テント泊登山では装備類が増えるため、どのようにパッキングしたら良いのか悩ましいですね。私はテント泊登山にグレゴリー(GREGORY)バルトロ75を使っていますが、これが非常に使いやすく、多くの装備を快適に運ぶことができています。
私がバルトロ75を使って実際に行っているパッキング方法をご紹介しつつ、テント泊登山のバックパック/ザックとしてのバルトロをレビューしていきます。
バルトロ75のパッキング概略図
写真は、私が各ポケットに「何をどうやって」入れているかを示しています。バルトロには多くのポケットが搭載されており、これをどのように活用するかが一つのポイントになりますね。
ここから、各ポケットの詳細をご説明していきたいと思います。
下気室(スリーピングバッグコンパートメント)
ザック下部のスペース(下気室)は寝袋(シュラフ)を入れる場所として設計されており、大きさもちょう良いですね。ザック下部と言うのは「ザックを地面に降ろすと衝撃が加わる場所」なので、シュラフを入れておくことはザックやその他の荷物を守る事にも繋がります。
下気室に入れている物
シュラフ、ピロー(枕)
バルトロは2気室⇔1気室を変更可能
中に薄い仕切りが入っており、脱着することで「2気室⇔1気室」を変更可能。仕切りを入れておくと荷物がシュラフ側に落ちにくくなり、ザック内の整理整頓に一役買ってくれます。
上気室(メインコンパートメント)
ザックの中心となる上気室、ここには大容量となるテントや食事関係を収納します。シュラフの直ぐ上にテントを入れ、周りのデッドスペースを潰すようにグランドシート、レスキューシート、ペグ、テントポールを突っ込みます。
ザックの収納はスペースを作らないことが重要
ザックで最も大きなスペースとなる上気室には無駄なスペースを作らないことがパッキングのコツです。無駄なスペースはザック内で物が動く原因となり、これはザックを担いだ際、体感重量を増す原因となってしまうからです。
テント関係の上に食事関係(食材、コッヘル、ストーブ、コーヒー等)と、
ウォーターキャリー(プラティパス)に入れた水を詰めます。
(私はただの袋に入れていますが)スタッフバッグなどを使って一つにまとめておくと、ザック内で装備が行方不明にならなくて良いですね。その反面、一つにまとめるとザック内に無駄なスペースが生じやすくなるので、そこは考え次第、好み次第かなと思います。
テント関係の上に食事関係と水を入れた所です。
重たいものは背中側が原則
パッキングでは背中側に重たい物を配置した方がよいとされており、重たい水は背中側に入れておきましょう。
山域によっては水が豊富で、大量の水を常時持ち運ばないという場合もあります。そういう時は取り出しやすい最上部に水を入れる事も多いです。
最後にダウン上下とフリースを最上部に配置します。寒い時期はテント場についてすぐウェアを着込むことが多く、取り出しやすい場所にいれています(ダウン上下は最下部に入れておいてもいいと思います)。フリースは行動中も着たくなる場面があるため、最上部にいれておくのがお勧め(特に晩秋や初冬)。
これで上気室のパッキングが完了しました!
上気室に入れている物
(下から)テント、テント関係、食事関係(食材+コッヘルなど)、フリース、ダウン上下
フロントポケット
次にフロントポケットへ装備を収納していきます。バルトロのフロントポケットは非常に大きく、ここに多くの物を入れる事ができる設計となっています。
フロントポケットへ重たい物を入れ過ぎると、体感重量が増してしまいますが、取り出しやすいポケットの一つであり、最大限活用してやりましょう。
フロントポケットには使用頻度の高い物を入れておきます。具体的にはカメラ整備道具、モバイルバッテリー、ライト関係、ティッシュなど。
ジャンルごとにジップロックで分包すると便利ですよ。
それともう一つ、バルトロに付属されているアタックザックです。これはハイドレーションの水を入れる場所であり、取り外せばアタックザックとして利用できるようになっていて超便利です。
これらをフロントポケットに入れてやります。全部入れるとちょうどいい感じの収納感となりました。
フロントポケットに入れている物
「カメラ整備道具(ブロワー、レンズクリーナー、交換電池)」、「モバイルバッテリー(2個)」、「ヘッドライト、テントライト、交換電池」、「ティッシュ、ウェットティッシュ」、アタックザック。
ヒップベルトポケット(左右1つずつ)
ヒップベルトのポケットは歩きながら取り出せる事を活用しましょう。
バルトロは右側がTPUコーティングされた防水ポケットになっており、スマホを収納できるよう考えられています。超イケてる。私はここに小型のジップロックを入れておくことで、スマホの雨対策をしています。ポケット自体が防水仕様ですが、念のためジップロックに入れた上で収納しています。
他にはレリーズと一眼レフ用のレインスリーブを忍ばせています。一眼レフで写真を撮っている私としてはどちらも「直ぐ」取り出したい、優先順位の高いもので物です。
左側はメッシュのポケットになっていて、ここには入るだけの飴を入れておきます。写真は空ですが、実際は飴玉でパンパン。ここに飴などの行動食を入れておくことで、歩きながらカロリーを摂ることが可能に。
ヒップベルトポケットに入れている物
【防水ポケット】レリーズ、カメラ用レインスリーブ、小型のジップロック(スマホ用)
【メッシュポケット】入る限りの飴玉(スニッカーズやソイジョイも良いですね)
レインスリーブとはカメラ用レインウェアの事です。カメラをバックパックに外付けしているので、レインスリーブをサッと取り出せることが重要。
サイドポケット(左右1個ずつ)
サイドポケット(右)の様子。
バルトロには上部左右にサイドポケットが付いています。ここは角度的にちょっと取り出しにくい場所。収納容積もそれほど大きくなく、補助的な立ち位置のポケットですね。
片方にはザックカバーを入れています。75Lのザックカバーともなるとそれなりに嵩張るので、片方はこれだけ。他の物を入れないことでサッと取り出し、装着できるようにしています。
サイドポケット(左)の様子。
こっちには補助的なアイテム、小物を入れています。使用頻度は低いものの大切なアイテム。そんな感じのものをまとめています。
サイドポケットにいれている物
ザックカバー
医薬品(ロキソニン、パブロン、ストッパ下痢止め、湿布)、絆創膏、テーピング、テーピングを切るためのハサミ、スマホ防水ケース、エマージェンシーコール、カラビナ、安全ピン、紙の地図、コンパス、眼鏡
雨蓋(リッド)
バルトロの雨蓋(あまぶた:リッドとも言う)にはポケットが二つ付いており、仕切が付いた「独立した空間」となっています。一つの大きなポケットではなく、二つに分かれているのが収容性と取り出しやすさを高めており、これが非常に使い勝手がいいんです。
右側には望遠レンズと広角レンズを入れています。一眼レフのレンズが2つ入るのは驚きましたね!雨蓋はザックを降ろしてすぐ取り出せるポケットなので、使用頻度が高い交換レンズをここに入れています。また、雨蓋は地面にぶつかることがないので、繊細なレンズも安心です。
左にはソフトシェル、レインウェア、手袋を入れています。
レインウェアは「最もサッと取り出したい装備」であり、ここに入れておくのが取り出しやすさの観点からも一番でしょう。手袋とソフトシェルも同様です。ちょっと風が強い時、寒い時にすぐ取り出せる事が重要で、そうでなければソフトシェルは持っている意味がありません。
雨蓋に入れている物
望遠レンズ、広角レンズ
レインウェア、ソフトシェル、手袋
バルトロの雨蓋は内側にもポケットが付いています。ただ、ここに物を入れ過ぎると雨蓋が頭でっかちになるので、あまり入れ過ぎない方がいいでしょう。私は財布などの貴重品、あるいは濡れたテントの処理用に大きいゴミ袋などを入れています。予備のジップロックなどの収納にもいい場所ですね。
雨蓋内ポケットに入れている物
財布、大きいゴミ袋2枚(濡れたテントを隔離するため)、予備ジップロック
外付けする装備
ここまでの収納でメインとなる荷物は入れ終わりました。次は外付けする装備を見ていこうと思います。
三脚
バルトロのサイドにはメッシュのポケットが付いています。ここに三脚の足を一本だけ入れて、ポケットを挟むように三脚を取り付けます(三本とも脚を入れると取り出しが面倒だからです、そこはお好みで)。
ストラップは上下に2本付いており、しっかり固定することで三脚が落ちたり揺れたりすることが無くなりますよ。
ドリンクボトル
バルトロが人気を博している理由の一つがこのドリンクホルダーです。右側にホルダーが付いていて、そこに水筒やナルゲンを入れることができます。ポイントは口紐が付いていること!前屈みになってもドリンクが落ちないように工夫されています。
一度バルトロを使うと口紐なしは考えられませんが、意外にもこの配慮がされているザックは多くありません。私はかつて、餓鬼岳で滑って転んでナルゲンを谷底に落とした苦い経験があり、口紐の有り難さを痛感しています。地球にも登山客にも優しい設計ですよね。
マット
ザックによってマットを横に取り付けるタイプと下に取り付けるタイプがありますが、バルトロは多くのザックと同じで下に取り付けるタイプです。
下に取り付けるザックでは、マットがザックの横幅より広がるため、急坂を下る際などマットが岩に引っかからないよう細心の注意を払いましょう。
一眼レフ
一眼レフはPeak Designのカメラクリップを使っています。使い方については「登山で一眼レフやミラーレスを持ち運ぶのにおすすめな神アイテム「Peak Design キャプチャー v3」」で詳しく解説しています。
分厚いショルダーハーネスはキャプチャープロパッドなしでも十二分に衝撃を吸収してくれるので、全く問題なしです。カメラクリップを使うとフルサイズ一眼レフを快適に担ぐことができ、これまでに屋久島横断など厳しい縦走登山で活躍してくれました。
バルトロの容量(55L~95L)選択
パッキングが完了した完成像がこちら!
上下左右に豊富なポケットが付いていて使いやすいですよね。特に2つに分かれた雨蓋ポケットと、大きなフロントポケットは本当に使い勝手が良いです。
フロント部分は大きく上から下まで大きく開ける事ができ、メインコンパートメントへ直接アクセスできるので便利だし、使いやすい。
自分の目的/体の大きさに合ったバルトロの選択
パッキングについては上でご紹介した通りですが、そもそも、パッキングの前に重要となるのが、自分の目的/体の大きさに合ったバルトロを選ぶことです。実際にお店で確認することが何より重要ですが、ここでは何となくの指標をお示しできればと思います。
私が使っているバルトロ75は容量が「75L」という意味です。75Lと言うのは比較的大型のザックで、縦走テント泊登山をしたいという人に向いています。
具体的には、1週間までの縦走テント泊登山(春~秋)であればバルトロ75で十分でしょう。交換レンズを減らして食料に充てればもっと長期の縦走にも対応できます。
バルトロ75かバルトロ85か??
テント泊登山を考えている方にとって悩ましいのはバルトロ75とバルトロ85の選択だと思います。
バルトロ85:アパラチア山脈、パシフィック・クレスト、大陸分水嶺、ヒマラヤ山脈、マチュピチュ、ビバルマン…どこにでも行けます。バルトロ85(BALTORO85)は、大容量で、さらにレスポンスA3サスペンションにより常に快適なフィット感が得られるので、リストに並んだ様々な長い旅にチャレンジできます。(出典:グレゴリー)
公式の説明にもある通り、海外の山を考えている場合、あるいは日本でも雪山縦走登山を考えている方はバルトロ85にしておくと無難かもしれません。バルトロ75とバルトロ85はザックの重量自体は殆ど違いがありませんからね。
参考までに、私はバルトロ75で雪山テント泊登山もする予定ですが、キャパ的には問題ないだろうと思っています。
バルトロ65は荷物が少ない人、あるいは短期テント泊が良さそう
バルトロ65もテント泊登山で使えると思いますが、私のようにカメラのレンズだったりビールだったりと、荷物が多いとやや窮屈かもしれません。
バルトロのS、M、Lはどう選ぶ?
バルトロには各容量にS、M、Lのサイズが用意されています。私が使っているのはバルトロ75のMサイズです。実際にSサイズとLサイズも担いでみましたが、Lサイズは大きかったですね。必ず自分に合う大きさを選びましょう。
(参考:好日山荘)正しい道具の使い方 -ザック編-
S、M、Lの選択には背面長が重要。実際にお店で計ってみたり背負ってみるのが一番です。
現在はバルトロ2022年モデルのSサイズを使っています。
160cm – 170cm : Sサイズ
170cm – 180cm : Mサイズ
180cm – 190cm : Lサイズ
あくまで私の私見ですが、このサイズ選びで問題なく対応できる可能性が高いと思います。
まとめ
バルトロを検討している方、また登山のパッキング方法で困っている方の参考になれば幸いです。
お気軽にコメントください
コメント一覧 (10件)
こんにちは!
実は前々からパッキングの方法を取り上げて貰えないかな~、
でも頼むのも申し訳ないしな~と、悶々と過ごす日々が続いてました(笑)
なので、今回の投稿は個人的にはとても助かりました!
テント泊に向けて道具も揃ってきて、ちょうどバルトロ75も買ってしまったんです^^
以前ブログで紹介していたのを思い出して、
清宮君が使ってるなら間違いないなと・・・
他の道具に関しても正直どれを買っていいのか分からない事ばかりなので、
道具紹介(お勧め道具)の投稿は、かなり参考になっているんですよ(´▽`)
これからの季節は雪との闘いで、危ない場面も多々あるかと思いますが、
お気を付けて山を楽しんできて下さい!
もちろん写真も楽しみにしています!
ご無沙汰しておりますー!
なんとそうでしたか!私としては「どんな記事が需要あるのかなー?」とか思っているくらいなので、
バシバシ仰ってください(๑╹ڡ╹๑)p♪笑
バルトロ75であればかなり長期の縦走までいけちゃいますね。是非テント泊に雪山登山にと使い倒してやってください☆
今冬は雪山登山の道具を一部刷新する予定なので(テント、シュラフ、アイゼン、靴など)、
またシーズン中にでもまとめる予定です。是非ご参考にしていただけたら嬉しいです。
北海道はすでに冠雪しているようでうらやましいですー。本州はようやく雪の便りが届き始めたので、
雪山登山の計画を立て始めました。お互い、安全第一で楽しみましょー(๑´ڡ`๑)
下部に丸めてマット、色合いもシブくてかっこいいですね!
さしつかえなければどこのメーカーのものか教えて頂けますか?
コメントありがとうございます(๑´ڡ`๑)
こちらはEvernewのマットなんですが、結構古いのでもう廃盤&欠品かもしれません。明確な型番が分からず申し訳ありません(汗)Evernewのものなのは間違いないのですが・・・。
ウレタンマットはサーマレスト以外あまり売ってなくて夏用は選ぶの難しかったりしますよね。
清宮様
ありがとうございます!
Evernewで調べると似た感じのものが出てきますね
パタパタ系より丸めるタイプの方が雰囲気が良いですよね笑
重ねてありがとうございました!
私も丸めるタイプの方がビジュアル的に好きです(๑´ڡ`๑)
詳しい情報が分からず申し訳ありませんでした(汗)
ぜひまた遊びにいらしてください!
すみません、日本語がおかしくなりました
下部に丸めてあるマット、です笑
正確にいうとエバニューから頂いたもので、マットを見たらXDJISみたいな字が書いてあるのですが、ググってみても良く分からず・・・お力になれずすみません!
清宮さま
初めまして。四半世紀ぶりに何故かふと山への興味が復活し、古い(少々カビ臭い)山道具を取り出して先月涸沢に行って参りました。時代錯誤感のある持ち物や服装に、若い方々の所謂”ギア”と呼ぶべき最新のグッズと比較し、恥らいながらの山行となりましたが、山への興味は更に増幅。ただ、30代はあれほど楽に?登れていた筈の涸沢迄の道程すら、這う這うの体。25年の歳月の重さを思い知りました。そこで、自分の体力を少しでも補完すべく、ここは”金に糸目を付けず、あちこちの山道具屋だけで飽き足らず、ネットでポチポチするのを楽しむ今日この頃です。そんな最中、偶然こちらに巡り合えたと言う次第です。清宮さんの写真はもとより、生の情報はホントに興味深く参考になります。これからもチョクチョク訪問させて頂きます。宜しくお願いします。
Cozyさま
ブログをご覧いただきありがとうございます。
登山は一度遠のいてもまた復活ができる素敵な趣味ですよね。私も1年ではありますが、登山から遠ざかっていた時期がありましたので、お気持ちがわかります。
登山道具の進化は目覚しく、とりわけ軽量化という観点においてはcozy様が以前登っていた時期とは大きく変わっていることと思います。最新のギアを使うことが全てではないと思いますが、愛着の登山道具と最新のギアをうまくミックスさせてお使いいただくのがよろしいかと思います。
涸沢までの道も長く苦しいものですが、着いたときの達成感は忘れられません。これからも無理なく、また登山を楽しんでください。私もささやかながらではありますが、情報を発信してまいります。ぜひまた覗きにきていただければ幸いです。