厳冬期の西穂高岳(山頂 2909m)を登ってきました。ロープウェイを利用することでアクセスしやすく、厳冬期にも関わらず北アルプスの中では最も登りやすいピークの一つです。とはいえ、ロープウェイ終点から山頂まで距離がありますし、標高は2909mと高いです。
登り甲斐はもちろんのこと、山頂からの景色は360度の大展望でございました。
コースタイム
1日目 |
松本(7:55)→ 平湯(9:33) |
平湯(9:40)→ 新穂高ロープウェイ(10:16) |
新穂高ロープウェイ(10:30)→ 西穂高口(11:00) |
西穂高口(11:00)→ 西穂山荘(12:00) |
西穂山荘(12:00)→ 西穂独標(13:15) |
独標(13:20)→ ピラミッドピーク(13:50) |
ピラミッドピーク(13:50)→ 西穂高岳(15:30) |
2日目 |
西穂高岳(7:00)→ 西穂山荘(9:00) |
大小いくつかあるピークを登り降りするスピードにより行動時間が大きく前後する可能性があります。多少余裕を持った時間設定をしておくことが重要です。
登山コースのポイント
西穂高岳(山頂)までの道のりはアップダウンが多くあり、痩せた稜線や急峻な登り降り(写真のようなバックステップ含む)が含まれます。特に、山頂直下の降りが最も難しい。
アイゼン歩行とピッケルの使い方に習熟していることは挑戦するための前提条件となります。かつ、厳冬期に歩く場合は、強烈な西風に常に晒されながらの登山となりますので、低温下での行動に慣れている必要もあります。
ロープウェイが使えることで多くの人が歩く場所ですが、独標より先へ進む人はかなり少なくなります。トレースがない場合もあるでしょう。山頂までの難易度で言うと厳冬期赤岳や木曽駒ヶ岳より難しく、まずはこの辺りで経験を積むと良いですね。
とはいえ、私個人としては難しいと感じた箇所はありませんでした。難易度に関する感じ方は、経験により個人差が極めて大きくなります。いろいろな方の記録や感想を参考にすると良いかと思います。
前泊「ホテル飯田屋」
さて、厳冬期西穂高岳(山頂まで)の挑戦スタートです!
西穂高岳は飛騨側(岐阜側:新穂高温泉側)が拠点となるため、公共交通機関でいく場合は松本での前泊をおすすめします。と言いますか、そうしないとまともな工程を組めません(涙)前泊はこれまでホテルエムマツモトを利用してきましたが、松本駅周辺にリーズナブルなビジホがたくさんあることに気づき、今後はビジネスホテルを利用していこうと思っています。
今回は駅近にあるホテル飯田屋さんを利用しました。
ビジホですので当たり前ですが、必要最低限な感じです。とはいえ、お風呂も含め設備はとても清潔感があり、何より駅からかなり近いので登山の前泊におすすめできます。値段も4000円くらいでしたので、カプセルホテルとほとんど変わりません。
松本から平湯へ
松本から新穂高温泉(新穂高ロープウェイ)へ行くには平湯を経由します。この乗り換えはとてもスムーズで、平湯について5分程度で新穂高温泉へのバスが来てくれるのでとても便利。ただし、松本からの始発便が8時近いため、登山利用としてはやや遅い出発となってしまうのが玉にキズ。
11月末に来た時と比較して平湯の積雪がかなり増えていました。やはり12月から1月の積雪は圧巻の量ですね。
今年は全国的に積雪が多く、雪山登山が好きな人には嬉しいですが、日本海側の地域では災害級の積雪として頭痛の種のようです。横浜在住の私はどこか遠い国の話のように聞いていますが、日々の生活と雪山登山とのギャップがたまりません。
前回の登山記録(西穂独標)
新穂高ロープウェイ
11月末に来たときは混雑していたロープウェイ乗り場も今日は空いています。1月などの厳冬期は寒いので観光する人が減るのでしょうか?連休初日などはかなり混むこともあるようなので、登山で利用する人はその分の時間も考慮しておいた方がいいと思います。
登山者は通常の乗車券の他に荷物券の購入も必要となります。
ブルジョワ登山と揶揄されることもある西穂登山ですが、西穂高岳西尾根と言うロープウェイを使わないルートもありますので、興味がある人は歩いてみてはいかがでしょうか?もちろんバリエーションルートですが。
今日は高気圧が頭上にあるため快晴のもとロープウェイで標高を上げていきます。
写真のピークが西穂高岳山頂(2909m)ですが、その左を走っている尾根が西尾根です。新穂高温から歩くとかなりの距離となりそうですね。
西穂口からクライムオン
今日は最初からアイゼンを装着して歩いていこうと思います。と言うのも、トレースが期待できる状況ではアイゼンをつけた方が歩きやすいためです。ラッセルの場合はアイゼンはあってもなくてもあまり関係ありません。
ロープウェイ終点から登山口までの積雪量がハンパじゃなくて、私の背丈を超える高さです。この辺りは観光客用に除雪もしてくれているようですが、大量降雪直後の朝一番だと除雪がされておらず、胸ラッセルになることもあるようです。
純粋に登山を楽しむ場合はそれでも構わないのですが、写真撮影のためのスケジュールを組んでいる身としては是非とも避けたいところ・・・。
まあ、公共交通機関で来る場合にはそもそも朝一番隊にはならないと思いますが、平日や荒天の土日ではラッセルになる可能性も十分考慮しておいた方が良さそうです。
西穂登山口の建物はおとぎの国のような世界観になっていました。積雪やべ・・・。
西穂登山口から西穂山荘まで特に難しい箇所はありません。
山荘が営業していることもあり、万全な大勢と言えるほどのピンクテープが至る所に設置されているため、視界が悪い場合でも道迷いの心配は少ないと思います。一方、この時期は夏道ではなく冬道を歩くようピンクテープが設置されているようですので、その指示から外れないよう気を付けましょう。
西穂山荘〜西穂独標
さて!西穂山荘まであっという間に到着してからは、休憩なしで独標まで進んでいきます。
前回は西穂山荘でラーメンを食べてゆっくりしましたが、今日は西穂山頂から夕景を撮りたいので急いで進みます。
山荘を進んで少しすると前穂が見えてきて、絶景の稜線歩きとなります。
今日は土曜日と言うこともあり、たくさんの方が独標に向けて歩いていました。冬の北アルプスでこれほど多くの人がいるのは年末年始の燕岳とここ西穂独標くらいでしょうね。
独標の登り降りの難易度
こちらは独標の途中から振り返った一枚。独標の登り降りが「死ぬほど怖かった」と言う人もいれば「その辺の道と変わらない」と感じる人もいるでしょう。雪山登山に対する難易度の感じ方は本当に千差万別です。最後は自分自身で歩かなければ判断ができないため、無責任なことはいえません。
私からのアドバイスとしては、アイゼンとピッケルを使いこなすことができれば問題ない・・・と言いたいところですが、人によってはここをバックトラックで降っている方もいるようなので、どちらかといえば高度感に対する恐怖心が重要なのかもしれませんね。
習うより慣れるしかないように思いますが、いずれにせよ少しずつ着実にステップアップすることが本当に重要です。
独標〜ピラミッドピーク
西穂独標(2701m)に到着です!独標から望む穂高はまさに圧巻の景色。穂高は厳しい岩陵と優美な吊り尾根が同居しており、西穂独標からはそのどちらも感じることができるとてもおすすめの場所。
振り返れば乗鞍岳や焼岳も大きく、無理に山頂に行かずとも独標からでも最高の景色を楽しむことが可能です。
独標から先は一気に難易度が高くなるため、アイゼン歩行に不安がある方や雪山初心者の方は挑戦の是非を慎重に判断する必要があります。
独標からの急峻な道を下り、次はピラミッドピークを目指します。
写真で見ると穏やかな天気に見えますが、風速で7~8mはあり実際はかなり寒いです。厳冬期としては極めて穏やかな天候ではありますが、気温マイナス10度・風速7mだと体感温度はマイナス15度にもなりますので、低温環境でも安定して行動できる体力・気力が求められます。
ちなみに、厳冬期で強烈な寒気が来ると稜線の気温マイナス20度・風速20mとなることもあります。
場所によってはかなり細い場所もあります。
こちらは独標を振り返っての一枚。
ピラミッドピークに到着です。左の一番高いところが西穂山頂、右のピークはジャンダル、奥穂の山頂はさらに右奥の真っ白な場所あたりです。
山頂までまだ少し距離がありますが、この分なら問題なく夕方には山頂で写真を撮れそうで一安心。
ピラミッドピーク〜西穂山頂
ピラミッドピークを過ぎてからもいくつかの小ピークのアップダウンを繰り返します。細い箇所も連続するので、しっかりとアイゼンを効かせて慎重に歩いていきます。
今回はトレースがありますが「もしトレースがなかったら?」と想像しながら歩くことも大切。ピラミッドピークを過ぎてからはトラーバース気味に歩く箇所も多く、トレースがない場合は特に慎重な判断が求められます。
今日は稜線で幕営する計画なのでテントを背負って登ってきました。重くて疲れた・・・。
山頂に至るまでに1〜2箇所テントを張れそうなコルがあります。西穂山荘が営業していますので、冬季とはいえ幕営地の選定は慎重に。山荘の方から「丸山などでの幕営はしないよう注意」が出ていますしね。山頂直下まで来ていれば管轄外かなというのが私の判断ですが、そのあたりは自己責任でお願いします。
この時期に西穂〜奥穂を縦走する人は稀ですが、そういった人も適当なコルで幕営すると思うので、スペースがなければ素直に諦めましょう。
さて、テントも無事に設営できたところで西穂山頂へのアタックを開始します。
随所で書かれていることですが、山頂直下のここが最も厳しいですね。かなりの傾斜があるため、登りはいいですが、下りは最大限の注意が必要、下山時、前を向いたまま歩くのは厳しい角度です。
西穂高岳(2909m)
西穂山頂に登頂しました!
振り返ると霞沢岳、乗鞍岳、焼岳と北アルプス最南部の山々が圧巻です。
前を向けば前穂から奥穂、涸沢岳から槍ヶ岳まで360度の大展望。
Youtubeを撮っているうちに日が傾いてきて、飛騨側には安定の雲海が湧いてきました。オレンジ色の雲と笠ヶ岳がたまりません。
笠ヶ岳から穂高の写真を撮りたいのですが、初冬か3月あたりを狙っています。
日本海側の雲が多くて夕焼けは厳しいかと思っていましたが、その雲を抜けたら一気にオレンジ色に焼けてきました。上空の深い青との対比がたまらないですね。
そのあともさらに夕日は赤くなり、北アルプスを真っ赤に染めたのでした。白山方面に沈む夕日が眩しいのなんの。
感動的な夕焼けに出会うことができて寒さも忘れ・・・とはいかず、山頂に1時間半もいたので本当に寒かった。
そのあとは無事にテントまで戻りゆっくりと休んで明日に備えます。
それにしても、厳冬期用のマットをサーマレストのネオエアーXサーモにしてからテント泊がすごく快適になりました。雪山テント泊におけるマットのR値って極めて重要なので、テント泊で寒い思いをしている方はぜひマットを再考すると良いと思います。
西穂山頂〜下山
2日目は高気圧の後ろ面に入ってしまうということで雲が多くなる予報。しかしながら、奇跡的に東の空だけまだ明るく、夜明け前に山肌がうっすらと色づいてきました。
本当にわずかな時間でしたが、最高なご来光の時間を過ごさせてもらいました。
ご来光の後は一気に雲が増え始めてどんよりとした天気に。
さあ、テントを撤収してアップダウンの続く稜線を経て西穂山荘へと戻りましょう。
・
・
・
ひと仕事終えた後のラーメンは最高ですね!
後はまったりロープウェイまで戻り、長い長い帰路につくのみ。
今回の登山で西穂のピークを踏むことができ、穂高界隈のピークとして登ったことがないのは明神岳を残すのみとなりました。これからも安全登山と山岳写真を継続していければと思います。それではまた。
お気軽にコメントください