏れに注意してください。
外見はこんな感じで、もうすぐ自然に還りそうな装いです。もののけ姫レベル。泊まる人を選びます。初心者の方は使用を避けた方が無難でしょう。
2. マイカーを使って周回縦走(越百山 – 南駒ヶ岳 – 空木岳)
木曽駒ヶ岳と宝剣岳は別の機会に譲り、空木岳を中心とした周回登山はマイカー派におすすめです。
- 伊奈川ダム(マイカー)
- 越百山
- 南駒ヶ岳
- 摺鉢窪避難小屋(泊)
- 摺鉢窪避難小屋
- 空木岳
- 金沢土場
- 伊奈川ダム(下山)
1泊2日でテントも必要なく、計画がしやすい工程かと思います。他にも駒峰ヒュッテを使ったり空木平避難小屋を利用することも可能です。
3. 越百山以外を縦走(木曽駒ヶ岳 – 空木岳 – 南駒ヶ岳)
中央アルプスの縦走を考える上で越百山は厄介な存在。多くの峰を越す必要があるからこの名前がついたとの説があるらしい・・・確かに本当にそんな場所に位置しています。300名山なので登っておきたいという方も多そうですが、もし登らないのでよければ、縦走計画を格段に立てやすくなります。
- 千畳敷
- 木曽駒ヶ岳
- 檜尾小屋(泊)
- 檜尾小屋
- 空木岳
- 南駒ヶ岳(ピストン)
- 空木岳
- 駒峰ヒュッテ or 空木平避難小屋(泊)
- 駒峰ヒュッテ or 空木平避難小屋
- 菅ノ台バスセンター(下山)
倉本 – 木曽駒ヶ岳 各登山道のポイント
木曽駒ヶ岳 – 宝剣岳
- 登山者が多いので初心者の方も安心して登れます。
- 木曽駒~宝剣岳の登りは鎖場がある岩場ですが、それほど難しくはなく、慎重に進めば誰でも挑戦可能。
宝剣岳 – 檜尾岳
- 宝剣岳の南側はガクッと切れ落ちた崖。よく整備されていますが、落ちたら大事故になりますので、慎重に進みましょう。越百山方面から縦走する場合は登りになりますので、それほど心配しなくても大丈夫。木曽駒から縦走して下る場合は要注意です。
- 極楽平からしばらく美しい稜線歩きとなります。難所はなし。
檜尾岳 – 空木岳
- ハイマツや草がうるさい道が多い。狭い道も多く滑りやすい。分かりにくい道もあり、天気が悪く視界がないときは道迷いに注意。この辺りは遭難が多発している場所ですので、悪天候時は無理しないこと。
- 檜尾岳から空木岳までは全体的にタフな工程。
- 東川岳から空木岳にかけて急な登り返し。頑張りどころ。
空木岳 – 越百山
- 空木岳から赤薙岳まではザレて滑りやすい斜面。スリップ注意。
- 南駒ヶ岳から越百山までは比較的歩きやすい。花崗岩を眺めながら気持ちのいい稜線歩き。
越百山 – 伊奈川ダム – 倉本駅
- 越百山からの遠見尾根は視界のない樹林帯。修行です。
- 金沢土場 – 倉本駅はトレース薄く、道迷いに要注意。鬱蒼とした森をひたすら歩く。傾斜もきつく、樹林帯としての難易度はかなり高め。
- 金沢土場から伊奈川ダムまでは整備された砂利道、傾斜もほとんどなく快適。
中央アルプスの避難小屋と水場事情
縦走で鍵となる避難小屋と水場についてご紹介していきます。
- 摺鉢窪避難小屋
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摺鉢窪避難小屋(すりばちくぼ)は赤薙岳からガレた急斜面を降ります。小さな岩がゴロゴロしているので捻挫しないように注意してください。背丈ほどの草が鬱蒼としているので遭難にも要注意。タンクの中に雨水を貯めてくれており、使えるようになってます。要煮沸。トイレもあります。
- 檜尾小屋
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檜尾小屋(ひのきお)は檜尾岳からすぐの便利な山小屋。2022年にリニューアルして避難小屋から有人の山小屋に変わりました。また、待望されていたテント場も併設。テントを利用した中央アルプス縦走が可能となりましたね。
中央アルプス檜尾小屋 | 檜尾小屋 | 檜尾岳 | 中央アルプス | 駒ヶ根市 中央アルプス檜尾岳 中央アルプス檜尾小屋 2022年7月リニューアルオープン 営業(有人)小屋としてスタートします - 空木平避難小屋
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夏山では土日のみ管理人さんがいるそうです(ビールとか売ってるらしい)。避難小屋と山小屋の中間みたいな立ち位置でしょうか。空木岳からは沢筋を歩いて30分程度。沢筋なので水が取れます。山と高原地図に水場のマークが付いていないのが気になりますが、私は普通に使ってました。内部は広く、20人くらいは収容可能。トイレあり。
- 木曽仲義の力水
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木曽殿山荘から15分くらいの所に水場があります。中央アルプス縦走では要となる水場なので、忘れずに補充しましょう。越百山の樹林帯や空木岳に至る池山尾根には水場がありますので、稜線に出る前の補充をして、次は木曽義仲の力水で2回目の補充をすることがポイント。
中央アルプスの気候
中央アルプスの稜線は2700~2800mの高所です。11月から5月は完全な雪山となります。ゴールデンウィークもまだ雪が豊富に残っていてアイゼン・ピッケルが必要な時期。
12月から3月の厳冬期は非常に厳しいコンディションとなります。稜線の縦走は上級者のみ挑戦可能な領域。この時期の安易な入山は危険です。
夏山では9月に入ると朝晩はかなり冷えますので、この時期に縦走を予定している方はしっかりとした防寒具が必要となります。
初冬・厳冬・残雪と雪山シーズン。アイゼンなしで歩けるようになるのは5月後半からだと思います。年により差がありますので、最新情報を必ず確認してください。厳冬期の千畳敷は雪崩のリスクが高いので要注意。
山域は異なりますが、各時期の装備についてはこちらの北アルプスの記事(北アルプス登山 春夏秋冬:各時期の装備と注意点)をご覧ください。北アルプスよりは若干マイルドな気候の中央アルプスですが、それでもほぼ同じことが言えますので、参考にしていただいて問題ありません。
中央アルプスの夏山天気
中央アルプスは日本海側と太平洋側のどちらの影響も受ける微妙な場所に位置しています。夏山では木曽駒ヶ岳がある山域北部(日本海側)の方が晴れていることが多い。空木岳のある山域南部は湿った空気の影響を受けやすく、ガスが湧きやすいです。特に越百山から空木岳の稜線は日中視界がないことが多いので、日の出から行動することが大切です。
日本百名山の登頂を目指している方も多いと思います。中央アルプスには木曽駒ヶ岳と空木岳が選ばれているわけですが、夏山の空木岳は非常にガスがかかりやすい場所に位置しており、日が登ってからガスになるまでの時間がかなり短いです。景色が見たいのであれば、朝の8時ごろまでに登頂するのがおすすめ。
中央アルプス縦走まとめ
- 全山縦走、周回縦走、一部縦走などバリエーション豊富。
- 全山縦走はアクセスが悪い南部からスタートするのがおすすめ。
- 水場がほとんどないので、飲み水の計画を慎重に。
- 全体的にアップダウンが多く、健脚者向き。初心者向きではない。
- 稜線の起伏、花崗岩、見下ろす街並みが美しい。景色は最高。
- 9月になると朝晩一気に寒くなる。防寒具を忘れずに。
- 10月中旬以降は降雪の可能性が一気に高まる。
- 積雪期の縦走は十分な雪山登山の経験が必要。
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コメント一覧 (5件)
初めまして清宮さんのブログを見させていただき、山を初めてまだ二年だと言うのに、それもテント泊で縦走とは驚きました。私は山を初めて、十五年ですが正直驚きました。私の登山それは、最初五年は、山小屋泊まりでした。涸沢
ヒュッテで畳一畳に三人寝かされて嫌になりました。それからテント泊になり、家が八王子ということもあって、奥多摩、丹沢、又、夏には北アルプスに登っています。今年の秋には、前から行きたかった欅平から裏剱、黒部峡谷、三泊四日で縦走してきました。これからも楽しい山ログ期待しています。
kiyomiyaさんこれからもお付き合いのほどよろしくお願いします。
コメントありがとうございます(*´ω`*)
ご自宅が八王子の方ですと登山しやすくて羨ましいです。山小屋は泊まったことがないのですが、話を聞く限り本当に大変そうだなぁと汗
重いですがテントは担ぐ価値がありますよね。
裏劔はぜひ来年行きたいなと思っていて、またブログでご報告できるかと思います!こちらこそ、これからもよろしくお願いします!
中央アルプス(木曽山脈)の範囲を南北の広義の意味を最大限含めれば、中央アルプスの全山縦走というのは、ずっと稜線をたどっていけば、最南端の治部坂峠→大川入山~恵那山~神坂峠~清内路峠~太平峠~安平路山~越百山~木曽駒ヶ岳~将棋頭山~権兵衛峠~経ヶ岳~坊主岳~牛首峠~雷鳴山 or 霧訪山~大芝山→塩尻
という超ロングなものになるのではないでしょうか?