ニコンZ6と高倍率ズームレンズ「NIKKOR Z 24-200mm」を愛用しています。
このレンズと出会ってからほとんどの撮影で使っていますが、本当に素晴らしいレンズだと感じています。今日は24-200mmへの愛を語ると共に、このレンズの何が素晴らしいのか、高倍率ズームレンズの利点は何なのか、どんな人やシチュエーションでおすすめなのかご紹介したいと思います!
素晴らしい描写
高倍率ズームレンズの話をするとまず議題に上がるのが「便利」であること。しかし、私はあえてNIKKOR Z 24-200mmの描写から話をしたい。
高倍率レンズが便利なのはもはや議論する必要がないですよね。レンズを1本減らせるわけですから、神がかって便利です。
便利なのが重要なのはもちろんの事ですが、便利であっても描写・画質・質感がイマイチでは主力のレンズにはなり得ないし、私だって使いたくない。
その点において、大前提になりますが、ニコンのZレンズは写りが極めて良好、本当に素晴らしいです。これは私だけの意見ではなく、「ニコンはレンズが特に秀逸」という声はネットやSNSで本当によく見聞きします。
素直な描写、飾らない色味、キレのあるエッジはZマウントレンズの良いところです。
それは24-200mmにおいても同様であり、 Zレンズの意思を受け継いでいる。S-Lineでこそありませんが、高倍率ズームレンズであることを忘れさせてくれる描写力を誇ります。「これ1本あれば良い」そう思わせてくれる写りと機動性がこのレンズにはあるんです。
使う人によっては本当に最強のレンズだと思っています。
私は一眼レフ時代、D750と大三元レンズ24-70mm F2.8を使っていましたが、過去の写真と見比べても、Z6と24-200mmの組み合わせの方が格段に描写が良いです。
ワイド端24mmでは少しばかり甘さが気になりますが、200mmのテレ端は本当に素晴らしい。
私見ですが、広角側より望遠側の方が写りは良いと思っています。
とは言え、後述するように描写が少しばかり甘い点があったとしても、後から簡単に補正できる時代です。
「少しばかり甘い」というのも「良いところばかり書くと信憑性がないし、強いて言えば・・・」というレベルであり、作品を撮って印刷をする上でも全く問題ありません。
この記事を書くにあたり他のカメラマンはどう言っているのか、海外のプロフォトグラファーの意見を調べてみても「素晴らしい」という評価が本当に多い。
それはつまり、高倍率ズームレンズがプロにとっても実用レベルに達しているということでしょう(撮影対象によるのは言わずもがなですが)。
Nikonさん早くからこのレンズを開発してくださり本当にありがとうございます!!
圧倒的に便利な撮影範囲
24mm-200mmというのは一般的な風景を撮るにあたって痒いところに手が届く焦点距離です。
これが28mmスタートでも105mmで終わってもダメなんです。
上の写真は鴨川シーワールドでシャチの写真を撮ったもの。左が24mm・右が200mmです。レンズ交換をせずにこれだけ見せ方を変えられるなんて凄すぎです。神レンズですか?
24-200mmの撮影範囲は一度使えば病みつきになる、圧倒的に便利な焦点距離。
24mmスタートであるメリット、それは標準レンズ(24-70mm)に慣れているユーザーにとって使いやすいということ。
今後ニコンから予定されている24-105mm F4も非常に魅力的ですが、望遠レンズとして使うには不十分。これはあくまで標準レンズのカテゴリーです。
24mmから始まって200mmまでカバーできる万能レンズ。多くのシチュエーション・被写体を撮り切ることができる、絶妙な焦点距離は本当に魅力的。
描写に妥協せず、オールマイティーに使えるレンズでありながら、標準レンズ(24-70mm)と望遠レンズ(70-200mm)を兼ねることができるオールラウンダー。
標準レンズと望遠レンズを交換をするストレスから解放されます。その利点がどれほど大きいか、標準も望遠も使ったことがある方ならわかっていただけると思います。
標準レンズと望遠レンズは使い分けが「紙一重」のことも多い。ご来光の時、日の入りの時、目を見張るシャッターチャンスがやって来たときに「ある程度広く撮りたいけど、寄っても撮りたい」そんなシチュエーションって結構あるもの。
一例として、山肌を赤く染めるモルゲンロート。山肌が本当に真っ赤染まるピークは2分程度なので、途中のレンズ交換は賭けになる。
厳冬期の冬山の稜線、雪煙が舞う厳しい様相を標準でも望遠でも撮りたい。でも、マイナス20度の中でレンズ交換なんてできるだろうか?雪が付着したり、最悪結露して何も撮れないかもしれない。レンズ交換は時にその行為自体がリスクになる(特に山など厳しいフィールドでは)。
レンズ交換をする必要がないというだけで、シャッターチャンスという恩恵を与えてくれる。単に便利と言うだけでなく、レンズ交換不要=チャンスの創造だと言っても過言ではない。
軽量かつコンパクト
NIKKOR 24mm-200mmはとにかく軽くて小さい。持ち出すことが全く億劫にならない。
一方で、大三元と呼ばれるF2.8通しのレンズを持ってみてください。F2.8通しを達成するために犠牲にしているものがあまりに巨大だと感じます。
私も昔は「大三元こそ最高」と信じていましたが、今は必ずしも正しいとは思いません。技術の進歩に伴い、高倍率ズームレンズの描写がこれだけ進化した現在、大三元レンズの必要性が退化したということかもしれません。
撮影するフィールドによりますが、持ち運びやすく、軽くて小さいことは「撮影に行きたい」という欲求に直結します。少しでも荷物を軽くしたい山岳写真では尚更のこと。カメラを持ち運ぶことが困難なフィールドであればあるほど、このレンズは力を発揮します。
デジタル補正という時代の潮流
デジタル補正の進化には目を見張ります。
私はポートフォリオレベルの作品を仕上げる時、Topaz Labsという米国の会社のサードパーティーソフト(有料)を使ってシャープネス補正(Sharpen AI)とノイズ除去(DeNoize AI)を行なっています。最近はDxO(Googleが断念したNik Collectionを救済した会社)のPureRawも話題です。
デジタル補正の分野ではAdobeがスーパー解像度(写真の解像度を縦横それぞれ2倍に拡張する機能)を発表したことも大きな話題となりました。スーパー解像度を使えば写真の品質を落とさず、写真サイズを大きくすることが可能。従来では印刷には耐えられなかったサイズの写真を、たったワンクリックで大きく伸ばし、印刷することが可能となりました。
写真のデジタル補正は伸び代が大きいジャンルだと思いますので、今後ますます進化していくでしょう。
ノイズ除去やシャープネス増強は後から付いてくる時代
話を高倍率ズームレンズに戻します。
撮影した際の写真の品質(シャープネス・ノイズ・写真サイズ)は後で補正できるということは、高倍率ズームレンズのように「甘さが一部残る」レンズが活躍しやすくなるということです。
レンズの詰めの甘さは自宅で補正するとして、現場では記録を残すことに専念できると言い換えることもできます。
上述のSharpen AIを使えば上述した24-200mmの広角側の描写の甘さ(そもそも気になるレベルでもないが)なんて一瞬で引き締めることが可能です。一例として、上の明神岳の左が補正前、右が補正後です。岩肌や稜線のシャープネスが改善されているのが分かります。
シャープネスだけでなくノイズ除去についても同様です。
ある夕方、残念ながらガスってしまい撮影は無理かと思った矢先、ガスが一気に晴れて壮大な雲海となりました。雲に流れがあったので大至急NDフィルターをつけて流した雲です。
ISO100で撮っていますが少し明るさを持ち上げているので雲のノイズが気になります。Lightroomでもある程度処理できますが、DeNoize AIを使用するとこの通り。
デジタル補正の分野において、特にノイズ除去は重宝されています。ノイズは写真の品質に大きな影響を及ぼすため、うまくコントロールすることが重要ですが、撮影時に100%対応することが難しいからです。
ここまでの話をまとめると、レンズ固有の特性が昔ほど気にならない時代になったという事です。
デジタル補正という時代の潮流に後押しされ、高倍率ズームレンズのように便利なレンズがますます重宝されるようになるでしょう。特にスマホで写真を撮ることに慣れている世代にとって、レンズ交換は「過去の遺物」となる時代がやってくるかもしれません。
24-200mmの欠点は最短撮影距離(寄れない)
このレンズにも欠点があります。それは被写体にあまり寄れないことです。
焦点距離 | 最短撮影距離 |
24mm | 50cm |
200mkm | 70cm |
最短撮影距離が50cm – 70cmとかなり遠いため、マクロ的な使い方やテーブルフォトが大の苦手です。例えば旅行中のレストランで料理を撮りたい場合、料理からレンズを50cm以上離さないとシャッターが切れません。テーブルに座ったまま料理を撮るのは難しい。
自宅での物撮りや細部をクローズアップしたい撮影などには向いていません。
すぐ目の前にある物を撮るのが苦手なレンズです。得意なのは少し離れたところにある風景です。この特性は購入する前にしっかりと理解した方がいいでしょう。
大三元レンズF2.8との差別化
デジタル補正による話をしましたが、レンズ固有の特徴として今後も変わらず重要なのは「背景のボケ」ではないでしょうか。
ボケの味というのはレンズにより大きく異なります。私は星の撮影を除いてF8〜F13のパンフォーカスで撮ることが99%なのであまり関係ないのですが、背景をボカすのが好きな人や、そう言った作品が主体の場合、選ぶべきレンズが変わってくるでしょう。
多くの場合、安いレンズのボケはうるさく、高いレンズの方が滑らかで美しいボケが得られます。これは大三元レンズの強みの一つだと思います。
それらを踏まえ、高倍率ズームレンズと大三元レンズの得意不得意・向き不向きを表にまとめてみました。
24-200mm | 大三元レンズ | |
サイズ | 小さい | 大きい |
重量 | 軽い | 重い |
携帯性 | 良い | 悪い |
描写 | 良い | 非常に良い |
背景のボケ | 並 | 綺麗かつ滑らか |
レンズの明るさ | 暗い | 明るい |
星の撮影 | 向いてない | 最適 |
物撮り | 向いてない | 最適 |
室内での利用 | 向いてない | 最適 |
山岳写真 | 最適 | 並 |
雪山登山での利用 | 最適 | 向いてない |
風景写真 | 最適 | 最適 |
動体撮影 | 並 | 最適 |
ポートレート | 並 | 最適 |
所有欲 | 並 | 最高 |
価格 | 手頃 | 非常に高い |
大三元レンズではなく高倍率ズームレンズを使っている理由の一つに厳冬期の雪山登山の存在は大きい。厳冬期の撮影では、大三元レンズの大きさや重さが足を引っ張るから。上述の通り、雪山でのレンズ交換は時に命取りになることもあり、高倍率ズームレンズの利便性が顕著に高まります。
24-200mmが便利で素晴らしいレンズであるという結論は変わりませんが、それが普遍的に全員にお勧めできるわけではありません。自分がよく撮る対象や目的に応じてレンズを使い分ける必要があるのは言わずもがなです。
大三元レンズは「描写」とか「利便性」とか関係なく使っていて楽しいし、所有欲も満たされます。写真を撮っていて楽しいと感じられるかどうかも非常に重要ですよね。自分が使っていて一番楽しく、幸せなレンズを選ぶことが何より大切です。
Zマウントレンズ | 重量 | メーカー希望価格 |
24-200mm F4-6.3 | 570g | 139,480円 |
14-24mm F2.8 | 650g | 352,000円 |
24-70mm F2.8 | 805g | 336,000円 |
70-200mm F2.8 | 1440g | 354,530円 |
ただし、大三元の標準レンズと望遠レンズを揃えると重さにして約2.5kgあるので、高倍率ズームレンズと比較した際の負荷は歴然(4倍)。特に70-200mm F2.8が重い。
24-200mmは風景撮影でも強力なレンズとなりますが、風景撮影と言ってもその撮影対象は幅広く、レンズ交換が不要な場合、三脚から取り外すことがない場合、レンズ交換を頻繁に行いたい場合など多種多様。山岳ほど厳しくなくとも、カメラを携帯するのが億劫であればあるほど、レンズ交換が難しければ難しいほど高倍率ズームレンズは力を発揮します。
私のレンズ構成
簡単にですが、今の私のレンズ構成をご紹介します。
24-200mm f4-6.3
外での撮影ではほぼ100%使っているレンズ。山岳写真で200mm以上が必要なケースはほとんどない200mm以上の画角はやや特殊な撮り方(例えば爺ヶ岳から穂高岳を撮るなど)になるため、テレ端は200mmで十分。
14-30mm f4
広角レンズを使うのは主に山を入れた星景写真。その意味ではF2.8の大三元レンズが最適解だが、F4でも十分撮れているので買い替えの必要性は感じていない。日中もたまに使うものの、最近は主題を明確にしたクラシックな山岳写真ばかり撮っているので広角レンズの出番は少ない。
24-70mm f4
Z6と一緒に購入したレンズ。主に室内でブログ用の写真を撮るために使用。軽くてコンパクト、描写も最高。とは言え、24-200mmとモロ被りしているので24-105mmが発売されたら売却を検討。
まとめ
様々なカメラ・レンズ・デジタル補正技術が利用可能な昨今。自分にとって最適な組み合わせを考えるのは楽しくもあり、悩ましくもあります。
私は24-200mmを猛プッシュしますし、神レンズだと思っていますが、それが単焦点レンズの人も、大三元レンズの人もいるはずです。まずは自分が何を撮りたいのか・・・を見定めることからでしょうか。
山岳写真に限らず、標準レンズと望遠レンズの切り替えが面倒だと感じている方や、レンズ1本で気軽に撮影に行きたい方にお勧めできる神レンズです。
躊躇わず購入できる手頃な値段なのも嬉しい限りですね!
同じZユーザーの方や24-200mmを検討中の方、これからニコンのミラーレスを使いたい方の参考になれば幸いです。
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