雪山登山で使うグローブの選び方やレイヤリングの考え方について私なりの持論をご紹介します!
前提として、私が紹介するのは「縦走スタイルの登山」です。
つまり、アイスアックスを2本構えてロープを使いながら氷壁を攀じ登るスタイルではありません。「クライミングスタイル」と「縦走スタイル(いわゆる普通の登山)」では最適な装備の考え方って全然違うと思いますので、まずその違いをしっかり認識することが重要ですね。
インナー一体型とレイヤリング前提のグローブ
まず冬山のグローブを考える上で知っておきたいことが、インナーが中に内包されている「一体型グローブ」とインナーグローブとアウターグローブを別で用意する「レイヤリング型」の2種類があるということ。
一体型の有名どころではブラックダイヤモンドのソロイストなど。
それぞれに利点欠点はありますが、これから本格的に雪山登山を始めたいと思っている方には後者のレイヤリング型をおすすめします。
それはなぜか?
インナー一体型はその名の通り暖かいインナーがアウターグローブと結合しているか、あるいは取り外しできるタイプもありますが、いずれにせよ細かい調整が苦手です。
例えばテント泊をしたり山小屋で休憩するときに「ちょっと寒いからインナーグローブだけつけていたい」と思っても簡単にはいきません。逆に気温が高くて暑すぎた場合の調節も困難です。
他にも、一体型をメイングローブとして利用して予備にスペアのグローブを持っていない場合、メインの一体型グローブを紛失してしまうと一気に手持ちのグローブが「ゼロ」という凍傷リスクが極めて高い状態となってしまいます。インナーグローブが濡れても簡単には交換できません。
レイヤリングを前提としていれば、インナー+アウター/インナー+ミドル/インナー+ミドル+アウター/というように外気温に合わせた調整が可能です。
アウターグローブの選び方
私は5本指タイプでレイヤリングを前提としたアウターグローブ、モンベルの「アルパイングローブフィット」を使っています。
こちらのグローブはアウターグローブとしては比較的薄手の構造です。そのため3重にレイヤリングをした場合でも「比較的」操作がしやすくて気に入ってます。
他にも店頭でたくさんのアウターグローブを試着したのですが、これ以上に操作性がいいアウターグローブは見当たりませんでした。
防寒性能については実際に雪山のフィールドで使ってみないことにはわかりませんが、概ねアウターグローブの生地の厚さに比例すると考えていいでしょう。
アウターグローブの「扱いにくさ」は半端ではなく、グローブをつけたままその他の操作(写真を撮るとかアイゼンを着脱するとか)に慣れるには相当な経験が必要であり、そのことを考えると、厳冬期での使用が想定されているグローブの中において『扱いやすいと感じたグローブ』を選ぶことをおすすめします。
ミドルグローブとインナーグローブ
ミドルグローブの役割は保温であり、可能な限り暖かいものを選びましょう。私はラックナーグラブとモンベルのトレールグローブを使っていますが、どちらも保温性・操作感ともに良好でおすすめです。
ラックナーグラブはネットでも売っていますし、カモシカスポーツなど一部店舗で取り扱いがあります。
蛇足ですが、冬山登山で使うグローブは必ず店頭で試着したほうがいいです。実際にインナーグローブとミドルグローブを装着した状態でアウターグローブまで装着しないと「リアル」な感覚が分かりません。
インナーグローブについては暖かいウール製のものとライトな使用感のもの2種類があると便利。厳冬期にはウール製の暖かいものを、残雪期後半のように暖かい時期には薄手のものを使います。
雪山の時期(初冬・厳冬・残雪)によるグローブの使い分け
知っておくべきことは、寒さは厳冬>>初冬・残雪であり、厳冬期はしっかりとした3重レイヤリングが必要だということ。初冬と残雪期は寒気の状態にもよりますが、かなり暖かいこともありますので、汗をかかないように注意が必要。
北アルプスをはじめとした日本アルプスや八ヶ岳では概ね以下のような気温感となります。下は北アルプスの例であり、八ヶ岳などではもう少し暖かいです。
初冬(11月〜12月上旬)
0℃〜マイナス10℃
厳冬期(12月上旬〜3月下旬)
マイナス5℃(かなり暖かい場合の稜線)〜マイナス25℃(最強クラスの寒波が来ている時の北アルプス3000mの気温)
残雪期(3月下旬〜6月上旬)
5℃〜マイナス15℃(春にも関わらず寒波が来ている時)
厳冬期では汗のことを意識する必要はほとんどなく、最大限暖かいグローブを携帯します。
残雪期はかなり暖かい日もありますし、標高が低い場所では手袋がいらないこともあります。一方、稜線では5月になっても雪が降ることもあり、標高による寒暖差が極めて大きくなるため要注意な時期ですね。
いずれの時期でも暑ければ調整して汗をかかないうようにする。汗をかいたらインナーグローブを交換する。寒くなったらすぐグローブを身につける。雪に触れてグローブが濡れないようにする。これらのことを徹底的に意識して行動することが重要です。
初冬や残雪の時期にはグローブは2重で済ませることがほとんどです。
具体的にはウールのインナーグローブとモンベルの防水グローブ「ネージュグローブ」を使っています。稜線ではインナーグローブにこのアウターグローブを重ねて、樹林帯ではインナーグローブだけ(雪に触れる可能性がない樹林帯)とか、アウターグローブだけ(雪に触れる可能性があるアプローチ)など状況により使い分けます。
紛失リスクとスペアグローブの考え方
雪山登山においてグローブの紛失は凍傷のリスクが跳ね上がるだけでなく、即撤退を考えなければなりません。
スペアのグローブが果たす役割は大きいのですが、一方で、登山というのはグローブに限った話ではなく「起こり得るすべてのリスクに備える」ことが事実上不可能です。
つまり、持ち運べる荷物の量には限りがあり、バックパックが重たくなればなるほど別のリスクが上がってしまうためです。
そのため、基本的には雪山登山でグローブを無くさないという認識が極めて重要であり、行動中や休憩中を含めグローブを着脱する場合には常にグローブの所在に神経を集中させなければなりません。
冬山におけるグローブというのはそれほど重要な存在です。
私は厳冬期ではアウターグローブの予備として防寒テムレスをバックパックに忍ばせています。汗をかきそうなコンディション(気温を見て決めます)ではインナーグローブのスペアを持っていくことも多いですね。
私が使っているグローブまとめ
初冬
(防寒テムレス)
厳冬
メリノウールグローブタッチ + ウールトレールグローブ + アルパイングローブフィット
(防寒テムレス)
残雪
(防寒テムレス)
どんなグローブを使えばいいのか非常に悩ましいものだと思います。何を隠そう私も独学で雪山登山を始めた身。これから雪山登山を始めたいと思う方の気持ちは痛いほどわかります。
どんな装備を使うかも重要ですが、適切なグローブを使い分けできるか、自分の中で各グローブの役割が明確になっているかの方が遥かに重要だということです。それぞれのグローブをどのように使えばいいのか事前にシミュレーションして、試行錯誤を繰り返すことで自分にとっての最適なグローブが見つかると思います。
少なくとも上記手袋で私のような登山をこなすことは可能ですので、一つの実例として参考にしていただければ幸いです。
お気軽にコメントください